※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

アウトレット店「222(トリプルツー)」を運営するガットリベロ株式会社は、「もったいない」の心を大切にしながら、障害を持つ人の社会参加などにも力を入れて取り組んでいる会社だ。

2024年9月時点で国内に25店舗を展開している同社だが、もともとは代表取締役社長の荒木伸也氏が、自身の持っている古本をインターネットで販売する小さな事業から始まった。今回、222の歩みや同社の社会貢献活動について話を聞いた。

インターネットの可能性に気づきAmazonで本の販売を開始

ーー会社設立の経緯や流れを聞かせてください。

荒木伸也:
起業した理由は、15年間にわたる会社員生活を続ける中で、自分の可能性を1度確かめてみたいと思ったからです。そこで、独立する1年前の32歳のときに、自分の持っている本をAmazonで売る商売を始めました。

当時、2004年〜2005年頃はAmazonが日本に参入して5年ほど経った頃です。オンラインショッピングがまだ当たり前ではない時代でしたが、本を出品したらすぐに売れて、とても新鮮でした。出品者が誰かも分からないのに、その本がほしいという理由で買う人がいる。この事実に、インターネットの可能性を感じましたね。

独立して間もない頃はお金が全然なく、自宅の押し入れに机を置いて、小さく事業を始めたことを覚えています。

電気も什器も用意できないまま始めたアウトレット店が大好評

ーーターニングポイントとなった出来事を教えてください。

荒木伸也:
本だけでなくDVDやゲームソフトも店舗から安く調達して販売し始め、従業員も増えてきた頃、東日本大震災が起きました。これが、私にとってのターニングポイントでした。

倉庫を管理している知人がいたのですが、「地震で落下して箱に傷がつき、出荷できなくなった商品が倉庫にあるから買いとってほしい」とお願いされました。

体育館ほどの大きさの倉庫で、すべての商品を買いとる場合は3000~4000万円かかります。知人からは「明日か明後日には、買いとってくれるかどうか返事をしてほしい」と言われ、私は即決しました。

ーーどうして迷わずに即決できたのですか?

荒木伸也:
地震で箱が潰れた商品などの「訳あり品」の中には、まだ使えるものも多いと思ったからです。実際に引き受けた商品のうち、使えるものは8割ほどありました。

また、知人からこの話をされたときに、運命や宿命のようなものを感じたのも理由です。いろいろな人から震災の不幸な話を聞く中で、私にできることは、廃棄扱いになった商品を買い取って生かすことだと言われているような気がしました。

ーーその商品もインターネットで販売したのですか。

荒木伸也:
最初はインターネットで販売していましたが、自分たちの持っている倉庫にどんどん荷物が溜まってしまって。インターネットで売るよりも、近所の人に売ったほうが早いと思い、倉庫をそのまま使ってアウトレット店「222」の1号店を地元、滋賀県の栗東店として立ち上げました。

店を始めると決めた2日後にオープンする計画を立て、什器を買ったり、両替用のお金を準備したりしました。宣伝をする余裕もなく、また什器が間に合わなかったので、段ボールに商品を並べたことを覚えています。

訳あり品で価格が安いので、開業後は多くの人々に喜ばれました。口コミで多くの人が訪れてくれたのが嬉しかったですね。まだ電気も通っていなかったため、夕方以降になると店内が暗くなったのですが、お客様たちはスマホのライトで商品を探していて、まるで宝探しのようでした。

誰もが社会に参加し、役に立てることを実感してもらいたい

ーーアウトレット店の運営以外に、どのような活動に力を入れていますか。

荒木伸也:
身体的・精神的な障害を持つ方など、働くことが難しい方向けの就労支援に力を入れています。彼らには店舗で売る商品に値札を貼ってもらうなど、バックヤードの仕事をお願いしています。

私は、障害を持っている方たちも社会に参加し、自分たちが役に立っていることを実感してもらいたいのです。どんな人でも活かされる社会であってほしいなと。

また、海外事業で最近よく訪れるインドネシアでは、貧困で学校に通えず、まともな仕事に就けない人が多くいます。そういった人たちを日本に呼んで、仕事をしてもらうための架け橋になりたいと思っています。

私は、一方通行の慈善事業をしたいわけではありません。何かを掛け合わせることで、その人自身が社会で活かされるような働きかけをしたいと考えています。

編集後記

訳アリ品をすぐに「売れない」と決めつけるのではなく、どうしたら売れるのかを考えることが大切。この荒木社長の価値観は、同社の人材への考え方にも通じるものがある。

能力を活かす環境さえあれば、たとえ障害があっても社会で活躍できる。同社の人材活用への取り組みは、社会で働くことに難しさを感じる人々に勇気を与えるものだと感じた。

荒木伸也/2005年、インターネット上で商品を販売する有限会社かっぱ堂を設立。2015年にガットリベロ株式会社へ商号変更。