
住友商事が100%出資し、グループ会社として1993年に設立された株式会社トモズ。調剤薬局を併設したドラッグストアとして、首都圏を中心に250店舗以上を展開する会社だ。現在は「オンライン服薬指導」などのWeb事業を含めて、幅広い領域の医療・美容サービスを提供している。代表取締役社長の角谷真司氏に、就任の経緯や企業の強み、今後の展望についてうかがった。
大手商社で「医療」に携わる個性派ドラッグストアを立ち上げ
ーー社長のこれまでの経歴をお聞かせください。
角谷真司:
1993年に住友商事に入社して、最初に携わった仕事が「トモズ」の前身となるドラッグストアの立ち上げでした。その後、アメリカへの駐在任務やスーパーマーケット事業の担当を経て、現職に着任したのが2023年4月のことです。
商社に入り、10年にわたって小売業に携わるとは想像していませんでしたが、どんな仕事にも一生懸命に取り組んできました。課題には大小問わず、正面から挑みたい性格なのです。
ーー貴社の強みはどんなところでしょうか。
角谷真司:
「トモズ」の最大の強みは「調剤薬局を併設していること」です。創業当時のドラッグストアといえば、日用品の安売りでお客様を呼び、市販薬の販売で利益を出すビジネスモデルが一般的でした。私達は創業当時には未だ珍しかった調剤併設モデルを導入し、日常使いから体調不良の時まで活用いただけるドラッグストアとして差別化を図ってきました。調剤はあらゆる処方せんを受け付け、広く地域の患者様に向けサービスを行う「面分業」を主体としています。
「ロケーションの良さ」も一つの強みです。ドラッグストアとしては後発のため、競合がいない場所を選んできた結果、駅ビルや商業ビル、オフィスビルといった都心の一等地や、交通量の多い場所に出店できています。サービスや立地面での利便性の高さもあり、現在は200万人を超えるお客様がポイントカード会員制度に加入されています。
「明るく、見やすく、綺麗に、整然と」を心がけた創業当時からの空間づくりも、魅力の一つだといえます。ほかにも、豊富なポイント還元キャンペーンや、美容と健康に関する情報誌の「TOMOKO(トモコ)」を楽しみにされているお客様も多くいらっしゃいます。

利便性と専門性を生かし、「一生の健康」をサポートする企業へ
ーー現在の注力テーマ、課題は何でしょうか。
角谷真司:
弊社は「かかりつけドラッグストア」を目指して、「より医療に近いサービス」の提供を追求しています。日常的に使える「利便性」で地域の皆様と関係性を深めつつ、「専門性」の高さで勝負しようという考えです。
たとえば、ヘルスケアについては管理栄養士が健康相談を受け付けているほか、調剤薬局の機能から一歩踏み込んで「在宅医療」にも力を入れています。現在の患者様はトモズ会員ご本人や、そのご家族が中心なので、今後はドラッグストアとしての商材をご自宅に届けるサービスも強化していきたいところです。
ビューティーケアの領域では、お肌の状況や使用中の商品といったお客様情報を把握しています。調剤・美容・健康・未病対策など、各分野のサービスを最適な形でお届けするために、会員データの一本化も大きな課題と言えるでしょう。
最終的には「場所と時間を選ばないドラッグストア」として、生まれた時から年老いるまで安心して利用できるサービスを構築するために、ECを含めたDXを進めていきたいと思います。
主体性のある人材と共に「地域を支える存在」として成長

ーー貴社が求める人物像を教えていただけますか。
角谷真司:
専門的な知識を持つだけでは、人としての幅は広がりません。「個々の力を尊重して会社を成長させたい」という思いから、一人ひとりのスタッフが自分で考えて状況を判断し、その場にふさわしい行動ができる状態を目指しています。
弊社内のマネジメント研修でも、管理職を育てるためというよりも「主体性のある人」を育てる内容を用意しています。トモズの理念に共感し、これまで以上に「地域を支える存在」に近づけたいと思っていただける方に来ていただきたいですね。
ーー今後の展望をお聞かせください。
角谷真司:
2024年に、オリジナルブランド「APS」から新しく「APS fond of me」が誕生しました。女性のお悩みに寄り添い、フェミニンケアにフォーカスを当てたプライベート商品として、さらにラインアップを増やしていく予定です。また、メンズラインのブランドやコストパフォーマンスを重視したブランドの開発も視野に入れています。
会社としては、従業員たちが「自己の成長」を実感し、満足して働ける環境をつくることを第一に考えています。5年後や10年後には、すべての従業員がトモズで働いていることに誇りを持ち、スキルアップを実現できている状態が理想だといえます。
また、充実した労働環境を提供し続けるためにも、会社の収益力を上げていく必要があります。従業員がそれぞれにお客様や地域の方と向き合い、自ら進んでサービスを提供できるようになれば、会社も同時に成長していくのではないでしょうか。
編集後記
「目の前の課題があれば、常に全力でぶつかってきた」と語った角谷社長。その精神は、地域の人々と密接に向き合い、健康に関する困り事を解決していく企業の在り方と共通している。在宅医療や新たなオリジナルブランドを通して、「トモズ」がより存在感を高めていくことは確かだ。

角谷真司/1970年生まれ。早稲田大学を卒業。1993年、住友商事株式会社に入社。投資管理及びアメリカ駐在を挟むも、一貫してスーパー・ドラッグストア等の小売ビジネスを担当。2023年、株式会社トモズの代表取締役社長に就任。