※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

太陽光発電を始めとした自然エネルギーにおける計測制御・PR表示・遠隔監視・シミュレーションシステムを提供している株式会社ラプラス・システム。大きな苦難を乗り越えて、現在では太陽光発電の遠隔監視システムにおいて、ダントツの国内シェアを誇っている。

今回は、そんな株式会社ラプラス・システムの代表取締役社長、堀井雅行氏に、これまでの困難をどう乗り越えたのか、また今後の夢についてお話を伺った。

「自信過剰」が起業を考えたきっかけ

ーー株式会社ラプラス・システムを創業するまで、どのような仕事をしていましたか。

堀井雅行:
大学卒業後は株式会社タイトーに入社しました。私は今でいうASIMOのようなロボットの開発を目指し、楽器演奏ロボット、ダンスロボット、ロボット操作のゲームなどを担当していました。

私は関西出身で、このまま一生涯、関東に住み続けることをイメージできなかったこともあり、大学の先輩が経営している京都の環境システム研究所に転職しました。そこで環境関連のデータ取得や、データの分析に携わっていたのですが、このあたりから「独立しようかな」という気持ちが芽生えてきました。

他の人のように大きな志があったわけではありません。「全部自分の思うようにやりたかった」というのもありますが、ロボット開発のために、ソフトもハードもメカも全部やっていたので「なんでもできる」と自信過剰になっていました(笑)。

ゲーム業界で培った見せ方へのこだわり

ーー太陽光発電の業界に携わるようになったきっかけは何でしたか。

堀井雅行:
創業して3〜4年ほど経った頃、たまたま太陽光発電関連の仕事をいただくようになり、下請けで開発をはじめました。そこでゲーム会社での経験を生かし、イラストやアニメーションを使って、発電量をビジュアル化した遠隔監視システムを開発しました。

当時の太陽光発電業界には根っからの技術者が多く、このような見せ方には批判もありましたが、高く評価してくれる人もいたため、可能性があるのではないかと考え、デザイン部署を作りました。普段目に見えない自然エネルギーを分かりやすく「見える化」する当社のこだわりは、今では多くの人に受け入れられ、高い評価をいただいています。

事業を進めていた際に直面した苦難

ーー1990年に創業されてから、今までどのような苦労がありましたか。

堀井雅行:
創業して33年経ち、社員にも恵まれ順調に業績を伸ばしておりますが、後悔していることも多いです。大半は製品にまつわる技術的な後悔ですが、人を雇い始めてから、雇用の難しさに直面しました。

当時は「みんなに給料以上の働きをしてもらわなければならない」と考えていました。一人ひとりの働きで、会社に新たな価値を生み出してほしいと思っていたからです。

しかし、「みんなに助けてもらっている」ではなく、「給与を支払っている」という観点が強かったのかもしれません。そして「みんなで協力し、助け合う」という意識が不十分だったと感じています。

そのような状態があった中で、ここまでやってこれたのは社員や周りの人に恵まれていたからであり、関わるすべての人々の支えがあってこそ、私たちは今日まで成長を続けることができました。

ーー中でも、特に大きな苦労はありましたか。

堀井雅行:
最たる苦労は、信頼していた社員が半数近くの社員を引きつれ独立したことです。15年ほど前、大学時代から一番仲の良かった友人を、ともに働く仲間として当社に招き入れました。

しかし、理由ははっきりとわかりませんが、最終的には社員の1/3から半数を引き連れてドロップアウトしたのです。

すぐに新しい会社ができて、約3ヶ月後には、当社と同等の製品が発売されました。また、社員と一緒に一部のお客様も連れていかれ、業績もかなり落ち込みました。

なんであんなことになったのか、何が悪かったのか、どうしようもなかったのか、未だに引きずっている部分があります。

業績を回復した秘訣は「総合力」

ーーどのように業績を回復したのでしょうか。

堀井雅行:
業績を回復できた要因は「総合力」だと考えています。創業当時は技術者のみの小さな会社でしたが、いまでは商品の企画・開発・製造・営業・出荷・品質管理・顧客サポート・メンテナンス・デザインなど、すべて自社でやるようになりました。最近ではハードの生産も自社で行っています。

このように、ほぼすべてを一気通貫で行っているのは当社だけだと思います。すべて社内で行うことで、市場の動向に柔軟に対応でき、問題が起きたときにも迅速に解決することが可能となっています。

パッケージも個別のソリューションも提供できるのが強み

ーー主要事業となっている「太陽光発電遠隔監視システム」の強みを教えてください。

堀井雅行:
今でこそパッケージ化できていますが、始めた当初はお客様の要望を受けて1件1件手作りしていました。

この頃の経験があるため、パッケージ化された商品だけでなく、個別のソリューションも提供できています。競合の多くはパッケージのみ、個別のみと、どちらかしか行っていません。両方を受注できることも、当社の総合力の一つだと考えています。

IoTへの参入、AIの活用が今後のテーマ

ーー今後注力する事業を教えてください。

堀井雅行:
太陽光発電の遠隔監視システムは、おかげさまでダントツの国内シェアとなりました。今後の展開は大きく2つです。

1つは、太陽光発電にとどまらず、電力やエネルギー全般に展開していきたいと考えています。具体的には、モニタリング、シミュレーション、蓄電池など、電力を最適化する「スマートエネルギー」事業です。そしてスマートエネルギーを社会システム全体に適用させた「スマートシティ」の基幹部分を担いたいと考えています。

もう1つはIoTの分野でデジタルプラットフォーマー(巨大IT企業)になることです。GAFA(Google・Apple・Facebook[現Meta]・Amazon)のように世界的な企業になりたいと考えています。すごく壮大な夢に聞こえますが、十分に可能性はあると思います。

太陽光発電で行ってきた「対象を計測・制御しモニタリングしたデータを分析して最適化する」、このIoTの役割は色々な分野に応用できます。計測対象が何に置き換わっても、システム的に大きな違いはありません。

5G、6Gになったら、ありとあらゆるものがつながっていきます。それらを管理運営して、ビッグデータを得て活かしていく。この分野で世界的な企業になることが大きな夢です。

若者にメッセージ

ーー最後に20〜30代の若い世代にメッセージをお願いします。

堀井雅行:
最近の若い人は本当に真面目だと思います。みんな誠実で勉強もしています。しかし、欲がなく、周りに気を使いすぎていると感じています。自分に得になるようなことを、もっと考えてもいいのではないでしょうか。

大切なのは、日進月歩で日々勉強することです。どんどん知識を吸収して、自分を高めてください。人と協調するだけでなく、一歩先に進むことを目指してほしいと思います。

編集後記

友人に半数近くの社員を引き抜かれながら、総合力で困難を乗り越えた株式会社ラプラス・システム。現在では、太陽光発電のモニタリング・制御・データ分析において、ダントツの国内シェアを誇っている。

そして今後は、IoTのGAFAを目指す。世界的な企業になる可能性を秘めた株式会社ラプラス・システムに注目だ。

堀井 雅行(ほりい・まさゆき)/1959年、大阪府出身。1983年京都工芸繊維大学工学部機械工学科卒業後、株式会社タイトーに入社。アミューズメントロボット等の開発に従事。1990年に有限会社ラプラス・システムを設立。さまざまな計測システムの開発を行っていたが、太陽光発電システムに出会い、その面白さと社会的意義に魅せられ、これを支えるシステム開発に取り組み始める。1999年に株式会社に組織変更。日本はもちろん世界に先駆けてこの分野でのシステム開発を進めている。