※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

ワインは味や香り、色といった表面上の要素だけでなく、ワインづくりの背景を理解してこそ本当の1本を選べるという。そう語るのはワインの輸入販売を行う株式会社ミレジムの代表取締役であるシンガー由美子氏だ。

シンガー社長は、ワインは単なるお酒の枠組みに収まるものではないとも語る。そこで、シンガー社長にワインに秘められた可能性やワインビジネスでかなえたいビジョンなどを聞いた。

一流フラワーデザイナーとして、そしてワインラバーとして

ーー社長の経歴をお聞かせください。

シンガー由美子:
私はもともと株式会社花千代というフラワーデザイン会社の代表を務めていました。花千代は、私の活動名でもあり、フラワーデザイナー「花千代」の実績としては、CMや映画のスタイリングや店舗ディスプレイ、ホテルなどのアドバイザーをお任せいただいたほか、第34回主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)におけるフラワーディレクターがあります。

私が弊社と関わりを持ち始めたのは、2004年に創業者である夫に出会ったことがきっかけです。夫とはワインを楽しむ会で出会い、ワインが縁で結婚しました。当時私は夫の会社に入社こそしませんでしたが、ワインを身近な存在として親しむようになりました。

その後も私はフラワーデザイナーの仕事を続けていましたが、夫が高齢になってきたこともあり、数年前に弊社の役員として入社することになったのです。そして2023年に、花千代の代表と兼任しながら株式会社ミレジムの代表取締役に就任しました。

ーー社長に就任するにあたって苦労したエピソードを教えてください。

シンガー由美子:
ビジネスで使うに足るワインの知識習得に苦労しました。

ワインをお客様に勧めるビジネスをするには、ただ味や香りが分かるだけでは不十分です。料理とワインの相性を深い部分でつなぐためにブドウが育った環境や、ワインがつくられた背景などを理解し、ワインの楽しみ方を論理的に説明できねばなりません。

特に弊社はワインを輸入して売っているので、遠い地でワインを育んだ環境や生産者が込めた思いなどを、代弁者として分かりやすく伝える義務があります。論理の深さはワインを楽しんでいただく際の納得度を大きく左右するので、いかに難しくともワインをビジネスにする以上は妥協してはいけません。

日々勉強ですが、今後も夫にアドバイスをもらいながら、皆様に最高のワイン体験を届けられるように努力を続けていく次第です。

ワインに詰まった「喜び」や「楽しさ」を広めるワインの伝道師

ーー改めて貴社の事業内容を教えてください。

シンガー由美子:
ワインの輸入販売が主軸です。フランス、イタリア、スペインなどヨーロッパを中心に、オーストラリア、イスラエル、アルゼンチンといった世界の約100社のワインメーカーから選りすぐりのワインを仕入れ、お客様の要望に合うものを紹介しています。
お客様の要望に単に答えるのではなく、お客様に本当に喜んでいただけるものを厳選することが、弊社のポリシーです。

その他の事業としては無料で展開しているインターネットワインスクールがあります。これは、夫が「恩返し」のために始めたスクールです。異国の地である日本で事業を行うにあたって夫が受けた数々の恩を、ワイン業界の発展という形で還元するために行っています。

主にソムリエやワインアドバイザーを目指す方の視聴を想定しており、一流ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」の有名講師である小林先生による解説動画が約40本視聴可能です。また、最近はワインを飲んで楽しみたい方向けに、ワインに関する知識が学べるコンテンツも用意しています。

会社の成長のためには、さまざまな場面でチャンスを見つける必要がある

ーー貴社独自の強みは何ですか?

シンガー由美子:
弊社の強みは、レストラン、ホテル、酒販店という3つの販路がバランスよくそろっていることです。この3本の柱のおかげで安定した売上を維持できています。

ただ、BtoBに特化した販路は取引先の経営状況に左右されるというデメリットがあり、コロナ禍では大きな打撃を受けてしまいました。そのため、今後は消費者と直接関わりを持てるBtoCにも目を向ける必要があると感じています。

また、自分がフラワーアーティストとして培ってきた人脈を営業に活かせる点も一つの強みです。属人的な手法なので再現性はありませんが、私が取引先を開拓すれば間接的に社員たちの成長へつなげられるので、弊社らしい一つの手法として積極的に活用しています。

日本の文化を活かし、ワインを日本から世界へ発信

ーー今後、会社の成長のために考えている取り組みを教えてください。

シンガー由美子:
海外レストランのコンサルタント事業を行っている子会社と協力し、国産ワインの海外発信を検討しています。

日本が世界に誇るべき和食のコンサルタントを提供しつつ、同じ国で生まれた日本産ワインをマリアージュさせて提案できれば、ワインを輸入する国だった日本が今度は輸出する側になれる可能性があります。日本の食事とワインが海外の食卓を彩る風景を実現できたら素敵ですよね。

また、今後は後継者育成も進めていかねばなりません。そのためには、私がバトンを手にしている間に、売り上げの継続的な増加やブランディングといった経営の基礎を固め、安心してバトンを渡せる環境を構築していきます。

ワインは人々の世界を大きく豊かにしてくれる「文化」である

ーー読者へのメッセージをお願いします。

シンガー由美子:
ワインとは単なるお酒の種類ではなく、文化の一部であることを知ってほしいですね。

和食が日本文化の一部であると同様に、ワインにもその土地における文化の一部という側面があります。1本のワインという小さな瓶の中には、それぞれの土地の環境が、人の営みが、そしてつくり手の思いやこだわりがこめられているのです。

ワインに興味がある方はぜひ弊社にお越しください。ワインを起点に世界とつながり、あなたの世界が大きく、豊かに広がっていくのを実感できるはずです。

編集後記

文化や思いが込められたワインとは、人と人をつなげる鎹(かすがい)のような存在かもしれない。そうであれば、その背景が大切なのもうなずける。シンガー社長の手によって日本の文化や思いが世界へと羽ばたいていく日は遠くないかもしれない。

シンガー由美子/1996年にフランスへ渡る。パリにてフラワーデザインを学び帰国後はフラワーデザイナー「花千代」としてCMや映画のスタイリング、イベントや店舗ディスプレイ、ホテルなどのアドバイザーとして活躍。現在は株式会社花千代代表及び株式会社ミレジム代表取締役を務める。