※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

九州計測器株式会社は、計測器・半導体・システム制御装置などの製作および販売や、計測コンサルタントなど顧客に全方位的なサポートを提供する企業だ。創業以来、大学や研究機関を中心に幅広い顧客層を持ち、高い技術力で差別化を図っている。

アナログ技術者の存在を強みとし、顧客のニーズに応じたカスタマイズや新製品開発にも積極的に取り組む同社。今回は、事業をとおして科学技術の発展にも貢献し続ける同社の取り組みを、代表取締役社長の岩倉弘隆氏にうかがった。

3年の修業を経て、家業の道へ

ーーまずは貴社の創業の経緯について教えてください。

岩倉弘隆:
弊社は私の父が創業しました。父はもともと電気技術者として東京で働いていましたが、九州に戻ろうとしたときに、技術があっても仕事がないという状況に直面したのです。そこで、福岡の商社に入社し、働いているときに独立を考えたそうです。ちょうどその時期は高度経済成長期で、日本全体が活気づいていたため、父も独立したいという希望に満ちていたのだと思います。

独立する際、商社で扱っていた商材の中に計測器があり、それを「売っていいよ」と応援してもらえたそうです。それを持って九州大学などに行き、先生方と親しくなって、少しずつ仕事ができるようになっていきました。最初は商社のような形でしたが、父が技術を持っていたので、物をつくりながら売るというスタイルがビジネスモデルとなっていきました。

特に大きな転機となったのは、コンピューター時代の到来です。パソコンが世の中に出始めたころ、弊社は大学の先生向けにシステムを開発したことで、大きく売り上げを伸ばすことができました。その後も、計測器の品ぞろえを増やしながら、システム開発や特注品の製作など、技術力を活かした事業展開を行ってきました。

ーー社長ご自身の入社の経緯についてお聞かせください。

岩倉弘隆:
私は大学卒業後、他の計測器メーカーに入社し、1988年に弊社に入社しました。最初に就職した会社は父と付き合いがあり、3年間、計測業界のことを学ばせていただきました。この経験を通して、計測器の製品や業界を深く学び、メーカーの視点も身につけることができ、とても感謝しています。これは後の弊社のビジネス展開に大きく影響しています。

アナログ技術とデジタル化の融合で、顧客のニーズに応える

ーー貴社の事業内容について教えてください。

岩倉弘隆:
弊社は、計測器の販売や技術サービスの提供に加え、顧客の課題に応じたカスタマイズや新規開発まで幅広く手がけています。特に強みとしているのは、アナログ技術者を有していることです。物理現象を電気信号に変え、デジタル化する過程では、アナログ的な知識と経験が欠かせません。この技術力があるからこそ、既存の製品では解決できないお客さまの課題に対して、カスタマイズや新規開発で対応できるのです。

また、大学の研究者の方々のアイデアを商品化したり、試作品をつくったりする「研究開発サービス業」としての側面もあります。たとえば、最近では「充実種子選別装置」を開発し、林業の効率化に貢献しました。このように、計測技術を基盤としつつ、さまざまな分野での課題解決に取り組んでいます。さらに、計測器の校正サービスも提供しており、お客さまの計測器が常に正確な値を示すためのサポートも行っています。

ーー事業ではどのようなことを大切にされていますか?

岩倉弘隆:
私たちは「全方位的なサポートの提供」を大切にしています。お客さまの課題に対して、製品を提供するだけでなく、測定治具の製作や、複数の計測器を組み合わせたシステムの構築、さらにはソフトウェアの開発まで、トータルでサポートするのです。

先ほど触れた計測器の定期的な校正サービスも、お客さまとの信頼関係を築く上で重要な役割を果たしています。こうした全方位的なサポートを通じて、パートナーとして認識されるように努めています。

社員の裁量を重視し、次世代リーダーの育成に注力

ーー貴社の人材育成について教えてください。

岩倉弘隆:
弊社では、社員の裁量を重視しており、社員一人ひとりが自分の判断で行動できる環境を整えています。たとえば、eラーニングシステムを導入し、技術や語学、マネジメントなどさまざまな分野の学習ができるようにしました。また、外部講師を招いた研修も頻繁に行っており、社員の成長を全面的にサポートしています。

最近では、60歳以降のキャリアを考えるためのセミナーも実施しました。人生100年時代を見据えて、社員のライフプランやマネープランについても考えてもらう機会を設けています。このように、長期的な視点で社員の成長と幸せを支援することが、会社の成長にもつながると考えています。

ーー今後の展望についてお聞かせください。

岩倉弘隆:
現在、弊社はホールディングス化を進めています。これは将来の幹部社員、経営層の育成を主な目的としたもので、複数の社員に経営の経験を積んでもらい、次世代のリーダーを育てていきたいと考えています。

また、会社をより成長させるためにマーケティング強化にも力を入れており、デジタルマーケティングの専任担当者を置きました。お客さまのニーズに合わせたコンテンツ作成を行い、営業部隊が効果的に活動できる環境を整えていきたいと思います。

私は「ワクワクモードの九州計測器」という言葉をよく使います。この言葉には、社員もお客さまも、そして地域社会も、弊社と関わることでワクワクできるような存在でありたいという思いを込めています。科学技術の進歩に貢献し続けることで、社会全体の明るい未来に貢献できたら嬉しいですね。

編集後記

岩倉社長の言葉からは、社員や顧客を大切にする姿勢が強く伝わってきた。技術力を大切にしながらも、時代の変化に合わせて柔軟に事業を発展させてきた同社。今後も、全方位的なサポートで、業界をリードし続けることだろう。今後はどんな技術で私たちを「ワクワク」させてくれるのだろうか。

岩倉弘隆/1963年、神奈川県に生まれ、福岡県で育つ。横浜国立大学卒業。株式会社小野測器に入社し、3年の修業期間を経て1988年に九州計測器株式会社に入社。2005年に代表取締役社長に就任。