※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

インターネット通販が拡大を始めた黎明期に起業し、現在は楽天市場を中心に成功を収めた基礎化粧品ブランド「PLuS(プリュ)」「MUQURU(ムクル)」を手がけるスタイルクリエイト株式会社。創業者で代表取締役の赤松宏樹氏は、服飾業界での経験を活かし、新たな価値観に基づくブランドを立ち上げた。

困難を乗り越えながらも、常に挑戦を続けてきた背景には、強い信念と柔軟な経営哲学がある。インターネットを主軸としつつ、消費者の心に寄り添った商品づくりを続ける赤松社長に、これまでの歩みと今後の展望についてうかがった。

挑戦の軌跡 本拠地を東京から香川に移し事業再編成

ーー起業を決意した経緯をお聞かせください。

赤松宏樹:
服飾に興味があり、はじめはレディースのアパレル企業に営業職として入社しました。もともと企画に興味があったのですが、その企業では課長級に昇進しなければ企画職に就けない体制でした。営業の成績がずっとトップで、社長とも面識があったため、直接交渉して企画部に異動したのです。しかし、企画部でも自由にアイデアを活かせないことに不満を抱き、もっと自由にものづくりができる環境を求め、1999年に起業しました。

ーー起業後、どのような苦労がありましたか。

赤松宏樹:
セルフエステ業から始め、妻が興味を持ったのをきっかけに、パソコンに詳しい弟とともにサプリメントのインターネット通販を始めました。しかし、どちらも集客が難しく、思うように結果がでませんでした。資金が限られた中でのスタートだったため、広告費をかけられず、「広告は資金ができてから」と考えていたのです。

しかし、楽天市場担当者から何度も広告を出すように言われたこともあり、最後のチャレンジとして思い切ってサプリメントのインターネット通販に25万円の広告費をかけたところ、500万円の売り上げにつながり、半年後には年商6000万円にまで伸びました。「売れてからお金をかけるのではなく、売るためにお金をかける」に、180度考えが変わった経験でした。

ーーその後は順調でしたか。

赤松宏樹:
一時的に売り上げが落ち着く時期もありましたが、サプリメントは広告費をかければ効果が出ることが分かり、セルフエステサロンも1000万円規模にまで成長させました。その後、新たに始めたまつげエクステやまつげパーマの事業がヒットして、ちょうど将来のことを考えていた頃です。再び会社が危機に直面し、事業を集約するために、東京の事務所を閉鎖して弟が住む香川県に拠点を移すことになったのです。

少規模で利益を出していくには自社商品しかないと、楽天市場内での空白地帯を狙った自社商品の開発に乗り出しました。そしてできたのが、現在の看板商品「PLuS」シリーズです。その後「PLuS」のフェイスマスクが大ヒットし、今に至ります。

本気のものづくりを追及 自社ブランドで地元から世界へ

ーー現在の事業内容について教えてください。

赤松宏樹:
現在、自社ブランドの「PLuS」と「MUQURU」を主にオンラインで展開しています。「PLuS」は楽天市場で1,300円前後の価格帯という設定で開発しました。しかし、僕らが本当に自信を持てるものづくりで勝負するブランドも必要だと考え、2021年に立ち上げたのが「MUQURU」です。名前やパッケージのイメージが直観的に浮かび、デザインやコンセプトも僕が直接社内に提案しました。

「PLuS」も魅力ある商品をそろえていますが、100円、200円の価格差が商品に大きく影響するので、わずかな差で取り入れられなかった少し高価格の商品を「MUQURU」で扱っています。

ーーこれまで運営上、意識してきたのはどのような点ですか?

赤松宏樹:
まず、「面倒に思えることから先に実行する」ということです。経営でも競争でも、みんなが避けがちなことにこそ進んで挑むことで、それが差別化ポイントになります。これは、アパレル業界で働いていた時代に社長から学んだことです。

もうひとつは、「やらなきゃ」よりも「やりたい」という気持ちで行動することです。義務感よりも情熱が湧く方が前向きに取り組めるからです。面倒なことでも湧き上がる気持ちが先に立って実行できることが、理想ですね。

次世代育成と新商品開発 スタッフ主役のアイデア制度

ーー今後、どのような会社にしていきたいですか?

赤松宏樹:
2024年で25周年を迎え、これまでは僕と常務である弟が中心となって事業を続けてきましたが、50歳を過ぎた今、次世代の育成に注力しています。お客様に常に新鮮さを感じていただけるように、新商品開発は不可欠ですが、僕自身が楽しんでいるため、スタッフに頼られてしまっているところがあるのです。

今後は、幹部人材の育成に取り組み、パッケージデザインやものづくり、メーカーとのやりとりも少しずつ引き継いで、僕と弟がいなくても事業を安定して運営できる体制づくりを進めたいと考えています。

事業については、現在、既に日本のほかにも、中国、香港、台湾、ベトナムなどでビジネスステージを展開しています。今後も、化粧品・美容用品・栄養補助食品などを通して、さらに事業を拡大していこうと考えています。

ーー新商品の開発についての取り組みを教えてください。

赤松宏樹:
新商品をリリースしても「安かろう、悪かろう」ではお客様にリピートしていただけません。そのため、品質への信頼が最も重要です。現在、スタッフ全員が毎月1つ、アイディアを会議に提出し、採用されたアイデアには手当を支給するという取り組みをしています。

これにより、スタッフが商品開発に積極的に関わり、皆のアイディアでより良い商品が生まれるだけでなく、スタッフの責任感も育まれ、お客様への感謝の気持ちも深まると考えています。

編集後記

数々の試練を乗り越えてきた赤松宏樹社長。そこに浮かび上がるのは、ふるさとや家族との強いつながりだった。消費者のニーズを的確に捉えて生まれた「PLuS」と「MUQURU」という2つのブランドでは、今後も「これがほしかった」と感じさせる商品を届けていくことだろう。

現在、スタッフに権限を委ね、育成に注力する体制が整いつつあるという。次世代にバトンをつなぐスタイルクリエイト株式会社はどのような新商品・新展開を見せてくれるだろうか。その可能性に、期待が募る。

赤松宏樹/1970年、香川県生まれ。大学卒業後、アパレル会社を経て1999年にスタイルクリエイト株式会社を設立。代表取締役に就任。