株式会社ひなたライフは、インテリア雑貨の通販事業を通して「ひなたのような暖かい暮らしの中にある幸せ」を提案している企業だ。2024年10月時点、Instagram公式アカウントのフォロワー数は約69万人。2017年に創業した会社でありながら、急速に認知を拡大している。
今回、代表取締役社長の江戸英雅氏に、ひなたライフが成功した背景、そして紆余曲折あった社長ならではの経営観を聞いた。
元役者から時給900円のアルバイター、正社員、そして経営者になるまで
ーーまずは経歴について教えてください。
江戸英雅:
高校卒業後、役者を目指すために千葉から上京しました。学校に通わずふらふらしていた僕を見かねて、親が役者の道を勧めてくれたのがきっかけです。上京してからは、アルバイトとレッスンを繰り返す日々を送っていましたね。
役者時代は、ミュージカルセーラームーンの5代目タキシード仮面に抜擢されるなど、大きな役を任せてもらうこともありました。ただ、「芸能界で生き残るのは厳しい」とも感じており、23歳のときに実家へ帰ることにしたのです。
実家に帰ってからは時給900円のコールセンターのアルバイトを始めて、30歳の頃に親会社から声をかけられて本社へ入社しました。この会社で経験した通販や物流の営業の仕事が、現在のひなたライフの事業にもつながっています。
ーーそこからどのような経緯で会社を創業したのでしょうか。
江戸英雅:
その後、アパレルEC事業を行うミューズコー株式会社に物流マネージャーとして入社しました。この会社で働く中で「アパレルは粗利率が低いから、どれだけ売っても儲からないのでは」と考えるようになったのが、起業のきっかけの1つです。
また、興味があったインテリア業界について調べる中で、インテリアはアパレルより粗利率が高いこと、商品の流行りすたりがあまりないこと、業界内にSNSを活用している企業が少ないことに気づきました。
そこで「アパレル業界で使われているSNSの手法を、インテリア業界で応用すれば上手くいくのでは」と考え、株式会社ひなたライフを設立しました。
「コンテンツ=接客」の考え方で事業を成長させる
ーー事業内容について教えてください。
江戸英雅:
2つの事業を手がけており、1つはインテリア雑貨の総合通販サイト「Hinata Life(ひなたライフ)」の運営です。マーチャンダイザー(商品の開発から販売戦略までを担う人)が厳選した、おしゃれで便利な商品を取り扱っています。
家の中で使える商品がメインですが、コロナ明けから需要が高まっていることを受け、現在は外で使える商品の取り扱いも増やしているところです。
この「Hinata Life」は、メルマガやアプリを通してお客様とコミュニケーションをとりながら購買につなげているのが特徴です。コミュニティを通してお客様と深い関係を築き、ニーズを理解したうえで、お客様の幸せな暮らしの一部となれるような商品を展開しています。
そしてもう1つの事業が、テレビショッピングサイト「カチモ」の運営です。これはM&AでグループとなったMBSの通販番組を承継したものです。SNSと連動させた地上波の番組を持っているのは他社にはない特徴です。
ーー事業を行ううえでどのような考え方を大切にしてきましたか。
江戸英雅:
前提として、弊社が提供しているコンテンツは「接客そのもの」だと僕は考えています。「Hinata Life」では、それぞれの商品にどのようなメリットがあり、どのようなシーンで使えるのかなどをしっかりと記載することで、丁寧な接客を大切にしてきました。
ユーザー層は、通販サイトが40代、テレビショッピングサイトは60代が特に多いので、その年代に合わせたコンテンツの作成も重視しています。
やる気と覚悟さえあれば学歴やスキルがなくても成功できる
ーー会社が大きく成長した要因は何だと考えていますか。
江戸英雅:
最大の成長要因はInstagramの活用です。Instagramでインフルエンサーマーケティングを始めたインテリア雑貨の会社は、弊社が最初ではないでしょうか。
この戦略は最初の成長期につなげることができました。売り上げは創業2年後の2019年度に2億5000万円を達成。コロナ禍の巣ごもり需要もあり、2022年度には7億5000万円にまで一気に増えました。
今後はコミュニティを強化し、リピート率を上げていきたいですね。今後5年で売り上げ30億円の達成を目標にしています。
ーー最後に、社会で活躍する若手人材へメッセージをお願いします。
江戸英雅:
僕は中高生のときからまともに学校に通っておらず、学もありません。しかし今、成功に向けてなんとか踏ん張って頑張って経営ができております。
挑戦しない理由を見つけて「僕なんて無理」と諦めず、「僕にもできる」と思って挑戦してほしいと思います。やる気と覚悟さえあれば、誰だってきっと成功できますから。
編集後記
高校を卒業して役者の道へ進み、現在は経営者を務める江戸社長。紆余曲折ありながらも、自分を信じて突き進んできたからこそ今の成功があるのだろう。
生活を彩るインテリア雑貨、そして挑戦を通して若者に勇気を与える江戸社長の姿こそが、ひなたライフが多くの人を魅了する理由だと感じた。
江戸英雅/1979年生まれ。高校卒業後に役者を目指して上京。ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」の5代目タキシード仮面に抜擢。その後、様々な経験を経てアパレルECのミューズコー株式会社に入社。事業本部長として従事。2017年に株式会社ひなたライフの代表取締役社長に就任。2022年にM&Aを実施し、MBSグループへ参画。2023年にMBSで放映している通販番組「カチモ」を事業承継。