地球温暖化による異常気象が世界各地で問題となっている現代、環境保護の意識がますます高まっている。そんな中、太陽光発電の普及や、廃プラスチックの再資源化事業に力を入れているのが、株式会社動力だ。
代表取締役の鈴木竜宏氏は、世界放浪の旅で得た気づきが同社設立のきっかけの一つであったと話す。今回は世界放浪の旅に出て得た気付きや、施工性に優れた自社製品の強み、求める人材などについて、代表取締役の鈴木竜宏氏にうかがった。
会社員を辞めて出た世界放浪の旅で気付いたこと
ーーまずは鈴木社長の経歴についてお聞かせください。
鈴木竜宏:
広告代理店に入社し、スーパーの店頭に掲示する広告のデザインをしていました。ただ、価格の安さを強調するものばかりで、創造性を発揮する機会が少なく、あまり面白さを感じられませんでした。
それからもっと世界を知りたい、自分の目で見てみたいと思うようになり、仕事を辞めて世界放浪の旅に出ます。ロサンゼルスからスタートしてアメリカを横断し、ヨーロッパ、モロッコ、アフガニスタンなどを1年間かけて巡りました。
ーー世界各国を巡る中で印象に残っているエピソードはありますか。
鈴木竜宏:
特にシリアやレバノン、イランなど、中東の国々に滞在していたときの記憶が強く残っていますね。イスラム教には「弱い人には優しくせよ」という教えがあり、その土地に馴染みのない旅行者も含まれるそうです。そのため、滞在中は多くの方々が手を差し伸べてくださいました。
たとえば、バス停にいた現地の方に目的地に行くバスを尋ねたときのことです。その方は3時間一緒にバスに乗ってくれ、私を送り届けるとそのまま元いた街に帰っていきました。ここまで親切な行動は日本では考えられません。
ただ人々の優しさを感じた一方で、内戦が収まったばかりのアフガニスタンは治安が悪く、怖い思いもしました。こうしてさまざまな国の文化や情勢に触れたことで、自分がいかに恵まれた環境で生きてきたのかと実感しましたね。
そしてこの世界旅行を経て、覚悟を決めて、真剣に仕事に取り組もうと考えるようになりました。
サラリーマンを辞めて独立。家庭用の太陽光発電の普及が追い風となり事業を拡大
ーー帰国後は建材会社に入社していますね。
鈴木竜宏:
手に職をつけたかったので、最初は職人になろうと思っていました。ただ、後輩に、私に向いていないのではないかと止められまして。そこで、これまでのスキルも活かせる建材のデザインをする仕事を紹介してもらいました。
そして建材会社に入り、製品のデザインや開発の仕事に携わりました。
ーーその後独立した経緯を教えてください。
鈴木竜宏:
太陽光発電の購入費を補助する「住宅用太陽光発電導入支援補助金」制度(※2013年度末に廃止)が始まったことが転機となりました。私は屋根や太陽光発電の部材をつくるのが得意だったので、これはチャンスだと思い開業に踏み切りました。
自宅の8畳間から小さく始めましたが、補助金制度の影響で業界自体が右肩上がりだったこともあり、事業は順調でした。製品の売れ行きは良く、設計の依頼も引っ切り無しに来ましたね。それから前職の部下たちが仲間に加わってくれ、多くの仕事をさばけるようになりました。
部品の開発から施工、メンテナンスまでトータルで対応。社員の健康や働きやすさを意識した経営
ーー貴社の強みについて教えてください。
鈴木竜宏:
弊社の強みは、部品の開発から販売、施工、メンテナンスまで一貫して対応できることです。自社で部品の開発から行っているため、高い品質を維持しています。また、製品を販売するだけでなく、施工も行う総合力が大きな強みです。日本各地に営業所を設けており、エリアを限定せず全国の施工に対応しています。
さらに弊社の製品は、部品点数が少なく軽量なため取り付けが簡単で、施工性に優れているのも重要なポイントです。なお、部品点数が少ない分、他社の製品より価格が安いのもメリットです。
ーー働く環境についてはいかがでしょうか。
鈴木竜宏:
禁煙を4ヶ月続けた社員にはAmazonギフトカードを支給する非喫煙者インセンティブ制度を設けるなど、健康経営に力を入れています。また、仕事とプライベートを両立できるよう、休暇制度も充実しています。年間110日以上の休日を設け、男性社員の育児休暇の取得も推進しています。
まだ改善の余地はあるので、今後も働きやすい環境づくりに努めていきます。
新規事業開発に向けて求める人物像
ーー今後の展望について教えてください。
鈴木竜宏:
2025年4月には大阪営業所を開設する予定なので、より多くのお客様にアプローチしていきたいです。また、2025年の大阪・関西万博で、古谷商店様と共同開発を行っている廃プラスチックの熱分解装置の出展が決まっています。これは使用済みのアクリル製品を熱でプラスチック原料に戻し、さらに新しいアクリル製品をつくる技術です。
この新規事業の開発に際して、特に理系の学生を積極的に採用したいと考えています。新しい技術開発に必要な科学の知識がある人や、建築、機械分野に強い人にも来ていただきたいですね。
ーー最後に就職・転職を考えている方々へメッセージをお願いします。
鈴木竜宏:
弊社は太陽光パネル設置用架台の開発・製造・販売事業に加え、環境に配慮した廃プラ再資源化技術開発にも積極的に取り組んでいます。私たちと一緒に新しい価値を創造し、社会に貢献したいという方をお待ちしています。自分のアイデアを形にできる環境が整っている職場で、この国をより良くするために、私たちと一緒に頑張りましょう。
編集後記
新卒で入った会社を辞め、自分の目で世界を見たいと世界放浪の旅に出かけた経験が大きな転機になったという鈴木社長。固定観念にとらわれず、自由な発想を持つ鈴木社長だからこそ、これまで事業を成長に導いてきたのだと感じた。株式会社動力は、限りある資源を有効活用して新たなエネルギーを生み出し、これからも人々の生活を支えていく。
鈴木竜宏/1971年愛知県生まれ。愛知大学卒。広告代理店に入社し、その後世界1周放浪の旅へ。帰国後、1998年に建材開発会社に入社し、10年の経験を経て2008年に独立。