※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

1962年に誕生したオフィス家具メーカー、アール・エフ・ヤマカワ株式会社。中小規模のオフィスや事業所、店舗などを中心に家具を製造販売しているほか、オフィスのトータルソリューション事業、オフィス家具の通販・輸入販売事業など幅広く展開している。

社会情勢に負けず、収益を伸ばすことができた理由は、どのようなところにあるのだろうか。2021年に同社の代表取締役社長に就任した木村奬氏に、話をうかがった。

社長だった父の急逝後、母の中継ぎを経て社長に就任

ーーどのような経緯で社長に就任されたのですか?

木村奬:
弊社はもともと私の祖父母がつくった会社で、先代の社長は私の母、先々代の社長は私の父でした。私が生まれたときから会社の存在が身近にあったので、「いずれ将来は私が会社を継ぐんだろうな」と思っていましたね。

ハワイの大学を卒業してラスベガスの航空会社で1年働いたのち、2005年4月に弊社に入社したのですが、2011年に父が心筋梗塞で急逝してしまい、社長交代が必要になったのです。母が社長に、私は専務取締役に就任することになりました。

母が社長に就任したあとは、私も含め当時の役員4人で父のおこなっていたワンマン経営を組織経営に変革することに注力しました。そしてちょうど就任から10年がたった2021年には、ワンマン経営から組織経営へと生まれ変わることができたことで、2011年当時は20億程度だった売上を目標としていた30億まで伸ばすことができました。そのタイミングで私が会社を引き継いだ次第です。

ーー仕事において苦労したことや、やりがいを感じたことなどを教えてください。

木村奬:
社長就任前から急激な円安は何度か訪れており、その度に利益を圧迫し、不安定な時代が続きました。円安を乗り切るために値上げをした影響でお客さまが離れることを心配しましたが、お取引先さまのご理解が得られ、収益を回復させることができました。

その経験から、「為替に影響されない事業を展開したい」と考え、10年ほど前に「トータルソリューション事業」という事業を立ち上げました。家具メーカーとしてオフィス家具を販売するだけでなく、オフィスの空間そのものをすべてつくるというサービスです。最近ではこちらの事業も軌道に乗ってきて、お客さまからご好評をいただいています。

家具メーカーとして開発した商品がたくさん売れることはもちろん、トータルソリューション事業でエンドユーザーさまからダイレクトに喜びのお声をいただけることにやりがいを感じますし、嬉しいですね。

お客さま目線の提案でオフィスをトータルコーディネート

ーー貴社の事業内容を詳しく教えてください。

木村奬:
主にファブレスメーカー(※)として協力工場のもとで商品をつくり、全国に配送しています。商品のターゲットは中小企業で働く方々です。

トータルソリューション事業では、家具レイアウトから内装工事、電気や電話などのインフラの導入など、オフィス空間の構築を手がけています。デザインの質や品ぞろえ、空間をトータルコーディネートすることが目的で始めた事業です。すべて弊社の家具で統一したご提案ができるようになることが目標です。

(※)ファブレス:製造工場を持たずに、商品の設計や開発を自社で行うこと。

ーー貴社の事業の強みはどのようなところですか?

木村奬:
「お客さまの目線で考える」ということを大切に、同じ目線でプロジェクトを進行していける点が弊社の強みですね。オフィス家具業界は多くのビッグプレーヤーが、値の張る商品を提供しているような状況です。そんな中で、弊社は中小企業の方をターゲットに、中価格帯で商品を販売しています。

お客さまがオフィス改装に捻出できる費用は限られているので、まず一部を導入していただいて、私たちのサービスの良さを体験していただくようにしています。サービスを気に入っていただけたら次を導入していただくというふうに柔軟に対応できることが、弊社の強みであり、特徴です。

売り先・仕入れ先・社員のすべてを大切にしたい

ーー最後に、木村社長が仕事において大切にしていることをお聞かせください。

木村奬:
これは祖母から伝えられたことですが、「弊社に一歩でも足を踏み入れたらお客さまだ」という考え方で仕事に臨んでいます。これは、「売り先さまだけでなく、仕入れ先さまもお客さまとして扱いなさい」という意味です。売り先さまが大切なのはもちろんですが、仕入れ先がなくては弊社の事業が成り立ちません。売り先さま、取引先さま、社員をすべて大切にして、働きやすい環境で働いてもらえるように配慮しています。

現在、弊社は新商品や新規事業の開発を見据えながら、人事評価制度の見直しと再構築を図っています。公平な人事評価をしながら、社員を強化しつつ、待遇面でフィードバックできるように人事制度を変えていきたいです。自社においても他社においても、みんなが笑顔でオフィスに通勤できることが理想です。

編集後記

オフィス家具メーカーとして社内に置く椅子にもこだわっており、社員から「オフィスの椅子が良すぎて、在宅ワーク中は腰が痛かった」という声が上がった、といったエピソードが飛び出した。コロナ禍が明けてオフィスに人々が戻りつつある現在では、「オフィスに来たくなる環境づくり」に取り組んでいるという。「ぜひとも同社で働いてみたい」と感じるインタビューだった。

木村奬/1980年三重県生まれ、ブリガムヤング大学ハワイ校卒。2005年、アール・エフ・ヤマカワ株式会社に入社。2021年、同社代表取締役社長に就任。