株式会社ハリオ商事は、創業から100年続く耐熱ガラスメーカーのHARIO株式会社から独立して誕生した企業だ。コーヒー器具やアウトドア用品のほか、ペット用品などを広く扱い、次々と新たな事業を展開している。
独立の経緯や営業活動で大切にしてきたこと、海外展開などについて、創業者で代表取締役の柴田亘保氏に話をうかがった。
幼い頃から抱いていた社長になる夢を実現するために独立
ーーまずは、起業までの経緯についてお聞かせください。
柴田亘保:
幼少期からの夢は「立派な社長になること」でした。その夢を実現するために、家業であるHARIO株式会社に入社し、グループ会社として独立を果たすべく、一社員としてひたすら営業活動に励みました。
ガラス素材の特注品事業では、複数の大型案件を受注することができ、年間MVPを受賞しました。その翌年に役員に昇格し、一定の成果を創出できたため、満を持して独立したというわけです。
ーー新会社の立ち上げはどのように進めていったのですか。
柴田亘保:
HARIO株式会社は組織が大きいため、商品立ち上げなどの投資が必要な際は、都度承認を得る必要があり、意思決定に時間を要しました。そこで、機動力を持たせるためにも新事業開拓部門は独立企業として進めたいという提案をしたのです。
役員会承認を得て起業した後、まず始めたのが通販事業です。起業したばかりの頃は自社ECショップの認知度はなく、かなり苦戦しましたね。ひとつの事業を軌道に乗せてはまた次の事業を立ち上げ、といった具合に会社の拡大に尽力して10年かけてここまで来たという実感です。
私が旗振り役になり、ペットやアウトドアや砂事業を立ち上げるなど、試行錯誤を繰り返しながら事業を広げてきたことで、現在の売上は創業当時の5倍になっています。
親会社が築いてきた地盤を活かし、対面での営業活動を通して取引先を拡大
ーー貴社の強みについて教えてください。
柴田亘保:
弊社はHARIOグループとしての品質の高さや安心感が強みです。また、既存の販売ルートや海外にある倉庫を活用できるのも大きなメリットです。親会社が確固たる地位を築いていることで、環境面でも恩恵を受けられるのはありがたいですね。
ーー事業展開においてどのような点を意識していますか。
柴田亘保:
すべての事業において共通して言えるのは、安心・安全・品質を重視していることです。弊社に対するお客様の信頼を裏切らないように、細心の注意を払っています。
営業活動に関しては、単に売上を追い求めるのではなく、商品の意義やミッションを重視しています。特にコロナ禍以降は働き方が多様化し、数字の達成だけを目標とする従来のスタイルは通用しなくなっていると感じています。
そのため、社員には「誰のために、何をするか、どうしたら顧客を幸せにできるか」という商品のコンセプトを伝えるようにしています。
また、直接お会いするからこそ得られる情報もあるので、対面での営業活動を重視しています。たとえ時代が変わっても、お客様と顔を合わせることは大切ですね。なお、お客様の生の声を聞くことは、社員のモチベーションにも良い影響を与えると思っています。
これから需要が伸びるペット市場に着目。ECサイトと店舗販売の両輪で売上を伸ばす
ーーペット事業に注力している理由を教えてください。
柴田亘保:
2021年の日本国内のペットの飼育数はおよそ1600万匹で、15歳までの人間の子どもの数であるおよそ1500万人を上回っています。今後もさらなる市場拡大が見込まれますが、競合も多いため、個性を出すことが重要だと考えています。
また、動物からは商品の使用感を聞くことができないため、適正か否かを判断する難しさがありますね。安心・安全をアピールすることで、飼い主の方に評価していただければと思っています。
ーー販売戦略についてはいかがですか。
柴田亘保:
YouTubeやSNSで集客し、ECサイトのユーザビリティーの強化を日々心がけています。ECサイトは即時性や細かな分析ができるメリットがあるため、今後も注力していきます。
オンラインだけでなく実店舗での販売も並行し、BtoBとBtoCの両軸で販売を強化していく方針です。店舗に卸す商品数は、EC販売の10倍にも上るため、取引先への営業も引き続き力を入れていきます。
モチベーションを高める社員教育と世界進出への戦略
ーー組織づくりについてお聞かせください。
柴田亘保:
社員育成では会社の意義やミッションなどを明確に言語化し、自分たちが弊社で働く意味を納得してもらえるようにしています。そのため一人前になるまで3年はかかりますが、じっくりと時間をかけ育てていきたいと考えています。
社員数は、お互いの顔と名前が一致する150名くらいを目処としています。この規模まで組織が成長するまでには、経営を任せられる人が育ってくれるのが理想ですね。
ーー今後の注力テーマは何ですか。
柴田亘保:
海外展開を進め、現在の売上を2倍にすることを目指しています。日本の人口およそ1億人に対し、世界の人口はおよそ80億人以上であるため、より大きな市場を狙っていけると考えています。将来的には、国内と海外の売上比率を同等にすることが理想です。
中でも特に影響力の大きいアメリカ市場をターゲットにしています。アメリカで流行すれば日本でも注目されると考え、まずはアメリカ進出を目指します。日本とは生活スタイルや価値観が異なるため、海外の仕様に合わせた商品を展開していく予定です。
ーー最後に読者の方々へメッセージをお願いします。
柴田亘保:
弊社ではコーヒーを囲んで語り合う社内イベントを定期的に実施しています。「人好き」「コーヒー好き」の社員が多く、仲間同士で助け合いながら業務に取り組んでいます。周囲と協力し合う職場で働きたい方や、新しいことにチャレンジしたい方にとっては、やりがいのある環境だと思います。
編集後記
社長になる夢を実現するために、家業でしっかり足場をつくり、グループ会社を創業した柴田社長。新たな道を着実に開拓していく姿に、経営者としての覚悟とチャレンジ精神が垣間見えた。着実な成長を続ける株式会社ハリオ商事が、日本を飛び出して世界で活躍する日が来るのが待ち遠しい。
柴田亘保/1975年、東京都生まれ。2001年にHARIO株式会社に入社し、2008年に年間MVPを受賞。2014年に株式会社ハリオ商事を設立。通販、ホワイトサンド、ペット、アウトドアの新事業を立ち上げた。経営理念は「One for all. All for one.」。「組織力を高め、世の中にインパクトを与え、感動を創り出していきたい」という思いで経営している。