サービスの多様さと高い専門性で、トヨタ自動車や西日本電信電話(NTT西日本)と深い信頼関係を構築している人材サービス会社がある。愛知県名古屋市に本社を構える株式会社クロップス・クルーだ。
同社を牽引するのは、代表取締役社長の志村聡子氏。同社が長年培ってきた独自のポジションが、トヨタ自動車やNTTとの信頼につながっていると語る志村社長の経歴や、クロップス・クルーの事業内容と強み、そして未来へのビジョンについて深く掘り下げていく。
携帯電話の市場拡大を見据えてクロップスに入社し、着実にキャリアを積む
ーーまずは、社長就任までの経歴をお聞かせください。
志村聡子:
私が就職活動をしていたのは「就職氷河期」の入口、誰もが安定した仕事を求めていた時期です。私も例に漏れず、安定を優先した仕事を探していたときに、たまたま携帯電話業界の企業説明会に参加しました。
私は携帯電話のことを知るほどに「これからは携帯電話が普及し、誰もが持つ時代が来る」と感じるようになり、それと同時に、成長性のあるこの業界でなら、将来的な安定も期待できると感じました。こうして私は、クロップス・クルーの親会社である株式会社クロップスに入社を決めたのです。
クロップス入社後はまず店頭販売から始め、その後、入社して数年目からトレーナー業務やトレーナーをまとめる教育担当などを任されるようになりました。ちょうど携帯電話事業の拡大期だったこともあり、マネージャーに昇格し、2012年に取締役、2017年に常務取締役営業本部長に就任しました。
そして、3年後の2020年に、子会社であるクロップス・クルーの社長に就任し、今に至ります。
ーー社長に就任してから、特に苦労したことは何でしょうか?
志村聡子:
携帯電話業界と人材業界の文化のギャップに慣れるのに苦労しました。
中でも苦労したのが、結果を出すまでの時間軸の差です。携帯電話業界が週単位、1日単位、時間単位で売上を管理するような、短期的な結果が重視される世界であるのに対し、人材業界はリードタイムに数週間かけるような、長期的な視点で結果を出していく世界です。
あまりに時間軸が違うので、最初は結果がなかなか見えないことにストレスを感じるほどでした。しかし、人材業界の文化を学ぶにつれて、長期的に取り組めるからこその面白さを理解できるようになり、徐々に現状に合った働き方やチームの指揮の取り方などを実践できるようになりました。
クロップス・クルーだからできる、サービスの特徴と強みとは
ーー貴社の事業内容を教えてください。
志村聡子:
主な事業内容は、人材派遣や人材紹介、エンジニア派遣、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ソリューションの提供などです。設立は派遣業が活性化していた2000年で、それ以来、サービスの幅広さに起因する柔軟な対応力を生かし、顧客に貢献し続けています。
中でも人材派遣事業は、販売や事務職からエンジニア職まで幅広い分野に対応可能で、トヨタ自動車またはデンソーに自動車開発のエンジニアを派遣する「トヨタ事業部」という部署を持つほど、高い技術力と多くのノウハウが蓄積されています。
また、RPA事業では、NTTと協業して企業のDX支援に取り組んでいるのが特徴です。業務を効率化するための支援ツールの提供も行い、中小企業がRPAを取り入れやすいことを訴求して、ツールを最大限に活かしてもらうことを目標にしています。
さらに、中小企業には採用面からも支援を行っています。地域の企業を紹介する冊子を高校生に配布し、地域企業の魅力を広めるお手伝いをしています。
ーー貴社独自の強みについてお聞かせください。
志村聡子:
弊社の強みは、それぞれの事業が独自の専門性を持っている点です。たとえば、トヨタ事業部には自動車開発エンジニアに特化した技術とノウハウが蓄積されていますし、RPAの分野ではNTTとの協業でサービスの価値を高められる仕組みがあります。
人材業界はサービスの差別化が難しい業界ですので、こういった独自のポジションを確立できる仕組みづくりは、今後ますます必要性が高まると確信しています。
志や挑戦を尊ぶ、クロップス・クルーのさらなる挑戦
ーー貴社に向いているのはどのような人材でしょうか?
志村聡子:
自分の目標や将来ビジョンを自ら考えて行動できる、志のある方が向いていると思います。
弊社には、社員一人ひとりが組織全体の方向性に沿いつつも、それぞれの意見を尊重し、個々の力を発揮できる環境が整っています。そのため、社員たちには与えられた目標をただこなすのではなく、自ら「この目標にどう貢献できるのか」と考える、自発的な姿勢が求められます。
それだけに、仕事で自分の夢をかなえたい方や、自分の可能性を試したい方などは、のびのびと働けるでしょう。
ーー今後の注力テーマをお聞かせください。
志村聡子:
今後の注力テーマは、大きく3つあります。
まず1つ目は、専門人材の確保と育成です。施工管理や経理などの専門スキルを持つ人材は、今後も高い需要が見込まれます。これらの職種に未経験から挑戦できるようなプログラムを拡充して専門性の高い人材の育成を進め、人材の付加価値向上や他社との差別化を図ります。
2つ目は、DXの推進です。今あるRPAサービスのさらなる強化や、パートナー企業との連携強化を通じて、中小企業の業務負担を軽減する、コストパフォーマンスの高いソリューションの提供を目指します。
そして3つ目は、顧客との深い信頼関係の構築です。弊社が目指しているのは、顧客の課題を人事で解決に導く、提案型の人材サービスです。何よりも顧客の成功を重視し、替えが効かない人材サービス会社になることで、「人材・人事に関する相談ならクロップス・クルーに任せよう」と言っていただける存在を目指します。
編集後記
志村社長が目指す、提案型の人材派遣は、高度な人材を多く確保する必要がある点において、難易度が高い挑戦だといえるだろう。しかし、トヨタ自動車やNTTから信頼を得ているクロップス・クルーであれば、きっと成し遂げるに違いない。志村社長の誇り高き挑戦は、まだ始まったばかりだ。
志村聡子/1976年、愛知県生まれ。1998年、愛知淑徳大学卒業。同年、株式会社クロップスに入社。2012年に取締役、2017年に常務取締役営業本部長に就任。2020年、株式会社クロップス・クルー代表取締役社長に就任。2024年から日本人材派遣協会中部地域協議会会長。