少子高齢化によって、若年層の労働人口は年々減少している。労働力確保のために人材派遣やアウトソーシングに移行する企業も少なくない。しかし、人材派遣業界も近年の働き方改革や求職・転職のニーズの変化に伴い、働き手の確保が困難になっているという。
そんな企業側と求職者側の不均衡を物ともせず、多数の契約を成立させ続けている人材派遣会社が株式会社ヒューマンコミュニティだ。「カリスマセールスマン」としての実績から、新規設立会社の社長にスカウトされて大きな実績を上げ、その後、自らの会社を設立し、成長軌道に乗せた代表取締役の古川幸雄氏の人生と経営についてうかがった。
トップセールスを経て、新たな道に挑戦
――ホンダで全国トップの営業マンとなるまでの道のりを教えてください。
古川幸雄:
幼少期は裕福な家庭環境でしたが、私が9歳迄に父が4回結婚し、家庭環境に恵まれなくなりました。継母のイジメがひどく、中学時代はたった1個のパンをかじって空腹をしのぐ日もありました。その後両親が離婚し、父子家庭になり経済的にも苦しくなりました。そのような状況にありながらも大学に進学させてくれた父親が早くに亡くなったことをきっかけに、自分の力で稼ぎ、生きていくことを自らに強く誓ったのです。
経験したアルバイトは数知れず、大学卒業後もさまざまな仕事に就きました。その一つが学研の教育教材の訪問販売です。門前払いが当たり前の日々を送り、水をかけて追い返されたこともありますが、営業成績はつねに全国トップクラス。お子さんや親御さんのためになりたいと、一生懸命に教材に関する情報を伝えたことが功を奏したのでしょう。
その後、自動車メーカーの本田技研工業に転職し、自動車のセールスマンになりました。もちろん姿勢は変えず、誠心誠意お客様に尽くした結果、数千人中、全国トップセールスを記録。私の営業手法がマニュアル化され、全国の優秀営業が集結した中で、名古屋の東急ホテルにてトップとしての講演も行いました。
――輝かしい実績から「社長スカウト」に至った経緯も気になります。
古川幸雄:
セールスの仕事は楽しかったのですが、新しいことに挑戦したい気持ちが湧き上がり、人材紹介会社の門を叩いたのです。すると、私の経歴や実績を見た社長から、これから立ち上げる人材派遣会社の社長就任を打診され、即決しました。
その会社を軌道に乗せた後、弊社を設立しました。前社の顧客への営業は一切せず、裸一貫でのスタート。営業経験を活かして自ら企業を飛び込み営業・テレアポ営業で回り、お客様を増やしていきましたね。
単に人を補う、業務を賄うだけでは人材派遣会社とは言えない
――貴社の強みを教えてください。
古川幸雄:
業界では数少ないプライバシーマークを長年に渡り取得しています。部門としましては人材派遣、業務委託・アウトソーシング、人材紹介、経営支援・コンサルティングと、トータルに事業を展開し、幅広い業種業態、職種に対応できることです。お客様の企業規模を問わず人材を供給し、官公庁・大手物流センター・大手食品工場より業務委託もいただき、日本郵便様には20年以上にわたって人材を派遣しています。
当社は、拠点や事業をまるごと任される数百人規模のアウトソーシングにも注力しています。始めは少人数の人材を派遣して成果を判断いただいた後、人数を増やし、最終的に一括で委託いただくという流れが弊社のスタイルですね。信頼関係の構築こそ、すべてが円滑に回るために欠かせない要素なのです。
――どのように良い人材を確保していますか。
古川幸雄:
求職者の一人ひとりと面接し、求職者の希望等じっくり話をうかがった後に派遣します。面接には、経験と知見がある社員が行い、場合によっては求職者と同じ業界で勤務した実績のある社員が同席します。当社は長きにわたりお勤め頂いている方が多数おられますので、その方からの勤務したいという方のご紹介も多く、派遣社員との信頼関係も築いているからこそ、最適かつ優秀な人材を確保し、派遣できるのです。
派遣社員が仕事内容や人間関係などで困った際は、担当者がすぐに駆けつけて、フォローしています。もちろん、派遣先の企業側から、派遣社員に関する相談などがあれば、すぐに対応します。「誰に対しても、何に対しても、誠心誠意取り組む」ということが弊社の揺るがない理念の一つです。
現在、安定した経営を維持しているのは、本部社員と派遣社員、お客様のおかげと考えており、その方々には感謝の思いしかありません。「良い職場で仕事ができるようになってうれしい」「良い人材を派遣、紹介してもらい、生産性や成果が上がった」と喜んでいただくことは、経営者冥利に尽きますね。
人生はマラソン。試練を乗り越え、仲間とともに未知のゴールを目指す
――今後の展望を教えてください。
古川幸雄:
創業以来、変わらず注力していることは、高齢者の就労支援と環境整備です。今の高齢者は若々しく、これまでに培ってきた豊富な知識や技術、経験を眠らせておくのはもったいないことです。高齢者が活躍できる環境を整えることが、今後の労働力確保にもつながります。
また、派遣社員の継続雇用だけでなく、正社員になれるよう直接雇用の推進及び経営状況や事業展開に応じた人材の派遣、一括で委託していただく既存顧客の深耕営業にも注力しています。経営側は事業の継続、人材側はキャリアアップを実現し、双方にとっての良い出会いを支援していきたいですね。
――求職中や貴社への転職、派遣登録を検討中の人へ、メッセージをお願いします。
古川幸雄:
私の趣味はマラソン(完走68回)です。マラソンは自分で限界や壁をつくってしまうと、記録は伸びません。風が吹けば前走者の後ろに着くなど、天候・コース・体調により刻々と変わる状況に、臨機応変に対応する力が求められます。
仕事や人生も同じで、限界を設定すれば、そこで終わってしまいます。壁に阻まれても自ら考え、仲間と力を合わせて乗り越え、突破する。そうすることで、成功というゴールのテープを切れるのです。これからも、弊社の主役である「人」のためになるよう、誠心誠意努め、企業様・正社員・派遣社員・携わる全ての「人」とともに走っていきたいですね。
編集後記
「少子高齢化による労働力不足を解消し、企業や社会に貢献する」との熱い思いを、笑顔を交えながら語る古川代表。その言葉の端々に、人を大切にする経営哲学が垣間見える。65を越えてもなお、鍛え抜かれた肉体と精神で走り続ける姿を見習い、その背中を追いかけて新しい時代の景色を見たいと思った。
古川幸雄/1956年、大阪府生まれ。大阪産業大学を卒業後、数々の職業を経験し、本田技研工業株式会社に転職。トップセールスマンとしての実績を評価され、新たに設立される派遣会社の代表取締役社長としてスカウトされ、就任。わずか5年で実績を積み、2000年、オーナー社長として人材派遣・紹介・業務請負・介護事業などを手がける6社を設立。現在は株式会社ヒューマンコミュニティ代表取締役と株式会社アイエヌジーCEOの代表取締役として、経営に注力している。