※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

無限のエネルギー源である空気と技術の融合を追求し続け、圧縮機器・塗装機器関連の産業機器を取り扱う総合メーカーである、株式会社明治機械製作所。エアコンプレッサーやスプレーガンなどの製品を、機械工具・塗装業界をはじめ、医療・営農・石材・デザイン・自動車関連など、多くの分野に向けて提供している。

主力製品である電動エアコンプレッサーを中心に、今後も市場の拡大が予想される中、同社はトップメーカーを目指し、空気と技術の融合による革新を絶えず追求し、さらなる挑戦を続けている。今回は、代表取締役社長の佐伯直泰氏に、その歩み、成功への努力、そして未来への展望についてお話をうかがった。

「携わったからには、やり切りたい」。仕事に対する責任感と諦めの悪さ

ーー貴社に入社したきっかけをお聞かせください。

佐伯直泰:
私は中途採用で入社しました。前職を辞めて、ハローワークに行った際に、たまたま紹介されたのが弊社でした。東京、仙台、大阪など、転勤を繰り返しながら営業部長になり、目の前のことを頑張るという日々を送っていました。

ーー社長に就任するまでの経緯を教えてください。

佐伯直泰:
中途採用で入社したため、社長になるとはまったく思っていませんでした。ただ、諦めの悪い性格で、さまざまなことに対して「やり切らなければならない」という意識は強かったですね。一つひとつの仕事をやり切ったことが評価され、お客様や上司からの信用につながったのだと思います。

ーー特に印象に残っている出来事はありますか?

佐伯直泰:
一番印象に残っているのは、営業所の係長だった頃のトラブルです。特殊な状況下で3ヵ月ごとに機材に不具合が発生し、その都度、機材とスーパーバイザーを送っていました。そのスーパーバイザーが機材の設定をして直していましたが、問題の根本的な解決にはならず、最終的には新しい機材を開発・導入しました。

当時、私の上には課長や所長がいましたが、自分の仕事に対する責任感が強かったので、周りの人に協力してもらいつつ、私が主導して問題を解決しました。このように、一度決めたら最後までやり切ることを常に大切にしています。

ニッチ市場への注力、エンドユーザーの困りごとを解決する特注品の提供

ーー貴社の事業内容について詳しく教えてください。

佐伯直泰:
弊社は産業機械のメーカーで、コンプレッサー(空気圧縮機)とスプレーガン(塗装機)を製造しています。創業以来、日本のモノづくりを機械という面から支えてきました。会社が100年続けられたのは、そのような需要がある機械をつくり続けてきたからだと思います。

ーー事業をさらに展開するために、どのような取り組みを進めていますか?

佐伯直泰:
日本の市場は少子高齢化で縮小しています。汎用品をつくっていたら大手企業には勝てないと感じ、ニッチ市場で戦っていくことに決めました。現在は、ニッチ市場に力を入れている会社だということを前面に出してブランディングを行い、ホームページやYouTube、SNSなどで認知度を向上させる取り組みを進めています。

ーーインターネットの活用により、どのような効果が得られましたか?

佐伯直泰:
エンドユーザーからの問い合わせが増えました。様々な問い合わせに対応できるように、カタログ製品だけでなくオーダーメイドの商品も製造して、エンドユーザーの困りごとを解消する提案ができる会社になれるよう、日々努力を続けているところです。

高くても選ばれる製品を提供しつつ、LCCと生涯コストを最小限にする取り組み

ーー製品の価格戦略について、どのような考えをお持ちでしょうか?

佐伯直泰:
弊社では、2000年頃からLCC(ライフサイクルコスト)と製品の生涯コストを最小限にする取り組みをしています。製品のコストには導入にかかるイニシャルコスト、維持にかかるランニングコスト、そしてメンテナンスコストがあります。イニシャルコストが安くても、ランニングコストやメンテナンスコストが高いと意味がありません。弊社は全体コストを考慮し、最終的にお客様にご満足いただける製品を開発しています。

ーー貴社の製品は、どのような評価を受けていますか?

佐伯直泰:
私が入社した当時から、弊社の商品は市場で「高いけど丈夫だよね」と言われています。他社の製品を利用されている方からも、「明治機械製作所の商品を使いたい」との声を聞くことがあります。名刺の裏にLCCへの取り組みを記載し、エンドユーザーにも説明しています。

ーー貴社の強みや差別化ポイントは何でしょうか?

佐伯直泰:
製品をカスタマイズする能力です。既存の機械よりもカスタマイズされた機械のほうが品質や価値が高いはずです。機械の価格が少し上がっても、カスタマイズされた機械に変更することにはメリットがあります。他社ではカスタマイズに一定の製造数が必要ですが、弊社ではユーザーが必要な数に応じてカスタマイズができるのが強みです。

次世代の人材育成や市場展開など、常に今後を見据え挑戦を継続

ーー人材育成について、次世代のリーダーをどのように育てているのでしょうか?

佐伯直泰:
YMM(若手経営会議)という名称の取り組みを行っています。30〜40代の有能な人材が、さまざまなテーマで会議を行っています。現在の経営陣は参加せず、年に一度、YMMから経営会議に提案をしてもらっています。

ーー今後の新商品開発については、どのようなビジョンを持っていますか?

佐伯直泰:
世の中にないものを具現化するのは非常に難しいのですが、挑戦していくことは大切だと思います。ただ、新商品開発に加え、現状ある商品の用途開発も重要だと感じており、新しい用途を探して提案することも行っています。

ーー海外展開について教えてください。

佐伯直泰:
社長就任時に、国内市場が縮小する中で海外比率を上げることの重要性を感じ、海外比率を15%にすることを目標に掲げ、その達成を目指して日々の業務に取り組んでいます。

JETRO(日本貿易振興機構)のアドバイスを受けて、中国に代理店を設立しました。次にアメリカに進出するための情報収集をしている中で、大型ではない機械のニーズがあることが判明し、その市場に参入しました。

アメリカでの市場テストをInstagramに投稿したところ、ヨーロッパからも声がかかり、価格競争ではなく、品質面で差別化するために弊社の商品を導入してみたいとの話をいただいたこともありました。海外比率15%にはまだ達していませんが、現在10%となり、順調に進んでいます。

編集後記

「社員が幸せになるためにも、売上を求めるのではなく、利益の獲得を軸に経営をしていきたい」と語る佐伯社長。その言葉には、常に先を見据え、挑戦し続ける姿勢がうかがえる。株式会社明治機械製作所は、エンドユーザーの要望に応える特注品の提供や、LCCを重視した製品戦略で高い評価を得ている。さらに、次世代の経営者育成や海外市場への積極的な展開も行っており、今後の発展が期待される。

佐伯直泰/1960年生まれ、香川県出身。1983年に株式会社明治機械製作所に入社。営業現場でキャリアをスタートさせ、東京、仙台、大阪の拠点責任者を担当。営業部長を経て、2017年に代表取締役社長に就任。