※本ページ内の情報は2024年11月時点のものです。

衣料・雑貨の輸入事業からスタートした株式会社ソラオブトウキョウ。1993年、渋谷にオープンした「flower神南店」を皮切りに、個性的なレディース古着とオリジナル商品を扱うショップとして若者の熱い注目を集めてきた。代表取締役社長の北嶋正則氏に、ファッションとの出会いや事業を始めたきっかけ、今後の展望についてうかがった。

人生を変えたカリフォルニアの風景!海外から日本の古着市場をリード

ーー北嶋社長の経歴をお話しいただけますか。

北嶋正則:
学生時代は地元・北海道のテレビ局で、美術関係のアルバイトをしていました。当時からファッションが好きでしたが仕事にするという選択肢はまだなく、大学卒業後はしばらく自由気ままに過ごしていました。その後、アルバイト時代のご縁で東京の美術関連会社に就職しました。毎日楽しく刺激的だったものの、残業の多さから家に帰れないことがほとんどでした。

ふと未来を想像した時に「自分の生活スタイルを築くのはここではない」と思い、2年半が経った頃に退職を決めました。大学時代の友達がアメリカにいたこともあって、「渡米するなら今がチャンスだ」と安い航空券を取り、25歳でアメリカに渡りました。

アメリカに到着した翌日の朝、外に出たらそこには青空の下にヤシの木が並ぶ、美しいカリフォルニアの風景が広がっていました。その瞬間から私は“ここでやってみたい”という気になりました。

ーーアメリカで始めた事業についてうかがえればと思います。

北嶋正則:
始めは知り合いのデザイン事務所に所属しながら、日本の友達に古着を送ったりしていました。売上も少しずつ増えて、仲間も増えていきました。英語は話せなくても「好きなものを人に伝えたい」という強い気持ちがあれば、応援してくれる人が現れるものです。

70年代に日本は古着という市場がない時代から少しづつ古着を送っていて、だんだん取り扱う量も増えたので「これは仕事になるのではないか」と思い事業として取り組んでいました。

友人の助けもあって、1978年には永住権を取得できたので、古着輸出業の「sola of california」を法人化することが出来ました。社名の由来は、カリフォルニアで見た感動的な空(ソラ)の色です。「好きな事をやっていきたい」という生き方が、私の場合は「起業」につながったと言えます。

苦境の中で知った「役目」の変化--レディース古着店「flower」で人気を確立

ーー1993年に日本で「株式会社ソラオブトウキョウ」を設立されましたが、どのような経緯があったのでしょうか?

北嶋正則:
商品にも店づくりにもこだわって出店したflower1号店が軌道に乗らず、撤退を考え出した頃、アルバイトのスタッフが「私に買い付けをさせてください」と言い出しました。20代の彼女はアメリカに行ったこともなければ、古着を仕入れる流れも知りませんでした。しかし、少しでも現状を変えたかった私はその話に乗りました。

彼女が選んだ商品が時代に合っていたのでしょう。新たに買い付けた古着はお店でどんどん売れていきました。当時の私はアメリカへの愛情もあり、「買い付けに最適な人物は自分だ」と思っていましたが、私の役目は「やる気とセンスのある子たちをサポートすること」だと気付き、若い子たちに買い付けや運営を任せるやり方に変えていきました。

このやり方を始めて半年後に「オリジナルのデザインがしたい」という人を採用してからは、店で働きながらオリジナル商品をデザインして、その商品も売れるようになりました。それ以来、若い女の子が若い女の子の為につくるオリジナリティあるお店になっていきました。

若い女性のすごさは、自分が良いと思ったことをためらいなく実行できることです。受け身ではなく、自ら発信・行動する人たちが集まれる環境づくりにシフトしたことで弊社は成功を得ました。

ーー大切にしている思いをお聞かせください。

北嶋正則:
flowerのお店のテーマとして“LOVE&JOY”をかかげました。大好きな古着を買い付ける事、オリジナル商品を作る事、店でブランドの世界観を表現する事が「LOVE」です。そして、商品やブランドの世界観を愛して、お客様に喜んで頂き、我々も喜ぶことが「JOY」です。

「女性が生き生きと働く会社」というイメージが出来上がり、90年代は読者モデルのスタッフが「flower」の顔となりました。雑誌社から頼られるようになり、相乗効果で一世を風靡したことからも「お客様に喜んでもらうためにも女性の意見がこの会社を動かしている」という姿勢で会社を作り上げてきました。

メキシコで見つけた新たな希望--ライフスタイルブランド「Letra」でファンを拡大

ーー新ブランドを立ち上げたきっかけもうかがえますか?

北嶋正則:
日本で“flower”をやりつつもアメリカに住んでいた私は、近くて気軽に行けるメキシコ旅行を楽しんでいました。その中でプラスチックテープを編み込んだ独創的なバッグと出会って、日本で売ってみようと思い、私自ら「メルカドバッグ」と名付けて2014年「Letra(レトラ)」ブランドを立ち上げました。

ーー今後のご展望をお話しいただけますか。

北嶋正則:
メルカドバックの生産背景の中にはメキシコ受刑者の支援という側面もあります。現地の人々の社会復帰や工芸技術の継承にも貢献して、持続可能な産業へと成長させる構造を作りました。その工芸品を日本で流通させ価値ある商品を提供する事で、生産国の貧困を終わらせる取り組みが評価されて、日本SDGs協会から事業認定証をもらうことが出来ました。

「Letra」は店舗を持たず全国の商業施設を回るビジネスモデルとして確立しました。そして同時に、「Letra」ブランドの世界観に共感してくれる全国のショップ様とお取引させて頂いています。

今後は「flower」「Letra」2ブランドのECを強化しつつ、Instagramもより面白いものにしていきたいです。フォロワー数やブランドのファンが増えること、全国各地で声をかけていただくことに喜びを感じております。「出会い」を何よりも大事にし、自分の生きがいも感じながら、大きな夢を抱く人を育てていきたいと思います。

編集後記

現在は店舗の展開に重きを置かず、SNSやポップアップストアで社内ブランドの価値を高めている「ソラオブトウキョウ」。自分の好きなことを「仕事」として、生きがいや喜びを感じている北嶋社長の生き様は多くの人が羨むところだろう。しかし、その背景には出会いをもたらす「行動力」と、自身の立ち位置を俯瞰的に見る「柔軟さ」があるということを胸に刻みたい。

北嶋正則/1949年、北海道生まれ。札幌大学経済学部を卒業。1975年、アメリカ文化に興味を持ち渡米。1978年にアメリカの永住権を取得。同年、カリフォルニア州ガーデナ市に古着輸出業社「sola of california」を設立。1993年、日本に「株式会社ソラオブトウキョウ」を設立。同年、flower神南店を開店。2014年、ブランド「Letra」をデビューさせる。2024年、「Letra」が日本SDGs協会から事業認定証の交付を受ける。
・公式ECサイト「flower」「Letra
・北嶋社長 公式Instagram
・flower web 公式Instagram
・Letra PR 公式Instagram