国内外問わず多様なメーカーの新車・中古車を取り扱う「トータルディーラー」という企業像を掲げ、自動車販売業界のリーディングカンパニーを目指して、事業を展開しているケーユーホールディングス。
世界的な販売台数の減少、慢性的な人手不足、電気自動車登場によるサプライチェーンの変化など、自動車販売業界を取り巻く環境は大きな変革期に突入している。そんな中、ケーユーホールディングスの社長に就任した板東徹行氏は、いち早く業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み、独自のマネジメント理論によって多くの有能な人材を輩出し続けている。
板東徹行社長に話を聞いた。
トップブランドから国産中古車まで
――まずは貴社の事業内容をお聞かせください。
板東徹行:
弊社はホールディングカンパニーの下に4つの事業会社があります。1つは創業事業である国産中古車販売、2つ目がメルセデス・ベンツの正規代理店です。現在はこれが最大の事業になっています。3つ目がBMW、MINIのディーラー、4つ目がジープ、キャデラック、フォルクスワーゲンのディーラーです。
弊社のユニークなところは、トップブランドから国産中古車まで幅広いレンジで車を扱っているところだと思います。
コロナ禍への対応とデジタルトランスフォーメーション
――コロナ禍下では、それまで順調だった企業が廃業を余儀なくされることがありました。貴社はどういった状況でしたか?
板東徹行:
弊社はガイドラインに従って、極端な時短営業をしました。10時から4時までです。その後、幸か不幸か新車の供給が滞り、中古車価格が高騰するという状況になりました。人気車種の奪い合いになって、コロナの時期は逆に利益率が上がったくらいです。
その他、全社としてDX推進に取り組みました。社内にDXの専門チームを作って、業務の電子化を進めました。自動車販売業界では、どこよりも早く取り組んだと思います。今では、ホールディングスの管理部門はほとんど在宅勤務です。在宅勤務に切り替えても、業務運営に関して影響はありませんでした。
自動車の販売会社は、印鑑証明や車庫証明などに代表される紙の文化です。紙の文化に馴染んでいる人は最初DXに戸惑っていましたが、半年ぐらい経つとみんな慣れていきました。
――社長は保険会社から入社してすぐに専務執行役に就任されました。現場がわからない状態で陣頭指揮を取るのは大変だったのでは。
板東徹行:
マネジメントというのは現場の延長ではないと思っています。ですから、私は必要以上に現場を知らない方が良いと思っています。現場を知れば知るほど、お客様目線からずれることあります。
人材育成と今後の事業展開
――人材の採用、幹部の育成についてのお考えを聞かせてください。
板東徹行:
日本全国共通の課題だと思いますが、今労働人口が減っていますので、外国人と一緒に働ける環境をどう作っていくかがテーマです。弊社もメカニックに関しては、新卒の60%強が外国人です。外国人と同じ目線に立って、組織を運営していくことが重要だと思っています。
もう1つはマネジメントです。先述しましたが、現場の延長線上だとマネジメントにならない。だから、早い段階からマネージャー候補を決めて、実績とは関係なくマネージャーをやってもらう。実際に役員クラスでも40代中盤で就任するケースはあります。ある程度の失敗をすることは見越して、それでも信頼して権限委譲し、任せてみる。自分で判断し、意思決定させる経験を積んでもらうことで成長させる。マネージャーや店長くらいの役職からそのような経験をすることで、もちろんプレッシャーを感じることはあるでしょうが、それでも現場のマネージャーも店長もみんな楽しそうに仕事をしていますね。
――今後の事業展開はどのようにお考えですか。
板東徹行:
日本はやっぱり高級車が人気です。「若者の車離れ」ということがいわれますが、お金を持っている若者は実際に高級車を買っています。
日本の高級品マーケットは世界有数です。日本には「銀座」というトップブランドがありますが、銀座のような本当のトップを意識したブランディング戦略を進めていきます。
――最後に若い人に向けてメッセージをお願いします。
板東徹行:
若い人については僕らの世代より優秀だと思っています。テクノロジーは進化し、生産性も上がっていきます。若い人に言いたいのは、自信を持ってやればいいということです。
時代は常に変わります。自分たちがいつか主役になれるわけですから、その時を見据えてベーシックな知識を蓄えるための勉強をし、自信を持って進んでほしいですね。
編集後記
前会長兼社長の井上恵博氏の娘婿という立場で、ケーユーホールディングスに専務取締役として入社した板東氏。「現場を知らない」と反発を受けることも多かったという。
板東社長は「むしろ現場を知らないことがマネジメントに有利」と考え、DXを始めとした社内改革を断行。右肩上がりの成長を実現している。
高級車マーケットにより一層力を入れるという板東社長とケーユーホールディングスの行く末が大いに注目される。
板東徹行(ばんどう・てつゆき)/徳島県出身。1962年生まれ。慶応義塾大学商学部卒、アメリカン大学経営大学院終了。ジャックス社、興亜火災海上保険(現 損害保険ジャパン)社を経て、2003年1月 株式会社ケーユー(現 ケーユーホールディングス)に専務執行役員として入社。2004年6月 副社長執行役員就任。2021年12月 代表取締役社長就任。