アイメックス株式会社は、創業74年を迎える産業機器メーカーだ。「ビーズミル」や「3本ロールミル」、「プラスチック押出成形装置」など、製造業の上流工程で原材料の加工に使用する機械の製造販売を行っている。リーマン・ショックによる3期連続の赤字からV字回復を果たした同社の取り組みと今後の展望について、代表取締役社長の五十嵐康雄氏にうかがった。
粉体処理技術で世界のものづくり企業を支える
ーーまずは社長の経歴を教えてください。
五十嵐康雄:
私の父が弊社の社長をしており、私も子どものころから会社の事業については知っていました。しかし、私自身はいずれ事業を継がなくてはならないという思いはなく、自分のやりたいことができる大学に進学しました。卒業後は、「業種業態を問わず、日本経済を支える仕事に携わりたい」という思いから、物流会社に就職したのです。そこでは、一度引き受けた仕事を全うする責任感や、円滑に物事を進めるためのコミュニケーションを身につけることができたと思います。
その後、2005年に父が体調を崩したことをきっかけに、弊社に入社した次第です。
ーー貴社で取り扱っている産業機器はどのような製品ですか?
五十嵐康雄:
弊社の主力製品は「ビーズミル」「3本ロールミル」など、粉体の粒子をナノ粒子にする機械と、プラスチックの押出成形に使用される引取機と切断機です。世の中にあるモノの多くは、粉体からできています。身近なところでは砂や小麦粉なども粉体ですし、磁気テープに塗布する磁性体微粉末や化粧品の原料である酸化チタンなども粉体の一種です。
「ビーズミル」「3本ロールミル」は、そうしたものづくりの素材である粉体をナノ粒子に分散する機械です。国内の大企業やグローバル企業の現場で、弊社製品を導入いただいています。国内にとどまらず東アジアを中心に輸出も行っているところは、弊社の強みと言えるでしょう。
また、もう1つの商品である「プラスチック押出成形関連装置」は、建材やウッドデッキ、カテーテルチューブ、自動車部品などの製造に使われています。粉体関係の機械と並んで弊社の事業の柱となっており、それぞれの売上が占める割合は粉体関係が8割、プラスチック関係が2割です。
新製品の開発と営業改革で赤字から脱却
ーー入社後に苦労された経験をお聞かせください。
五十嵐康雄:
私が入社した頃は社内の風通しが悪く保守的な社風で、非合理的なことを仲間と一緒に改善していく毎日でした。それに加えて2008年からは、リーマン・ショックの影響で3期連続で赤字となり、一気に債務超過に陥ってしまったのです。
装置を構成する部品の機械加工をアウトソーシングするように生産体制を見直したり、営業拠点を工場に集約したりして、なんとか危機を乗り越えました。会社が成長期に入ったのは、私が3代目社長に就任した2016年ごろからです。その後、2020年ごろから受注が伸び、8〜9億だった売上が10億円を突破するようになり、V字回復することができました。
ーー生産体制の見直しが功を奏したのですね。回復後はどのような経営努力を行っていますか?
五十嵐康雄:
産業機器メーカーとして、経営が厳しい中でも新製品の開発を進めてきました。その結果、2016年に新製品の特許を取得し、再建への大きな一歩を踏み出すことができました。現在も継続的に製品開発を続けるのはもちろんのこと、オリジナル商品やオンリーワンの技術による他社との差別化も図っています。
また、コロナショックの時期には営業改革を行い、SFAのシステムを導入して1つの案件をしっかりと数値で管理して検証を行うようにしました。それに加えてインサイドセールス部門をつくり、情報収集や問い合わせなどをそちらで行い、フィールドセールス部門が機械の受注に向けて、技術的な打ち合わせやテストの対応に注力できる体制を整えています。
さらに弊社製品に興味があるお客さまに向けて、年に7〜8回ウェビナーで情報発信を行うようにしました。100〜200名ほどのお客さまが聞いてくださるので、非常に効率のいい営業につながっているのではないかと思います。売れる商品が増えてきたことがベースにあるのはもちろんですが、営業チームが弊社製品の魅力を余すところなく伝えられていることが、結果にも現れていると感じています。
受託加工ビジネスの拡大でさらなる成長を目指す
ーー今後の展望をお聞かせください。
五十嵐康雄:
2029年度の売上15億円を中長期目標として掲げ、日本一満足度の高いビーズミル・3本ロールミルメーカーを目指しています。また、今年度は補助金が採択されたため、装置販売だけでなく、お客さまから材料をお預かりして加工する受託加工ビジネスも増やす計画です。単に機械を売るだけでなく自動化や省力化を進めて、私たちのテリトリーをもっと深掘りしていく方向性で事業を成長させたいと考えています。
社員に対しては、誇りを持って仕事をしてもらうために、私たちがどれほど社会に貢献しているかを常に伝えてきました。そして、そういった働きかけが仕事の成果や数字に現れた際は、賞与などの目に見える形でフィードバックして、成長の好循環をつくるようにしています。今後は、このような社員が働きやすい環境づくりの流れをより一層強めていきたいですね。
編集後記
「今より、もっとよいモノを」というフレーズを経営理念として掲げているアイメックス株式会社。常に競合他社と自社の違いを分析しながら再開発のヒントを得て、次の仕事につなげているという。粘り強く製品開発に取り組み、上を目指す姿勢が頼もしい。常によりよい状態に向かって挑戦を続ける同社であれば、今後もさらなる成長が期待できるだろう。
五十嵐康雄/1977年生まれ。東洋大学経営学部卒業後、名鉄運輸に入社。物流業界で5年間勤めたのち、2005年アイメックス株式会社に入社。営業本部長、工場長を経て、2016年に代表取締役に就任し、現在に至る。