※本ページ内の情報は2024年11月時点のものです。

株式会社TFPグループは、アプリ開発と保険代理店事業を両立させ、独自のビジネスを展開する新進気鋭の企業だ。自社開発のアプリ「保険マネージャー」は、保険加入者が自身の契約内容を可視化し、簡単に把握できるサービスで、利用者数は着実に増加している。

一方、保険営業マン向けの「保険カルテ」は、顧客データの分析を自動化し、営業効率を大幅に向上させている。創業から急成長を遂げる同社の取り組みと今後の展望について、代表取締役の田中壮氏にお話をうかがった。

消防士から保険業界へ、覚悟を決めた転身

ーー保険業界に入ったきっかけをお聞かせください。

田中壮:
大学まで野球をやっていたのですが、プロ野球選手にはなれないなと感じ始めました。それならば、ビジネスの世界で背中を追われる存在になりたいと思い、いつか社長になろうという気持ちが芽生えたのです。その後、システム開発や消防士などの経験を経て、2013年にプルデンシャル生命保険株式会社に入社しました。

きっかけは2013年1月に大学野球の監督が集まる場で聞いた、「人生どこかで腹を据えて覚悟を決めなければならないタイミングがある」という言葉でした。当時、私は自分の仕事に疑問を感じていたので、手帳に「覚悟を決める1年にする」と書き、その通りに行動すると決めました。すると、その年の5月にプルデンシャル生命からスカウトの電話があり、7月に入社することになったのです。

ーーそこからどのような経緯で貴社を創業したのでしょうか?

田中壮:
プルデンシャル生命では、2年間営業をして約4,000人中4位という成績を残し、営業所長も経験しました。その間、業界の現状や歴史を学ぶ中で、保険代理店の可能性に気づいたんです。当時は1社の商品を扱うのが主流でしたが、複数の保険会社の商品を扱う代理店の方が、お客さまの多様なニーズに応えやすいと考えました。また、業界レポートを見ると、代理店からの保険加入率が毎年増加していることがわかりました。

そこで、2015年にプルデンシャル生命の仲間と共同で、株式会社イコールワンという代理店をスタートさせました。その後、2018年に株式会社TFPグループを創業し、本格的に独立しました。独立は簡単な決断ではありませんでしたが、保険業界をより良くしたい、そしてテクノロジーを活用して、新しい価値を生み出したいという思いが強かったのです。

保険×テクノロジーで業界に新風を

ーー貴社の主な事業内容について教えてください。

田中壮:
弊社は2つの軸でサービスを展開しています。1つは保険代理店事業です。これは主にコンサルティングを行っており、お客さまのニーズに合わせて最適な保険プランを提案しています。基本的には訪問やオンラインでの対応が中心で、お客さまのご紹介で新たなお客さまを獲得できています。

もう1つの軸が、テクノロジーを活用したサービス開発です。具体的には「保険マネージャー」という保険加入者向けの無料アプリと、「保険カルテ」という保険の営業マンや代理店向けのサービスを展開しています。

「保険マネージャー」は、ユーザーが加入している保険の内容をリアルタイムで自動取得し、可視化するサービスです。日本人の約8割が生命保険に加入していますが、その内容を正確に把握している方はあまり多くはないでしょう。このアプリを使えば、自分の保険内容を簡単に確認できるようになります。

一方、「保険カルテ」は2024年2月にリリースしたばかりのサービスで、紙の証券や保険設計書の情報を自動的に分析して、加入状況を可視化することにより、営業活動の効率化や、より適切な提案をサポートしています。

ーー貴社の強みはどこにあるとお考えですか?

田中壮:
最大の強みは、保険の販売と技術開発の両方を自社で行っていることです。さらに、技術開発を内製化していることも大きな特徴です。スタートアップでこのような形態をとっている会社は他にないと思います。

私自身、エンジニアとして働いた経験があり、エンジニアの気持ちも理解できます。また長年、保険の営業も経験してきました。保険加入者の気持ち、保険代理店の課題、保険会社の悩みなど、業界のさまざまな側面を理解した上でサービスを開発できることが、私たちの大きな強みだと考えています。

世界に通用する保険テックカンパニーを目指して

ーー今後の事業展開についてお聞かせください。

田中壮:
私たちは「インシュアテック」と呼ばれる、保険とテクノロジーを融合させた分野に注力しています。日本の保険市場は50兆円規模といわれていますが、まだデジタル化が進んでいない部分が多いのです。だからこそ、後発の私たちにもチャンスがあると考えています。

今後はさらに「保険マネージャー」と「保険カルテ」の2つを伸ばしていく予定です。特に「保険カルテ」はリリースして半年ほどで、既にARR(年間経常収益)で1,200万円ほどの実績が出ています。

また、保険業界全体の底上げを図っています。私たちが火付け役となって、業界を変えていきたいですね。自社で保険商品を開発したり、画像認識のAI技術を活用した新しいサービスを考えたりと、まだまだやりたいことばかりです。日本の保険市場は世界的に見ても上位に位置しています。この素晴らしい土台をさらに発展させ、より多くの人にとって価値のある事業にしていくためには、テクノロジーの力が不可欠でしょう。

私たちは、保険業界に特化したサービスを開発・販売する会社として、業界の発展に貢献していきます。同時に、私たち自身も成長を続け、世界に通用する保険テクノロジー企業を目指していきます。

編集後記

取材を終えて、「保険」という言葉に対する印象が変わった。真面目なイメージとは裏腹に、田中氏の語る保険ビジネスは、驚くほど先進的で興味深い。顧客の人生を考え抜き、テクノロジーを駆使して業界に革新を起こす。その姿勢に、ベンチャー精神と職人気質の融合を感じた。同社の挑戦は、私たちの生活をより安心で便利なものに変えていくことだろう。

田中壮/2009年、株式会社STEPに入社し、システム開発を担当。市川市消防局でのレスキュー隊の経験を経て、2013年にプルデンシャル生命保険株式会社に入社し保険業界へ。2014年には個人保険販売ランキングで全社営業マン約4,000人中4位となり、2015年に営業所長に就任。その後、保険代理店(株式会社イコールワン)を共同創業。2018年に株式会社TFPグループを設立し、代表取締役に就任。自身はMDRT(生命保険・金融サービスの専門家が所属するグローバル組織)2024年度TOT(トップ・オブ・テーブル/最上級の資格)基準を達成。