※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

日本では、金融資産が預金に偏り、投資へ向かう割合が低い傾向がある。その要因として、リスク回避志向の強さや、株式や投資信託への関心の低さが挙げられる。こうした現状の中、株式投資やFX(※1)をゲーム感覚で学び、安心して投資に取り組める環境を提供する企業がある。2013年に創業したグリーンモンスター株式会社だ。

同社が開発した体験型株式投資経験アプリシリーズは、累計900万ダウンロードを超え、社会にイノベーションをもたらしている。今回は、2024年に東証グロースへの上場を果たした同社の代表取締役の小川亮氏に、創業までの経緯、事業内容、そして目指す未来についてお話をうかがった。

(※1)FX(Foreign exchange):外国為替証拠金取引のこと。外国通貨の売買を行う取引。

就職活動も転職活動もしないまま、たどり着いた経営者への道

ーー創業に至るまでの経緯を教えてください。

小川亮:
大学卒業後、大学院に進学したものの中退。その後、約4年をフリーターとして過ごした後、知人が入社したモバイル総合商社にアルバイトとして加わりました。2年後に社員に採用され、マーケティングなどを担当し、約8年勤務しました。

しかし、会社が民事再生を申請する事態となり、新たな道を探すことになります。そのとき一緒に働いていた仲間から、「起業するなら、一緒にやりたい」と声をかけられたことをきっかけに、起業を決意しました。

グリーンモンスターは2013年に創業しましたが、私自身は前職で執行役員の立場にあったため、スポンサーがつくまでは責任を持って見届けたいと考え、弊社には2014年に正式に合流しました。

投資を疑似体験できるアプリを開発

ーー改めて、貴社の事業内容についてお聞かせください。

小川亮:
弊社は、投資学習の支援を主軸とする事業を展開しています。物価が上昇する中、給料が上がらなかったり、老後2,000万円問題が話題になったりと、お金に関する悩みは尽きません。一方で、情報としては知っていても、実際に投資に関する行動を起こせない方も多いと感じています。

弊社は、そんな方々の背中を押すため、「体験型」にフォーカスした、ゲーム感覚で投資を学べるアプリの開発と運営を行っています。具体的には、株式取引の知識を習得できる「株たす」、資産運用シミュレーションが行える「トウシカ」、外貨取引で利益を上げるための学習を提供する「FXなび」、そして暗号資産取引の基礎を学べる「暗号資産なび」があります。

これらのアプリでは、デモ取引や漫画を取り入れ、ユーザーが直感的に学習できる工夫を凝らしています。特に投資未経験者の方に体験して学んでいただくことで、資産形成に役立ててほしいと考えています。

ーー東証グロース市場への上場を果たし、新たな展望としてどのようなビジョンをお持ちですか?

小川亮:
これからの重点テーマは、「インベスターサクセス」(※2)、つまり投資家デビューされた方々の持続的な成功をサポートする事業です。

その一環として、2024年8月末に「投資の学校プレミアム」を運営する株式会社ファイナンシャルインテリジェンスがグリーンモンスターグループに参画しました。これにより、弊社が力を入れてきた投資初心者向けの投資学習支援に加え、投資デビュー後も継続して、より充実した学びの場を提供できるようになります。

また、少額からでも始められるNISAで投資を始める方は多いですが、その他にも金融商品や投資対象があります。たとえば、デジタル証券や貸付型クラウドファンディング(※3)のような、従来の投資商品にはない選択肢も提供することで、より幅広い投資の機会を届けたいと考えています。

(※2)インベスターサクセス(investor success):投資家としての成功という意味。

(※3)貸付型クラウドファンディング:インターネット上で投資家から資金を集め、その資金を運用して得られた収益を分配金として投資家に支払う仕組み。

単なる資産形成で終わらせず、投資家の人生をサポートしたい

ーー投資を通じて、小川代表が思い描く未来はどのようなものですか。

小川亮:
弊社は「おかねに対する意識と行動を変える」をミッションに、おかねに対して一歩を踏み出せない方に投資知識に関する知識や経験をサポートしています。単に資産形成だけでなく、投資を通じてお金を増やした先には生活や人生へのさらなる挑戦があると私は考えています。つまり、投資で資産を構築することで、挑戦できる人生を築き上げていただくために、投資への安心感が必要だと思っています。

今は投資学習支援事業をメインで展開していますが、企業理念である「UNLOCK THE POTENTIAL」をもとに、今後は「皆さん」がさまざまな可能性を広げていけるように、新たな挑戦を後押しするサービスに注力する予定です。この「皆さん」には、社会・アプリユーザー・従業員の3者が含まれます。

社会には、投資による資金循環と、イノベーションを生む土壌の拡大を期待し、グループ会社のFPコンサルティングやファイナンシャルインテリジェンスと連携して、社会全体の金融リテラシーの向上を目指した取組みを行っています。

また、アプリユーザーは、体験型投資学習アプリを通じて、安心感のもと新たな挑戦ができます。従業員に対しては、学びの機会を充実させるため、書籍やeラーニングの費用は会社が全面的に負担しています。従業員が自信を持って挑戦できるように、成功体験を重ねやすい環境を整えることを心がけています。

弊社の行動指針は、「プロダクトに愛を」「仲間にリスペクトを」「自分にチャレンジを」の3つです。従業員同士がお互いを尊重し合い、プロフェッショナル集団として新たな領域に挑戦する姿勢を大切にしています。弊社には何々長と呼ばれる社員はいません。私自身も代表取締役社長ではなく、あくまでも代表取締役なのです。

編集後記

「やってみる精神を大切にしたい」と語る小川代表のもとには、経験の有無にかかわらず、投資が好きで誠実な人が集まるという。そんなグリーンモンスターがつくるアプリだからこそ、最初は「おもしろそう」「やってみたい」と気軽に始めたユーザーも、本物の投資情報に触れることで成功や失敗を経験し、それを糧に実際の投資に羽ばたけるのだろう。日本に投資を浸透させるために、同社のサービスが果たす役割は極めて大きい。

小川亮/1978年、愛知県生まれ。一橋大学社会学部卒業。一橋大学院社会学研究科(修士課程)中退後、ホビーショップでのアルバイトを経て、モバイル総合商社に入社。通信キャリア向けCRMシステムの開発やネットマーケティング事業に従事。2014年にグリーンモンスター株式会社に入社。代表取締役に就任。