2001年に設立されたトライベック株式会社。DXやWeb事業に取り組む企業を対象に、デジタルマーケティング支援やプラットフォーム事業、メディア・広告代理事業を手がけている。代表取締役社長の後藤洋氏に、サービスの強みや社風、今後の展望をうかがった。
デジタルメディア領域の知見を生かして「社員と顧客に寄り添う会社」を経営
ーー社長に就任した経緯をお話しいただけますか。
後藤洋:
大学卒業後、ソフトバンク株式会社へ入社し、デジタル領域の出版・広告を手がけるメディア事業として、1年目からお取引先の新規企画や事業設立に携わりました。新規事業の一つにトライベックの前身となる会社があり、私も立ち上げに参画したことが就任のきっかけです。
2001年頃はインターネットの黎明期でした。前例がない事業でも、「やる」と決めたら突き進む孫社長のスピード感は、ネットの時代にとてもマッチしていたと思います。1人の起業家として、そして経営者として、今でも尊敬している人物です。石橋を叩いて渡るのではなく、「飽くなきチャレンジをしていこう」という精神がトライベックにも息づいています。
ーー会社の方針や風土はどのように形成されたのでしょうか?
後藤洋:
事業が成長し社員数も増えていく過程で、会社のアイデンティティを確立・浸透させながら、「トライベックの文化」をつくり上げていきました。経営陣の考えを言語化してすり合わせた結果、ようやく「ひとにやさしく、つなぐデジタルを」というパーパスに辿り着いたのです。パーパスに込めた思いや価値観を含めて、全社員が共有できる「合言葉」に至るまでのプロセスは非常に苦労しましたね。
お客様に提供する「価値」も試行錯誤の連続で、創業から10年ほどは「プロフェッショナル集団の私たちがリードします」というスタンスでした。ヒアリングを通して、お客様は「伴走」を求めているのだと知ってからは「パートナーとして寄り添うこと」を大切にしています。
働き方も、個人プレーから互いを補い合うチームプレーとなったことで、社内の緊張感がほどけ、居心地のいい雰囲気へと変わりました。経営者としては、個人面談で社員一人ひとりの思いをなるべく吸い上げ、実現する姿勢を引き続き大切にしていきたいです。
DX支援を通して大企業と中小企業をつなぐメディアを展開
ーー事業の強みを教えてください。
後藤洋:
弊社のサービスは、大手企業に支持される「デジタルマーケティング支援」「リサーチソリューション」、中小企業・小規模事業者向けの「メディア・広告事業」「DXプラットフォーム事業」の大きく4つに分けられます。
リサーチソリューションは、「エクスペリエンス・マネジメント」と称した、経営コンサルティングや企業ブランディングを行うサービスです。独自に開発した評価指標やスコアリングにもとづく「企業情報サイトランキング」は、Web上の企業評価におけるデファクトスタンダード(業界の標準)になってきたといえます。
メディア・広告事業に含まれる「bizocean(ビズオーシャン)」は、経理や法務など各種ビジネス書式のテンプレートが揃うサイトで、約360万人のビジネスパーソンが登録しています。DXプラットフォームとして展開中の「Hirameki 7(ヒラメキセブン)」は、業務のデジタル化に必要なパッケージを一つのツールに集約したサービスです。
デジタルリテラシーが不十分な企業様でも、DXの最初の一歩を踏み出せることが大きな魅力となっています。中小企業と関わりたい大企業に広告を出していただくビジネスモデルも成立していて、いずれのサービスもお客様にとって、非常に価値のあるメディアとして位置付けられています。
デジタル・リアルを問わず社内コミュニケーションを大切に
ーー貴社で働く魅力を教えていただけますか。
後藤洋:
自分のことを気にかけてくれる仲間がいて、ほぼフルリモートにもかかわらず、しっかりとコミュニケーションをとれる社風に「働きやすさ」を感じている社員が多くいます。
弊社のパーパスに立ち返ることになりますが、とにかく「相手あってこその会社」であり、困っている人がいれば助けて、人に優しくする文化が徹底的に浸透しているのです。
最近では、「突発的なトラブルが発生したプロジェクトをリカバリーしたい」と、全社向けチャットで応援要請が流れてきました。いろいろな部署から「手伝います」と一気にメンバーが集まっていくのを見た時に、改めて素晴らしい文化だと感じたものです。
ーー社員がリアルで交流する機会も多いのでしょうか?
後藤洋:
会社の方針を発表する際はもちろん、全社員が一堂に会してコミュニケーションが取れる場を数多くつくっています。「ありがとう」を言い合うサンクスカードをデジタルで導入するなど、現場主導で企画したさまざまな仕組みが、会社の雰囲気づくりに役立っています。
社内にある「.Style Cafe(ドットスタイルカフェ)」は、働き方改革から生まれた新制度「.Style(ドットスタイル)」を形にするために設けたカフェスペースです。また、新入社員の紹介や、ランチなどさまざまな情報を発信する社内ラジオ番組など、ユニークな企画だと思います。
真の「伴走者」として日本企業の強みを世界へ
ーー今後の展望をお聞かせください。
後藤洋:
創業から約20年にわたって大企業のDXを支援し、成長の一助となってきた自負があります。一方で、日本企業の9割を占めるのは小規模事業者です。中小企業のDX支援による「社会貢献」を今後の命題としつつ、弊社のサービスで日本をもっと元気にできた時に、デジタル化でお困りの企業様にとって、本当の意味での「パートナー」になれると思っています。
「日本のデジタル伴走者といえばトライベック」と認知度を高めた上で、いずれは海外にも展開したいですね。おもてなし精神や緻密なコミュニケーション・設計といった、世界に誇れる「日本企業の文化」を集約したサービスが、世界中で必要とされる日が来ると信じています。
編集後記
大手企業向け・中小企業向けと、サービスのターゲットが明確だからこそ、多くの事業者に支持されているトライベック。顧客や社員の本音と向き合ったことで、どんなにプロフェッショナルな人材がいたとしても、1人では達成できないミッションがあると知った。明るい方向を目指して共に走ってくれる存在は、「人」にとっても「企業」にとっても不可欠なのだ。
後藤洋/1978年生まれ。慶應義塾大学を卒業後、2001年にソフトバンク株式会社へ入社。トライベック株式会社へ参画し、企業規模拡大と持続的成長を目指すべく積極的なM&Aに着手。幅広いサービスを提供する総合型DXコンサルティング企業へと成長させる。同社の代表取締役社長として、数多くのメディアやイベントに登壇。マーケティングやDX研修講師などを務める。