※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

2024年4月時点、日本における指定難病数は341疾病で、患者数は少なくとも100万人にのぼるとされている。多くの人が難病を患っているものの、専門知識を持った医師と出会うことができず、治療が難航するケースは珍しくない。

そこで、医師によって医療知識に格差がある現状をどうにかしようと立ち上がったのが、株式会社Mediiの代表取締役医師、山田裕揮氏だ。医師であり自身も難病を患っているという同医師に、起業の経緯やサービスの特徴、今後の展望を聞いた。

自身が難病患者だからこそ実感した医師間の知識の格差

ーー貴社のサービスについて聞かせてください。

山田裕揮:
弊社では、医師同士が気軽に情報を交換できる場として、完全無料のオンライン専門医相談サービス「Medii Eコンサル」を提供しています。

昨今は加速度的に医療が進歩しており、進歩の速さに医師たちが追い付けなくなってきているのが現状です。その結果、特定の専門分野において極めて深い知識を持つ1%のトップエキスパート医師と、広範な視点で日々の診療に必要な知識を持ちながら専門知見のアップデートをする余裕がない状況に置かれている99%の医師に分かれつつあります。

医師間の知識差は広がりつつありますが、この問題を解決するためには構造的な限界があります。そこで、99%の医師たちが1%のエキスパート医師に相談しながら、効率よく医療を提供する仕組みをつくろうと、弊社で「Medii Eコンサル」を始めました。

「Medii Eコンサル」は製薬企業からの資金提供により収益を確保するビジネスモデルのため、医師たちはサービスを無料で利用可能です。製薬企業のメリットとしては、「Medii Eコンサル」で行われる症例相談を通して、結果的に早期診断や新薬の正しい使い方を広められることなどが挙げられます。

ーーそもそもなぜ起業しようと思ったのですか。

山田裕揮:
私自身が難病を患っており、難病を診断できる医師や、新薬を使いこなせる医師が限られていることを実感していました。

医療現場を支えるために臨床医になりましたが、臨床医になるだけではこの問題は解決できません。医療知識の格差を埋めるための仕組みをつくることが大切だということに気づき、起業を決意しました。

また、私は人生の命題に「社会に何を残して死ねるのか」を掲げており、これも起業を決意した理由の一つです。

ベクトルの方向をそろえ、価値を最大化する組織づくり

ーー今後の事業の方向性について聞かせてください。

山田裕揮:
「Medii Eコンサル」は、今までになかったビジネスモデルだと専門家から言われています。今までにないモデルだからこそ、私たちはパイオニアとしての道を切り開き、事業を拡大するための道筋を模索し続けています。

「このくらいで良いか」と現状に満足した時点で成長は止まるので、今後も事業の成長に向けて模索を続けていく決意です。

ーー組織づくりや採用についてはどのように考えていますか。

山田裕揮:
私は組織づくりにおいて、「ベクトルの向きをそろえること(方向性)」と「価値を最大化すること(大きさ)」を重視しています。

1つ目の「方向性」について、まず私たちは「誰も取り残さない医療を」というミッションを掲げています。このミッションが実現できたとき、一緒に心から抱き合って笑い合い、喜びをシェアできるような組織でありたいのです。

そして2つ目の「大きさ」は、同じ価値基準を持ったメンバーが、サービスの価値の最大化にコミットできることです。

実際に弊社には、同じ方向を向いて、同じ価値基準で行動できる仲間が集まっています。採用の場でも、弊社のミッションに共感し、貢献しようとしてくれる人物を求めています。

難病患者が社会で活躍できれば、社会をどんどん進化させられる

ーー今後の展望を聞かせてください。

山田裕揮:
第一に、私たちのミッションである「誰も取り残さない医療を」を実現したいと考えています。どのポイントで取り残されるのかは明確になっているので、あとは誰も取り残されないようなデザイン設計に網羅的に取り組んでいきたいですね。

そして、最終的には日本国内のみならず、世界全体に向けてサービスを拡大していきたいと思っています。日本の医師が世界中の患者を助けたり、世界中の医師が日本の患者を助けたりしながら、誰もがより良い医療を受けられるように、安心とハピネスを育てていきます。

また、自己免疫疾患などの専門性の高い疾患の患者には、若い人たちも多いのです。若い患者たちが社会で活躍できるようになれば、社会は大きく進歩すると私たちは考えています。取り残されていた人たちが活躍して輝き、社会をより進歩させる。このような形で、弊社は社会に貢献していく方針です。

編集後記

医師をしながら起業も実現し、仲間たちと前へ進む山田氏。「泥臭く行動し続けたから、良い仲間が見つかった」という言葉からは、今までの苦労を補って余りある力強さが感じられた。

難病患者の中には、専門医と出会えずに長く苦しむケースもある。同社のサービスが、そのような多くの患者の希望になることは間違いないだろう。

山田裕揮/1989年、和歌山県出身。和歌山県立医科大学卒業後、堺市立総合医療センター、聖路加国際病院、慶應義塾大学病院で勤務。難病患者かつ日本リウマチ学会専門医。患者数が限られ、医師の知見に偏りが生じている難病診療を支える仕組みを作り、世界中の難病患者に最新・最適な医療を届けたいという強い思いから、2020年、株式会社Mediiを創業。医師としても臨床現場で患者と向き合い続けている。