※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

広告効果測定プラットフォームの「アドエビス」をはじめとしたマーケティング支援を行い、東証グロース市場にも上場している株式会社イルグルム。「データとテクノロジーによって、世界中の企業によるマーケティング活動を支援し、売り手と買い手の幸せをつくる企業になる。」というビジョンのもと、カスタマーサクセスのために邁進している。

創業者でもある岩田氏にイルグルム設立までの経緯や、社内での画期的な取り組み、SaaS業界と会社の展望について詳しくうかがった。

複数の事業経験から得た、需要と競争における「体感」

ーー貴社の設立以前にも、起業や経営の経験があるとお聞きしました。

岩田進:
最初は起業ではなく引き継ぎですね。大学在籍時にアルバイトをしていた飲食店で、今のやり方よりも店に貢献できる方法があると、オーナーに直接、提案したのです。結果として、そのお店を引き継ぐことになりました。

飲食店の次は、バックパッカーだった経験を活かして、旅行ビジネスを立ち上げました。紆余曲折あってどちらも廃業となりましたが、失敗とは考えていません。経営に携わることで非常に大きな学びを得られましたし、その後、さらに前に進むことができました。

ーー過去の経営の中で、どのような学びが得られましたか?

岩田進:
特に大きかった学びは、自社特有の事業領域を設定することの重要性です。まだ表面化していない、お客様が課題と感じているテーマさえ見つけられれば、それを解決することによって喜んでいただけて、利益も上がります。再投資によって、さらに発展できます。この経営の本質を体感できたことは大きかったですね。

もう一つは、いかに競争しない環境を獲得するか、この重要性を身に染みて感じたことです。会社の存続をかけて事業を行うわけですから、それを脅かす競争相手が現れることを、諸手を挙げて歓迎することはできません。その重要性を学べたことが、何物にも代えがたい経験でした。

自分たちで市場をつくり、サービスを育てる

ーー現在の貴社の事業と、その強みについて教えてください。

岩田進:
インターネット広告の効果を測定する「アドエビス」(※1)、ECサイトの構築を支援するECオープンソース「イーシーキューブ(※2)」が事業の両輪となっています。それぞれ、対象とする領域でNo.1のシェアを誇る会社です。

(※1)アドエビス:日本マーケティングリサーチ機構調べ 調査概要:2021年6月期_指定領域における競合調査

(※2)イーシーキューブ:ECマーケティング株式会社が行ったネットショップ動向調査において「月商1,000万円以上で利用されているカートシステム」利用数にてNo.1を獲得

弊社としては、「絶対的なNo.1となるサービスを開発する」という目標を掲げています。すでにある市場で「一番になる」と考えている時点で、一番にはなれないと思うのです。

というのも、各社ひしめく中でトップをとるのは、当然、容易ではありません。他社にない新しいものとしてコンセプトを設定し、自分たちで市場をつくること。他社が追いつく前に、自分たちのサービスを育てきること。その結果として、一番になれると考えています。

弊社のサービス「アドエビス」がスタートした2004年時点では、類似のサービスはありましたが、広告効果測定という市場自体がありませんでした。そのため、私たちは別市場、別次元のサービスとして「アドエビス」をアピールできました。

ーー過去に、貴社の社内制度が注目を集めたと聞きましたが、どのような制度でしょうか。

岩田進:
弊社のユニークで人気のある休暇制度として、2011年からある「山ごもり休暇制度」というものがあります。日数は9日間で、取得にはいくつかの義務と条件があります。1つ目は、連続で取得するということ。2つ目は、休暇中は社内との連絡は禁止ということ。3つ目は、変更には厳重な決議が必要となること。山に籠るように、会社や仕事から一度、きっぱり離れるのです。

目的はいくつかあり、まず社員がしっかりリフレッシュできる休暇をとることです。連休があっても、人ごみを避けて家にいることが多くなりますよね。社員は、それぞれのタイミングで休暇をとることで、ピークを避けた海外旅行を楽しんだり、子どもの長期休暇に合わせてゆったり過ごしています。

次に、業務の属人性の解消です。弊社の環境では異動やジョブローテーションが難しく、各自が仕事を抱えがちな状態でした。長期休暇をとるために、自然と引き継ぎや業務が効率化されていくことで、社内の風通しも良くなりましたね。

優秀な人材を確保し、海外展開に向けてインパクトを生み出していく

ーー現在感じている会社の課題や、進めている取り組みについて教えてください。

岩田進:
今までは、テクノロジーが企業の競争において、より優位に立つための条件でした。そのような環境から、ニッチなクラウド型のソフトウェアもたくさん生まれました。しかし、現在ではすでに飽和状態で、極端なテクノロジーの向上は見込みづらくなっています。

次に必要なのは、そのソフトウェアを「使いこなす力」となるでしょう。弊社としても、ただサービスを提供するだけでなく、サービスのもつポテンシャルを十分に発揮できるような、コンサルティング領域に近いサポートを心がけています。そのためにも、お客様に真摯に向き合い、かつサービスを柔軟に使いこなせる優秀な人材を求めています。

ーー今後の展望を聞かせてください。

岩田進:
弊社の企業理念は「Impact on the World」。今は日本の限られた市場をターゲットにしていますが、グローバルに活躍することによって、さらなる価値を提供できる会社を目指しているところです。志高く、日々愚直に、目の前のお客様に向き合うことを大切にしながら、今後もより大きなインパクトを生み出していきます。

編集後記

2つの廃業経験を「いかに競争しないか」という学びの糧にした岩田氏。創業当初から、需要を見抜き、ネット広告の効果測定という新たな市場・サービスを生み出した慧眼はすばらしい。グローバル化を目指す株式会社イルグルムが新たにつくる、誰も見たことのない市場を想像するだけで、心が躍る。

岩田進/2001年、大学在学中に有限会社ロックオンを設立。2003年、株式会社ロックオンとして組織変更。2019年、株式会社イルグルムに商号を変更。ビジョンに「データとテクノロジーによって、世界中の企業によるマーケティング活動を支援し、売り手と買い手の幸せをつくる企業になる。」を掲げ、マーケティングDXとコマース支援サービスを展開している。