株式会社ジーニーは、広告プラットフォーム事業とマーケティングSaaS事業を展開する企業だ。近年では最先端の生成AIの技術を活用し、各プロダクトに搭載。1社でも多くの日本企業が生産性が改善でき、売上が伸びていくような世界を目指している。
同社の強みや、「誰もがマーケティングで成功できる世界」を目指す思いなどについて、代表取締役社長の工藤智昭氏にうかがった。
異業種の相乗効果により、効果的なマーケティングをサポート
ーーまずは貴社の事業内容について教えてください。
工藤智昭:
弊社の事業は主に3つあります。1つ目が広告プラットフォーム事業です。Webサイトの閲覧者に合った広告を表示する技術(アドテクノロジー)を使い、広告収益や効果を最大化させるプラットフォームを提供しています。
2つ目が、国産のセールス&マーケティングプラットフォーム「GENIEE Marketing Cloud」を運営するマーケティングSaaS事業です。チャット型のWeb接客プラットフォームなどを活用し、集客から販促、受注までを一貫して実行・管理します。
3つ目が、アジアを中心に5カ国6つの拠点で展開している海外事業です。自社のプロダクトに加え、認定パートナーであるGoogleなどのプロダクトも現地企業や日系企業に提供しています。
これらに加え、生成AIの研究・サービス化に特化した戦略的グループ会社「JAPAN AI」を創業し、ジーニーグループ全体で生成AIの事業に取り組んでいます。
ーー貴社の強みは何でしょうか。
工藤智昭:
異なる事業をかけ合わせることで提供価値を高め、支払い対価を最大化することで、圧倒的な費用対効果を生み出せる点ですね。費用対効果を高める要素は、主に3つあります。
1.経営管理:経営方針や事業管理体制を整備し、企業理念をもとに採用・育成することで、組織力を強化しています。
2.テクノロジー:各プロダクトに最先端のAI機能を実装することで、パフォーマンスを高めています。
3.ビジネス:エンジニアと顧客の間に立ち開発を指揮するプロダクトマネジャーの採用・育成を行い、プロダクトの価値を高めます。
こうした業務の効率化と高いコストパフォーマンスにより、顧客企業がマーケティング効果を最大限発揮できるようサポートしています。
テクノロジー企業で社会を変えたい。目指すは日本発のGoogle
ーー起業に至った経緯と起業当初の思いについてお聞かせください。
工藤智昭:
大学在学中にネットベンチャーを立ち上げたのを機に、「いずれ社会を変えるような会社をつくりたい」という思いが芽生え、経営のノウハウを吸収するため株式会社リクルートに入社し、ネット広告関連事業に携わりました。
そのうちに自分でテクノロジー企業をつくってみたいという思いが強くなり、起業を決意したのです。
こうした理想を描いて起業したものの、最初の2年間はとにかく売上を上げるのに必死でしたね。その後、事業が軌道に乗り始めた頃、幹部社員たちと今後どのような会社にしていくか話し合い、「Googleのような、日本発の世界的テクノロジー企業になる」ことをパーパスに掲げました。
ーー貴社の行動指針で大切にしているものは何ですか。
工藤智昭:
弊社には9つのバリュー(価値観)がありますが、中でも最も大切にしているのが、「オーナーシップ」です。どのような状況に陥っても外部要因のせいにせず、自分たちでできることを考え、実行に移す。そういった当事者意識を持つことを大切にしています。
今後のビジネスに不可欠なAIモデルの運用を支援
ーーグループ会社であるJAPAN AI株式会社について教えていただけますか。
工藤智昭:
JAPAN AIでは、法人向けに自社のAIモデルを構築・活用するサービスを提供しています。
インターネットが普及した頃には、パソコンを使いこなせる人と使えない人の間に、大きな生産性の差が生まれましたよね。そのときと同様に、今後3年から5年の間に、AIが働く人の働き方や考え方を大きく変えると思っています。
そこで私たちはツールの使い方などをサポートすることで導入のハードルを下げ、誰もがAIを活用できる世界を目指します。AIを使えば従業員の負担を軽減でき、売上もアップできるため、すべての企業がAIを導入するべきだと思いますね。
まずは社内の受け入れ体制が整っていて、AIに取り組む強い意志がある企業をターゲットに販促活動をしようと考えています。弊社も30%以上の成長率を維持するため、最新技術を活用し、生産性の改善に取り組んでいきます。
夢は誰もがマーケティングで成功できる世界の実現
ーー貴社が求める人物像について教えてください。
工藤智昭:
弊社のバリューに共感できる人、特にオーナーシップを持ち、自立的にプロジェクトを動かせる人が理想ですね。また、新しいものを積極的に取り入れ、自己成長を楽しめる人を求めています。
さらに、私たちは社内の透明性を高め、自分の意見をしっかり伝えるオープンマインドも重視しています。スキルは後から身につけられるので、私たちの価値観に共感できるかどうかが一番大切です。
ーー幹部候補の育成にはどのように取り組んでいますか。
工藤智昭:
長期的な発展に不可欠な幹部の育成には、特に力を入れています。まずは現場で成果を出し、弊社のバリューを高いレベルで体現できる人を発掘しています。さらに、チームや事業全体のこと、さらに未来のことまで考えられる人だといいですね。
経営者は自分のことは脇に置いて、事業や会社を成功させるために何が最適かを常に考え、正しい判断をする必要があります。そのためには、日頃からテクノロジーや世の中の動きに高い関心を持ち続ける姿勢も重要です。
こうした資質を持つ社員にマネジャーや部長職を任せ、高度なミッションを与え続けることで成長を促しています。
ーー最後に工藤社長の夢と読者へのメッセージをお願いします。
工藤智昭:
私の夢は、弊社のパーパスである「誰もがマーケティングで成功できる世界」を実現することです。そのために社員数1万人の企業に成長させ、日本発のグローバルテクノロジー企業を目指していきます。
それと同時に、日本企業全体の生産性向上にも貢献したいと考えています。AIやITを活用して経営体質を改善することで、業績の低迷や後継者の不在などによる倒産を防ぎたいですね。
私たちのように日本をより良くしたいという思いを持ち、実現に向けて真剣に取り組む方と一緒に働きたいと思っています。
編集後記
「AIで日本企業全体の生産性を高めたい」という言葉から、日本のビジネスを盛り上げようとする熱い思いが伝わってきた。株式会社ジーニーは、これからも企業の生産性向上や利益拡大に貢献していくことだろう。
工藤智昭/早稲田大学大学院理工学研究科卒業。大学4年生で起業し、ネットベンチャー企業を経営。卒業後は株式会社リクルート(現:株式会社リクルートホールディングス)に入社。事業開発室にてインターネット広告事業推進を行い、国内最大のエリアアドネットワーク構築を手掛ける。2010年、株式会社ジーニーを設立、同社代表取締役社長に就任。