※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

企業向け給食事業において、「ご飯が進む味付け」を追求し続ける株式会社和楽。大企業から中小企業まで、1個からでも配達する柔軟なサービスと、その日のうちに調理して届ける鮮度の高さが特徴だ。幅広い顧客層に支持される背景には、味噌や醤油などさまざまな味つけが楽しめるように工夫された独自の調理法がある。今回は弁当満足度日本一を目指す、同社代表取締役社長の高橋文雄氏に事業への思いをうかがった。

父の思いを受け継ぎ、新たな挑戦へ

ーー独立するまでにどのような経験をしましたか?

高橋文雄:
中学生のころから、家業である「わらく食堂」の手伝いをしていました。当時は仕事の合間に学校へ行くという生活でしたね。食べることが大好きだったので、食堂での仕事はとても面白かったです。皿洗いや掃除、お客さまが食べた後の下げ膳など、できることを手伝っていました。

年中無休で営業していたため、飲食の世界に入ることは私にとって自然な流れでした。ときには売り物のカレーの卵を抜き出して食べて叱られたこともありましたが、それも今となっては良い思い出です。

ーー独立のきっかけは何だったのでしょうか?

高橋文雄:
21歳のときに、父から1000万円を渡されて、「お前がやれ」と言われたことです。家業の「わらく食堂」は店が2つあり、そのうちの1つを任されました。そこで、まずはタクシー会社向けにお弁当の配達を始め、カツ丼や牛丼といった丼物を400円で販売しました。当時の店舗は4人掛けのテーブルが4つとカウンター5席という小規模なものでしたから、外部への販売に活路を見出したのです。

そこから、1000万円の資金で販売管理システムを導入したり、経理の仕組みを整えたりしていきました。最初は手探り状態でしたが、工場のお客さまとの出会いがあり、少しずつ企業向けの弁当販売へと広がっていきました。

さらに、27歳のときには弁当業界の先輩との出会いがあり、多くのノウハウを学ばせていただきました。大変なこともありましたが、そこで出会った全国の経営者の皆さんと切磋琢磨してきたからこそ乗り越えられたと思います。そうした経験が今日まで続く事業の基盤となっています。

品質へのこだわりが生む、顧客からの信頼

ーー貴社の事業内容と強みについて教えてください。

高橋文雄:
私たちは川崎の地元企業に密着して、1個からお届けする給食事業を展開しています。配送ルートにいらっしゃるお客さまには全てお届けする方針で、コロナ禍前には1日2万5千食ほどを提供するまでになりました。配送効率を考え、1台で500食以上を配達することで、品質と収益性の両立を図っています。大手企業から、中小企業まで、幅広いニーズにお応えしています。

地域密着ですが、川崎、横浜、東京、千葉も大事なエリアです。それぞれの地域ナンバーワンを目指して弁当づくり、人づくりをしています。私達のお弁当は、深夜から調理し、明け方から盛り付け、お昼に間に合うよう、神奈川と千葉の二つの工場で毎日四万食を作っています。又、大学や企業の食堂も数十ヶ所運営をしています。美味しいという笑顔を求め、現在グループ総勢500名で奮闘する日々です。

夜中1時ごろから調理を始め、朝までかけて製造し、お昼までにお客さまの元へお届けする。このスピード感のある提供体制が、私たちの強みとなっています。

ーーお弁当に対するこだわりをお聞かせください。

高橋文雄:
1つのお弁当をつくるときに、塩や味噌、マヨネーズ、醤油など、味がかぶらないような工夫をしています。毎日のお弁当にコメントを付けて、「こういう思いでこの商品を作りました」という気持ちもお伝えしています。特に気を配っているのが、冷めてもおいしく食べられる味付けですね。

大きな釜で調理する際は味を濃いめに付け、冷めても味がしっかりと残るように研究を重ねています。食材の水分量によっても味の染み方が変わってくるので、毎日が研究です。私自身、ご飯が進む味付けが好きなので、それが今でも変わらないこだわりとなっています。一番嬉しいのは「おいしかった」と言っていただけること。お客さまの期待を裏切らない、ご飯が進む味付けを追求し続けています。

経験から学び、これからの事業展開へ活かす

ーーこれまでに苦労された経験を教えてください。

高橋文雄:
振り返るとさまざまな挑戦と失敗を重ねてきました。コンビニでの販売や航空会社の機内食などの新しい分野にも挑戦しましたが、長期間持つような商品を前提にすると納得のいく品質のものがつくれなかったのです。この失敗から、私たちの強みは「その日につくって、その日のうちに食べていただく」という鮮度の高さにあることに気づきました。

長期保存のために品質を変えるのではなく、本来の味を大切にする。今では企業給食に特化し、地域に密着した事業展開を進めています。こうした経験から得た最大の学びは、規模を追い求めるのではなく、本質的な価値を追求することの大切さでした。

ーー今後はどのような方向を目指していきますか?

高橋文雄:
売上や規模を追い求めるのではなく、確実に利益を残し、社員に還元できる経営を目指します。毎日の社内ミーティングでも発信していますが、私を含めて一人ひとりが明確な目標を持ち、それに向かって日々チャレンジしていくことが大切です。効率化も進めながら、残業せずに早く帰っても給与が上がっていくような職場にしていきたいですね。

編集後記

地域密着型の給食事業に特化し、着実な成長を遂げてきた同社。その原動力が「ご飯が進む味付け」という、シンプルながら奥深いこだわりにあることを今回の取材で実感した。その実直な姿勢こそが、多くの企業から信頼を得ている理由なのだろう。コロナ禍を経て、より本質的な価値の追求へと舵を切った同社の今後に、大いなる期待が寄せられている。

高橋文雄/1962年、神奈川県生まれ。川崎市立商業高等学校を卒業した後に家業である、わらく食堂に従事。1986年法人(株式会社和楽)設立。代表取締役社長に就任。ご飯の進む味付けを強みに弁当満足度日本一を目指す。