株式会社たき航グループは、「焼肉どうらく」を始めとする焼肉店や肉バル、イタリアンレストラン、ラーメン店などの飲食業を運営する会社だ。横浜市内を中心に20店舗以上の直営店を運営するほか、全国的にフランチャイズ事業も展開している。来春には生産センターの設立を予定しているという同社の代表者・滝航也氏に、起業から現在に至るまでの話をうかがった。
ホルモン焼き屋を運営するジムの会長の姿に憧れて飲食業へ
ーー25歳のときから飲食業に関わっているそうですが、なぜ起業しようと思ったのですか?
滝航也:
私はもともと、自分の頭でやり方を考えて仕事をすることが好きなタイプでした。10代の頃は自分でトラックを買って運転手として働き、自分で仕事を探して受けるのはもちろん、確定申告なども自分でしていましたね。
飲食業と出会ったのは、20代のころです。当時、私はキックボクシングジムに通っていたのですが、そのジムの会長がジムを運営しながらホルモン焼き屋も経営していたのです。
その姿を見て、「かっこいいな」と憧れました。そこで、会長のお店で働かせていただくことから始めました。その後、「もっと勉強したい」と自分で考えた末、会長のお店以外の街の焼き肉屋さんでも働かせていただいて新しい技術や知識を習得しました。さらにその後、25歳のときに会長からのれん分けをしていただいたのが、今のたき航グループの原点です。
そのお店を3年間経営したのち独立し、親しみやすい値段設定やフリードリンクなどを取り入れたファミリー層向けのお店を出店しました。1999年には事業を法人化し、その後、株式会社へ改組して事業を拡大し、現在に至ります。
人との出会いをきっかけにラーメン店にも参入
ーー経営者として、どのような考え方や価値観を大切にしていますか?
滝航也:
お客さまとスタッフがWin-Winになれることを大切にしています。今は直営店だけで20店舗以上あるので、言葉だけで私の経営方針がきちんと組織全体に伝えられるとは思っていません。ですから、自ら現場に出て背中を見せることを心がけています。スタッフが笑顔で働き、お客さまにも笑顔になってもらうような店舗が理想的ですね。
また、飲食業で一番重要なのはやはり仕入れだと考えています。特に肉の仕入れに関しては、複数の仕入れ先から仕入れることは考えておらず、信頼できる問屋さん1社からさまざまな部位を仕入れることが理想です。現在は信頼できる問屋さん1社のみと取引しています。一貫した仕入れルートを確立することで、美味しい肉を低価格でお客さまに提供できるのです。信頼できるパートナーとの長期的な関係が、弊社ならではの強みと言えます。
ーー現在はどのような事業を運営していますか?
滝航也:
主に焼肉店を中心に、肉バルなどのイタリアンや洋食系の飲食店を展開しています。最近は、ラーメン店も始めました。ラーメン店を始めたのは、やはり人との出会いがきっかけでした。「焼肉どうらく上星川店」の真向かいに7坪ほどの小さな物件があり、そこのオーナーさんから「滝さん、ここで何かやってくれない?」と頼まれたのです。
私はもともとラーメンが好きで、いずれラーメン店を出したいと考えていたので、その物件でラーメン店を始めることにしました。そのころよく食べていた中華そば屋さんの本社に電話して、飛び込みで「フランチャイズやっていませんか?」と問い合わせたところ、たまたま社長が電話の対応をしてくれました。そして、フランチャイズではなく弊社の店舗をプロデュースしていただく形で、出店が決まったのです。
未来へ向けて動き出す新たな挑戦とビジョン
ーー今後はどのようなことに注力されますか?
滝航也:
2025年の春ごろを目標に生産センターをつくろうと思っています。もともと弊社は生産の拠点がなかったので、いずれはつくりたいと考えていました。問屋さんの工場拡大にあたって、弊社にスペースを用意してくれるという話をいただいたので、現在、建設に向けて調整しているところですね。
自社が管理する生産センターで肉を加工することで、全体の目利きができ、クオリティを高い水準で均一化できます。各店舗で肉を仕込んでいると、質にムラができやすくなるというデメリットがありました。それらを1か所で品質管理できれば、どの店舗でも同じ美味しさを提供できるようになるので、多くのお客さまにもっと「焼肉どうらく」を楽しんでいただけると思っています。
ーー「今後こういう会社にしていきたい」という社長の理想を教えてください。
滝航也:
2年後に25億円の売上達成を目指したいですね。着実にやっていけば、実現可能な数字だと考えています。また、生産センターが完成した暁には大規模な広告展開を行ったり、フランチャイズ店舗を増やしたりしていきたいと考えています。
店舗を増やすには人も増やさなければいけないので、夢を持って元気いっぱいに働いてくれる人を採用したいですね。夢に向かって頑張っている人を応援したいですし、弊社の目標達成のために一緒に成長していければ素敵です。弊社では特定技能ビザ1号を取得している外国の方も、積極的に受け入れています。そして生産センターを整え、より良い人材を採用していきたいと思います。
編集後記
起業から生産センター設立の計画に至るまで、常に人との出会いによって事業を成長させてきた滝社長。それらエピソードには人を大切にし、前向きに人生を生きてきた人柄がにじみ出ており、とても温かな気持ちになった。「夢を持って頑張っている人を応援したい」という社長の言葉はこれからも同社の未来を明るく照らし続けていくことだろう。
滝航也/1970年、横浜市生まれ。20歳から運送会社に勤めるかたわら、キックボクシングジムに入門。キックボクサーとしてプロデビューを果たすが、飲食店を経営する会長に影響されて飲食の道に転職。25歳で会長から店を譲渡され、27歳でゼロから店づくりに着手。相鉄線星川駅前に実質的な創業店である「焼肉どうらく」1号店を出店する。1999年、有限会社たき航グループを設立。のちに株式会社に改組し、現在に至る。