※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

1994年の設立以来、企業のブランディングからWeb運用まで、多角的な「デザイン事業」を展開してきた株式会社ニューロマジック。東京のほか、オランダのアムステルダムに拠点を広げ、2024年9月にはTOKYO PRO Marketに上場した。上場セレモニーが行われた翌日、代表取締役社長兼CEOの黒井基晴氏にサービスの強みや上場のきっかけ、今後の展望についてうかがった。

「デザインの民主化」で顧客体験を含めた新たな価値を創出

ーー事業の強みや方針をお聞かせください。

黒井基晴:
弊社は、「エクスペリエンスデザイン」をメイン事業とし、あらゆるサービスやプロダクトをデザインすることで、顧客のパーパス実現を支援しています。最も重視しているポイントは「ふさわしい体験」です。企業によって異なる課題や制約、および消費者の購買行動を把握した上で、バリエーション豊富なアウトプットができることは弊社の大きな強みと言えます。

効率や効果を追求してパターン化しがちなデザイン業において、僕たちは「もっと幅を持たせたい」という考えから「デザインの民主化」を掲げるようになりました。そして、プロセスの変化に加えて、人材にも幅を持たせることを「都市化」と呼んでいます。

「都市」には、遊びや仕事をはじめ、いろいろな目的を持った人が集まります。知恵が集合することでエネルギーが生まれ、多様性のある交流によって新しい文化が築かれていく。歴史的に見ても、「開かれた都市」はやはり強いものです。

「会社」対「会社」、「会社」対「人」の関わり方を広げていき、都市的かつオープンな組織を作れれば、社会全体がもっと快適になると考えています。

ーーサービスの誕生秘話をお聞かせください。

黒井基晴:
会社を経営する上で、僕はよく「10年後の自分になったつもりで」今の自分を見つめます。時代に適応しつつ、サービスを提供していく方法を考える過程で出会ったのが、顧客体験を含めてサービス全体をプランニングし、新たな価値を提供する「サービスデザイン」です。ヨーロッパで広まりつつある手法に興味を持った僕は、国内外のカンファレンスに参加し、人脈を広げました。

当初はシリコンバレーにある会社と提携して、サービスデザインチームを運用しましたが、アメリカでの手法をそのまま持ち込んでも、文化的に日本の市場には合いません。2017年頃から独自の手法を展開するようになり、現在のエクスペリエンスデザインに到達したのです。

あらゆる枠組みを超えて活躍できる「都市化」を目的に上場

ーー上場を目指した理由もお話しいただけますか?

黒井基晴:
最たる理由は、弊社が掲げる「都市化」の強化です。「株」というツールを活用することで、「価値観を共有する人々と、あらゆる垣根を超えてパートナーシップを結んでいく」という目的に大きく作用すると考えました。

数年前から「Neuromagic Professional Partners」と題して、協業パートナーを募集しているのですが、上場によって弊社が公開会社になったことでパートナー企業と資本提携しやすくなります。「NM dojo(ニューロマジック道場)」という社内スクール制度も、外部の方が参加できるようにしています。僕たちは、人の成長・活躍において会社単位で線引きしたくないのです。

ーー人材が会社の垣根を超えるということでしょうか?

黒井基晴:
弊社は、自分のキャリアを自分でデザインする「ジョブクラフティング(職務設計)」を推奨しています。ステップアップの形やジョブチェンジの可能性は示すものの、最終的には本人が選択できるため、会社や将来に対する行動を自主的に考えられる人が多くいます。

お世話になっている外部のパートナーと資本提携をして、「ジョブクラフティング」を共有することで、一定のルール下でお互いの社員が移動できるようになるかもしれません。「自分が一番活躍できる場所」にみんなが行けたら、都市全体の価値が向上するのではないでしょうか。

重要なのは、枠組みの必要性とバランスを取りながら「人材に自主性を持たせること」です。自分の希望や思いを伝えやすい雰囲気は大切にし続けたいと考えています。

グローバルな考えと文化が融合する、社会的意義のある会社を目指して

ーー今後の展望をお聞かせください。

黒井基晴:
これまでは、純粋に経済活動しているだけで成長できたかもしれませんが、今後はより「社会性」を持った企業の在り方が注目されることでしょう。大手企業をはじめ、社会への影響力が大きなクライアント企業の仕事をしている弊社も、近年は数年前からサステナビリティの専門チームをつくり、「サステナビリティを軸に据えたエクスペリエンス」をデザインすることにチャレンジしています。

「都市化」をより広めるべく、ヨーロッパ以外の海外拠点を増やし、国をまたいで活動することも検討中です。多様性のある考え方や経験が、一つの課題に向き合う時に化学反応が起きると信じているので、さまざまな文化が交錯する環境を作っていきたいと思います。

編集後記

会社や国の枠を超えた働き方によって「真の適材適所」が実現すれば、生き生きと働く人が増えることはもちろん、世界規模で経済活動が盛り上がるはずだ。

上場という新たなステージに立ったニューロマジックには、「Be Disruptive(常識を壊すことを恐れない)」、「Be Smart(最短距離で最善のゴールへ)」、「Be Yourself(自分らしい働き方とキャリアを。心の声に耳を傾け、楽しく、自由に)」、「To Be Happy(すべての仕事は、関わるすべての人の幸せのために)」といった、バリューに通じる野望をどんどん実現してほしい。

黒井基晴/1962年生まれ。国際基督教大学教養学部を卒業後、BBT大学院大学経営学研究科 修士課程(MBA)修了。イベントプロデューサーの個人事務所にて、7年間にわたってプラニング、プロデュース、ディレクション業務に携わる。90年代前半には、マルチメディアを演出に取り入れたプロジェクトに数多く参画。1994年、株式会社ニューロマジックを設立し、代表取締役社長CEOに就任。インターネットが商用化されて以来、数々のプロジェクトを牽引している。