
新品タイヤ・中古パーツ、カー用品専門リサイクルショップで、20年近くの歴史を持つアイパーツ株式会社。同社は埼玉県をはじめとする関東地方で6店舗を運営し、中古パーツの買取販売と並行して海外製の高品質な新品タイヤも販売している。
ECサイトにも力を入れており、ヤフーオークションのベストストアアワード 2024「自動車タイヤ・ホイール部門」で1位を獲得した実績も持つ。同社を創業した代表取締役社長の中村是紀氏に事業内容や、今後の展開などについて話を聞いた。
叔父が勤めていた会社を経験し、自分の道を行く決意をした
ーー社長のこれまでの経歴を教えてください。
中村是紀:
私の社会人としてのスタートは、大学進学か就職か迷っていた時期に、自動車部品等を扱う総合商社に勤めていた叔父が声を掛けてくれたことでした。同社では営業マンとして、整備工場や板金塗装会社等を回る毎日でした。
ーー独立を決意したきっかけは何だったのでしょうか?
中村是紀:
きっかけは法人相手ではなくユーザーに直接販売する小売業をしたいと考えたことです。そこで、当時の社長に「自分の道を行きたい」と伝え、社内に事業部として、アイパーツ事業部を発足させました。
そこから、独立に向けて自分でソフト会社を探してバーコード管理システムを開発し、買い取った商品の登録や在庫管理の仕組みを構築していったのです。加えて、社員募集から面接、給与決定まですべて1人でやり、0から事業を立ち上げていきましたね。その後、2006年に分社化し、現在に至ります。
中古がないなら新品を、シンプルな発想が生んだ事業の躍進

ーー貴社の事業内容を教えてください。
中村是紀:
お客様から不要になった自動車部品を買い取り、洗浄や整備をしてリユース販売する事業を行っています。以前は直営店を10店舗ほど展開していましたが、現在は6店舗に集約し、代わりにネット販売を強化しています。その結果、ネット事業部の売上を全体の75%まで引き上げることができました。
弊社は中古部品の販売だけではなく、低価格で高品質なタイヤを提供することにも力をいれています。そのため、台湾や中国など海外のメーカーと幅広く取引しており、中国のタイヤメーカーだけでも今までに取引きした会社は20~30社あります。
最近は、中国製タイヤの品質が特に向上しており、「中国製だからだめ」なんてことはありません。さまざまなタイヤを提供することで、マニア層から一般のお客様まで幅広い支持をいただいています。
ーーなぜタイヤ販売に注力しているのでしょうか?
中村是紀:
会社の将来を見据え、複数の主力商品が必要だと感じていました。車関連のビジネスを続ける中で、消耗品のタイヤが最も安定した需要があると思ったのです。特に、一般的な車の中古タイヤは手に入りやすいものの、太いサイズのタイヤは中古市場ではほとんど流通していません。そこで2007年ごろに、海外から太いサイズのタイヤを仕入れることを考えました。
台湾のメーカーとの取引を通じて、国内ではマイナーな銘柄のタイヤを扱い始めたのが転機となりましたね。「中古で入手できないなら、新品を仕入れて売ればいい」というシンプルな発想から始めた取り組みが、今の事業の基盤になっています。
評価制度の刷新で目指す組織基盤の強化
ーーECサイトでの実績についても教えてください。
中村是紀:
弊社はヤフーオークションでもご好評をいただいており、ベストストアアワードの表彰も受けております。2024年には「自動車タイヤ・ホイール部門」で1位を獲得するなど、数々の実績を積み重ねてきました。現在は、タイヤ以外にも雑貨を60〜80アイテムほど取り扱うなど、品揃えの拡充を図っています。
ーー今後の展開についてお聞かせください。
中村是紀:
今後は組織基盤の強化に力を入れていきます。特に人材採用と評価制度の構築が重要だと考えています。これまでは私が直感的に判断する部分が多かったのですが、会社が成長するにつれて、明確な評価基準の必要性を感じるようになりました。現在は新しい評価の仕組みを検討中で、単に店舗の実績だけでなく個人の貢献も適切に評価できるよう改革を進めているところです。
また、採用面では協調性があり、一生懸命仕事に取り組める人材を求めています。周りの人に迷惑をかけないように努力できる、真面目な方に来ていただけると嬉しいですね。
弊社は社員に恵まれたからこそ、ここまで成長することができました。タイヤの販売やEC事業が好調な今だからこそ、こうした取り組みを通じて組織の土台をしっかり固め、より一層の成長を目指していきたいと思います。
編集後記
業界の流れや顧客ニーズを的確に捉え、柔軟に事業を展開してきた中村社長の経営手腕が印象的だった。従来の固定観念を打破し、海外製の品質の高い商品に着目するという視点は、ビジネスにおける「当たり前」を疑う大切さを教えてくれる。こうした姿勢が、今日のアイパーツの成功を支えているのだと感じた。

中村是紀/1961年、東京都生まれ。日本大学第一高等学校卒業。1979年、自動車部品総合商社に入社。自動車部品販売の経験を積み、2001年に同社内でアイパーツ事業部を発足。2006年にアイパーツ株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。