※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

2023年の内閣府の世論調査では、「働く目的」に対する回答として、約6割の人が「お金を得るために働く」と回答した。次いで「社会の一員として、務めを果たすため」「自分の才能や能力を発揮するため」「生きがいをみつけるため」と続く。しかし、今回取材した株式会社ゆとみの冨永代表は、それらとは異なる理由で働きたいと語る。冨永代表が働く意味や起業を考えたきっかけ、仕事で大切にしていることや、未来の展望について伺った。

いつまでも青春のような熱い仕事がしたい、と起業の道へ

ーー起業するまでの経緯を教えてください。

冨永伸一:
海外で働きたいという思いがあり、新卒で旅行会社に就職しました。1年間アジア担当として、月2〜3回海外出張をこなし、夢は実現したものの、会社勤めにはおもしろみを感じられず退職。その後、東京に出て西麻布の飲食店にてアルバイトをしながら、友人と3人でグループYouTuberとして活動したり、DJ社長に感化されて音楽イベントを開いたりしていました。その中で得たご縁をきっかけに、人材派遣会社として起業しないかとお声がけいただき、創業しました。

ーー起業のきっかけや、その思いをお聞かせください。

冨永伸一:
最初から経営者になりたいと思っていたわけではありません。旅行会社では、同期が150名くらいいて、数ヶ月にわたる新人研修がありました。研修の終わりに、お世話になった講師の方に花束で感謝を伝えようと同期に提案したところ、多くの人が賛同してくれ、その経験が私の心に残ったのです。この出来事を通じて、「人を巻き込んでリーダーシップを発揮する仕事がしたい」と思い、経営者を志しました。

また、長年スポーツを続けてきた経験から、一生懸命に頑張れば頑張るほど、勝っても負けても涙が出る、そんな感覚を社会人になっても忘れることができませんでした。いくつになっても青春したい、家族のような距離間の社員とともに、心から全力で取り組んで、泣けるくらいの仕事がしたいと、今も常に考えています。

社員の挑戦を積極的に後押しし、一人ひとりの力を活かす経営戦術

ーー株式会社ゆとみの事業内容を聞かせてください。

冨永伸一:
現状では短期人材サービスが事業の約8割を占めています。登録制のアルバイトを募集し、大手企業などに1日単位で人材を紹介しています。ワーカーの多くは働く意欲を持っている方なので、正社員への登用を希望する方には、就職支援サービスも行っています。

人材派遣業界にはすでに多くの大手企業が参入しており、新規参入は難しいと言われています。しかし、弊社が2020年に起業した際には、オリンピックやワクチン接種といった通常では発生しない特殊な集客の運営が相次ぎ、そのニーズを取り込みました。その結果、現在では売上10億円を超えるまでに成長しました。

もともとはイベントにも人材を派遣していたのですが、そこから派生し、現在では広告制作会社から委託を受けて、全国各地で有名アーティストのコンサートやテレビ撮影のイベントなどの運営も手掛けるようになりました。

さらに、2024年の7月からは民泊の清掃事業から始めて、次第に運営も行うようになりました。これはインバウンド需要を見据えた事業で、弊社の人材派遣事業とのシナジーが期待できるほか、私自身としてもずっと取り組みたい仕事でした。

人は同じ仕事を続けていると飽きがくるものです。そこで、弊社では2年に1度は新規事業を立ち上げ、社員が新しい挑戦を積極的に楽しめる環境をつくっています。英語力を活かしたいという社員も多いので、民泊事業は、今後も強化していく予定です。

ーー貴社の特色や強みはどういう点にありますか。

冨永伸一:
弊社の最大の特色は、社員全員が20代であることです。そのため、部活動のように各自が個性を発揮して働いています。「楽しく働く」ことを社風とし、ホームページでも”Happy”を全面に打ち出しています。

弊社の強みは営業面での「人と人とのつながり」です。具体的には、全クライアントに対して、「短期の人材不足を解決するためのパートナー」として、弊社を頼っていただけるよう営業活動を行っています。クライアントは売上300〜500億円規模の大手企業から、個人事業主までさまざまですが、どのクライアントにも常に親身に対応し、相談しやすい関係を築くことを目指しています。

民泊からプロポーズホテルへ。夢を形にする挑戦

ーーさまざまな新事業を検討中とのことですが、具体的にはどのようなことをお考えですか。

冨永伸一:
今後は、新しく始めた民泊ビジネスをさらに強化して、「コンセプト民泊」を行いたいと思っています。これは、おもてなし民泊・プロポーズホテル・学生向け民泊・法人旅行向け民泊などといったコンセプトを持ったもので、特にプロポーズホテルというブランドを構築したいと思っています。一生に一度のプロポーズを最高にドラマチックな思い出にするために、依頼者様と一緒に考えながら、感動を演出をするサービスです。10年後には新しいブランドとして構築できるよう企画しています。

これに伴って、日本ではまだ認知度が低い「プロポーズプランナー」という職業を確立させ、プロポーズをプロフェッショナルの手で最高の瞬間に導くような文化を日本に根づかせたいと思っています。

これにより、国内外から多くのお客様をお迎えすることを目指します。さらに、20年後には島を購入し、プロポーズホテルの運営を行いつつ、短期人材サービス事業としてリゾートバイトを募集するなど、弊社ビジネスの集大成をつくり上げたいと考えています。

これらの事業はいずれも人々に感動を届ける仕事であり、私が軸としている「泣ける仕事」にも通じるものです。これらの事業を形にすることが、現在の目標です。

ーー冨永社長が創業時から大切にしていることは何ですか?

冨永伸一:
私の座右の銘は「なんとかなる」です。仕事ではつらいことも多いのですが、その瞬間のつらさだけに目を向けると、本当に大切なことを見逃してしまうかもしれません。つらいことがあり眠れない日も確かにありますが、ひとつのことを思い詰めずに、モチベーションとメンタルをうまくコントロールするように心がけています。

経営判断で迷ったときは、できるだけ社員が笑顔になる方を選んでいます。募集してもなかなか人が集まらない時代に、弊社を選んで入社してくれた社員たちをこれからも大切にしたいと思っています。

ーー今後の展開のために、社内体制や求める人材についてお聞かせください。

冨永伸一:
新事業を実現していくためには、組織体制の強化が必要です。今までは、「みんな仲良く」「みんなプレイヤー」という方針で運営してきましたが、毎年10名程度の社員が増える中で、これまでのやり方では組織運営が難しくなってきました。現在、経営幹部の育成や人事評価制度の見直しを進めており、社員の成長と効率的な経営を通じて、会社の成長速度を加速させたいと考えています。

弊社に適している人物像は、明るく楽しく仕事ができ、前向きな姿勢で物事を捉えられる人です。そんな方々にぜひ来ていただき、会社の成長を一緒に支えていただきたいと願っています。

編集後記

インタビュー中、常に明るく、場の雰囲気を和やかにしてくれた冨永氏。「関わるすべての人へ【ゆとり】を与え【ゆたか】にする」という企業理念を体現し、4期目を迎えた今年度も社内外で確実にファンを増やしながら、売上を伸ばしている。そんな冨永氏が描く未来のビジョンが共感を呼び、応援したくなる人々が自然に集まる。10年後、20年後には、その夢が形になり、日本経済の活性化にも貢献することだろう。

冨永伸一/1995年愛知県生まれ、中京大学卒業。大手旅行会社に入社し、1年間、海外事業部で勤務。2020年に株式会社ゆとみを起業。代表取締役社長に就任。