※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

地球温暖化対策の一環として、脱炭素への取り組みが急務である中、企業のCO2排出量を可視化してその削減を総合的にサポートしているe-dash株式会社。世界的な脱炭素化に向けた流れの中で、脱炭素を推進するさまざまなソリューションを手がけている。今回は同社を率いる代表取締役社長の山崎冬馬氏のこれまでの人生の歩みや、注力している取り組み、そして未来へのビジョンについてうかがった。

シリコンバレーで培った新たな価値観

ーー山崎社長のご経歴とe-dashを立ち上げた背景についてお聞かせください。

山崎冬馬:
新卒で三井物産に入社し、インフラ部門で発電事業に長年携わってきました。海外における発電所の新規建設から買収など、さまざまなプロジェクトを手がけてきました。

2015年頃から、世界的に脱炭素化の必要性が高まり、三井物産としても次世代の事業を模索する流れになりました。ちょうどその時に、シリコンバレーに出向くように指示を受け、現地で太陽光発電事業やエネルギーマネージメントシステム、EV充電、EVバス事業などクリーンエネルギー関連のベンチャー投資や事業開発に携わりました。

この分野は、今でこそ「クライメートテック(※1)」と呼ばれていますが、当時はまだ「グリーンテック」や「クリーンテック」といった呼び方が主流でした。

現地のベンチャーキャピタルの投資家たちとの関係を構築し、取締役会にも参加するなどして学びを深めていくなかで、「テクノロジーを使って環境問題に取り組む」という考え方を私の使命として感じるようになったのです。

(※1)クライメートテック:世界的な気候変動の問題を解決するため、CO2排出量の削減や地球温暖化の影響への対策を講じる革新的なテクノロジーのこと

脱炭素化への支援によって企業の未来に光を灯す

ーー貴社の事業内容とその強みについてお聞かせください。

山崎冬馬:
弊社は、企業の脱炭素化を支援するための包括的なサービスを提供しています。実際に、GHG(Green House Gas)(※2)排出量を可視化し、国際的な基準に基づく情報開示と目標設定をおこない、排出削減を実現することをゴールとしています。

GHG排出量の可視化については、毎月のガスや電気等の請求書データをe-dash上にアップロードしていただくだけで、手間なく簡単に算出ができるクラウドサービスを提供しています。

さらに、単に排出量を見える化するだけではなく、気候リスク開示の国際的な枠組みであるTCFD(※3)の提言に基づく情報開示や、科学的根拠に基づくGHGガス削減目標であるSBT(Science Based Targets)(※4)認定取得の支援も支援します。

このプロセスによって、企業は持続可能なビジネスを実現するために必要なロードマップを策定し、外部に向けて透明性の高い報告を行うことで、ステークホルダーの信頼を得ることができるのです。

そして最終的には、実際の排出削減に向けた具体的なアクションの策定と実施をサポートします。たとえば、再エネ電力の調達や省エネ診断や空調などの設備更新など、企業のニーズに応じてカスタマイズしたソリューションを提供しています。これにより、企業が環境に与える影響を減らしながら、持続可能な成長を達成できるように全方位から支援することが可能です。

弊社の強みは、このように初期段階のデータ収集と分析から、目標設定、実施、フォローアップまでを一貫してサポートできる包括的なサービスにあります。企業が脱炭素化の取り組みを効果的に進めるために必要なすべてのステップをカバーし、持続可能な未来への道筋を提供しています。

(※2)GHG排出量:温室効果ガス排出量

(※3)TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース

(※4)SBT:パリ協定が求める水準と整合した企業の温室効果ガス排出削減目標

2050年に向けた持続可能な未来への挑戦

ーー2050年のカーボンニュートラル達成に向けた具体的なビジョンについて教えてください。

山崎冬馬:
もう6年後に迫っていますが、まずは日本政府が掲げる「2030年までにGHG排出量を2013年度比で46%削減」を実現していくことが、私たちの重要な目標です。これは単なる目標ではなく、世界全体の気候変動対策のなかで、私たちが果たすべき責任であり、各企業が早急に取り組むべき課題なのです。加えて、より多くの企業が積極的に脱炭素化に取り組めるような環境を整えることも目指しています。

また、2050年のカーボンニュートラルの達成に向けて、脱炭素化だけでなく、他の社会課題にも積極的に取り組む企業として成長したいと思っています。具体的には、水資源の管理、廃棄物の削減など、多岐にわたる環境問題に対応し、社会全体の持続可能性を向上させることが目標です。

持続可能な未来を築くためには、企業が自社の利益率を上げるだけでなく、社会全体にポジティブな影響を与える存在となることが不可欠です。私たちは、このような取り組みを通じて、気候変動の影響を最小限に抑え、次世代により良い地球環境を残すために尽力します。

ーー貴社が求める人材について教えてください。

山崎冬馬:
事業拡大に伴い、絶えず新しい人材の採用を進めています。環境、エネルギー、テクノロジーと、さまざまな分野にまたがっている私たちのビジネスには、幅広いバックグラウンドを持つ人材が集まっています。

特に重視しているのは、社会に貢献するという共通のミッションに共感できる人です。私たちは「ダブルボトムライン=利益と社会貢献の両立」を追求する企業として、持続可能な未来を築くために、従業員全員が共通のビジョンを持つことが重要だと考えています。そのため、採用においてもこの価値観に共感できるかどうかを重視しています。

編集後記

インタビューを通じて、山崎社長のビジョンの広さと、その実現に向ける強い意志を感じた。シリコンバレーでの経験を活かし、日本でも脱炭素化社会へのリーダーシップをとる姿勢は、多くの企業にとって模範となるだろう。同社が今後どのように世界の未来の舵を切っていくのか注目していきたい。

山崎冬馬/1982年、千葉県生まれ。早稲田大学大学院修了。2007年に三井物産株式会社に入社し、2015年から5年間、米シリコンバレーに駐在。帰国後、2020年に新設されたエネルギーソリューション本部に所属し、e-dashを新規事業として立ち上げる。2022年2月のe-dash株式会社設立とともに、代表取締役社長に就任。