※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

「株式会社プリントボーイ」は、2024年9月、社名を「株式会社ホープン」に変更し、新たなスタートを切った。印刷業からスタートした同社だが、イノベーションに挑み続け現在は、多岐にわたる事業を行っている。同社の事業内容や今後の展望について、代表取締役社長の結城俊一氏からお話をうかがった。

コロナ禍での変革。紙からデジタルへの果敢なシフト

ーー社長に就任した経緯をお聞かせください。

結城俊一:
29歳で飲食業界を離れ、弊社に入社しました。創業者が非常に勉強家で、業務を通じて多くの知識や心構えを教えていただきました。弊社は創業者、その弟と続き、私は3代目です。店舗責任者や工場責任者を経て、専務、副社長になった頃には、経営者になることを自覚していました。そのため、2018年の社長就任は粛々と受け入れましたが、就任当日に創業者が急逝したのは、予期せぬ出来事で複雑な心境でした。

ーー就任後に取り組んだことや苦労したことを教えてください。

結城俊一:
弊社はアットホームな良い雰囲気でしたが、同時に古い体制が残る部分も多くありました。個人的にその良さを認めつつも、時代に合わせて変革しなければ、人が入ってこないだろうとも思ったのです。そこで、制度や社風を現代の基準に合わせて改善し、利益を上げるために、できることは全て行いました。

コロナ禍で売り上げが大きく落ち込んだときは、本当に大変で、収束の見通しがつかない中、何か大きなチャレンジをするしかないと覚悟しました。しかし当時は、社長は私でもオーナー(筆頭株主)は別に存在したため、私が成した結果の責任をオーナーに負わせるわけにはいかないと思っていました。そこで「全責任を持って取り組むので、全株を譲り受けたい」とオーナーに申し出て、事業整理やサービスのデジタル化を進めたのです。その結果、お客様からも良い反応をいただき、危機を乗り越えることができました。

社員の「心理的安全性」がクリエイティブな成長への鍵

ーー貴社の事業内容を教えてください。

結城俊一:
弊社は現在、5つの事業を展開しています。

1つはアウトソーシングサービス事業。2つ目は「ICHIGO ICHIE DIGITAL(イチゴ イチエ デジタル)」のブランド名での、動画撮影スタジオの運営とデジタルコンテンツ制作。3つ目はOEM(相手先ブランド製造)の年賀状やオリジナルの商品制作。4つ目は、もともと印刷会社であったことを活かしたワンストップ・オンデマンド印刷事業。そして5つ目は、2024年7月にオープンした「ゆい吉 こころ結ぶ雑貨店」の運営です。これは、以前営業所兼店舗があった渋谷の物件を活用しました。

ーー幅広い事業ですが、その共通点や他社との差別化のポイントは何ですか?

結城俊一:
私たちは、教育関連など人々に伝える事業を手がけるお客様の顧客とのコミュニケーションを改善するために、5つの事業を複合的に活用しています。一定以上の規模の企業をメインターゲットとして、さまざまなコンテンツを組み合わせて提供しているのです。

また、弊社は下請け業務は一切行わない方針です。下請けでは、お客様の意図を正確に汲み取れず、提供したいクリエイティブがお客様に届かないからです。自社を「企画コンテンツ製造会社」と位置付け、自分たちで全てを生み出せる強みを持っています。

ーー社内体制について、どのような取り組みをしていますか?

結城俊一:
社内では、ウェルビーイングをテーマに掲げています。その中でも「心理的安全性」は、弊社にとって特に重要です。企画提案は良し悪しだけでなく、お客様にとって最適なものであるかどうかが大切です。自由に意見を言える環境が、良い企画やお客様対応へのモチベーションを向上させます。社内研修では、ポジティブな自分をつくりだすノウハウを提供し、年に1度は各社員がどんな思いで働き、会社との関係を構築しているのかを調査して、社員の気持ちを重視した対応を行っています。

「希望を創造・自由に発想」新社名に込めた想い

ーー社名変更の背景や新名称について教えてください。

結城俊一:
時代の変化に対応するために、社名を変更しました。前社名の「プリント」に不況業種のイメージがあることや、「ボーイ」に性別を明示することへの懸念があったためです。

新名称の「ホープン」はHOPE(希望)とOPEN(自由)を合わせた造語で、自由な発想で希望を創造し、お客様も私たちも希望を膨らませ、広がり、発展していこうという意味を込めています。ロゴの「O(オー)」のマルが少し浮き上がっているのは、希望を抱いて上昇していく様子を表現し、緑色には環境配慮への想い(サステイナブル)を込めています。

ーー今後、どのようなことに取り組む予定ですか?

結城俊一:
BtoBでは、お客様のコミュニケーションを最適化するという方向性を維持しつつ、さらなる事業の拡大を目指します。お客様の求めるものは日々進化していますので、常に最適なものを見極め、お客様にソリューションを提供できるように努めていきます。印刷もツールとしてまだ捨てたものではありません。弊社の印刷物の大半は環境に配慮した紙を使用しているため、企業の環境配慮や地域とのかかわりを紙媒体で表現し、ブランド化しています。

また、これまでBtoCは年賀状が主でしたが、需要の減少に伴い、新たな柱として始めた雑貨店の「ゆい吉」に注力しています。企画製造の経験を活かし、将来的には自社オリジナル商品のみを扱う店舗運営を目指しています。それにより、さらに企画力を高められると考えています。

何度でも挑戦し、自発的に行動する社員が企業を支える

ーー貴社で活躍できるのは、どのような人材ですか?

結城俊一:
自発的に考えて行動できる社員です。営業では、お客様想いであることが重要で、特に、さまざまな役割を楽しみながら挑戦できる人が活躍しています。社員数が40人程度とアットホームな企業であるため、全員が営業であり、全員がクリエイティブでもあるのです。

私の在任中に社員数を100人規模にまで増やしたいと考え、人材採用に力を入れています。2024年度は1次面接から私が参加し、優れた人材を早い段階で採用する試みを行いました。チャレンジを面白いと楽しめる明るく前向きな方に来ていただきたいですね。

ーー最後に、大切にしている考え方を教えてください。

結城俊一:
何回でもチャレンジすることです。イチロー選手でさえ打率は3割台だったのですから、一般人の私たちの成功率はもっと低いかもしれませんが、それでもまずは打席に立たなければ成功はありません。社員にも常に伝えていますし、私自身も強く意識していることです。先頭に立ち、いろいろなことに挑戦する姿勢が重要だと考えています。

編集後記

40人規模で、5つの事業を柱とする企業は稀有といえる。結城社長は、これらすべてが「お客様が顧客とのコミュニケーションを改善するための一つの理念に基づいているのだ」と、こともなげに話す。その言葉には、数々のチャレンジを乗り越えてきたからこその自信と確信が感じられた。人材採用の拡充、BtoB事業の拡大、BtoCへの新たな挑戦といった具体的な将来計画を持ちながらも、さらなる革新への余力も十分にある。新たな社名に込められたとおり、株式会社ホープンには、希望を自由につくり出せる未来が待っている。

結城俊一/1965年、福岡県生まれ。高校卒業後、飲食店の運営を目指して神奈川県に移住。調理や経営について学び、独立を志すも、自身の理想とのギャップを感じ、29歳で転職を決意し、株式会社プリントボーイ入社。店舗開発やスーパーバイザー、工場責任者などの経験を積み、2018年に代表取締役社長に就任。2024年、社名を株式会社ホープンに変更。