※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

1960年の創業以来、安心・安全を基盤として、有名百貨店を中心に「四陸(フォールー)」「チャイナチューボー」の2ブランドを展開し、本格中国料理の味を気軽に楽しめる中華惣菜を提供し続けている株式会社フーズパレット。同社は2019年にフジッコグループの一員となって以降、「お客さまを感動させる」「働く仲間を笑顔にする」「何事にも向上心を持って取り組む」という3つの行動指針を掲げ、新たな挑戦を続けている。

原材料の厳選から手づくりにこだわった製法まで、レストランさながらの本格的な品質を追求する同社代表取締役社長の渡邊靖也氏にお話をうかがった。

幼少期の出会いがつないだフジッコとの縁

ーー貴社に入社したきっかけを教えていただけますか?

渡邊靖也:
私の父はフジッコ株式会社に勤めていました。小学生のころ、当時のフジッコの山岸社長がよく家に電話をかけてこられて、私が電話をとることが多かったのですが、あるとき会話の中で「将来うちに来て働くか?」と声をかけていただいたのです。子供相手の冗談だったとは思いますが、それ以降、なんとなく将来はフジッコに入社するものだと思うようになり、結果的にその通りになりましたね。

入社後10年間は営業職として、卸や量販店に向けて営業を行っていました。商談に行くのがとても楽しくて、この仕事は私にとって天職だと感じていたのです。困ったことがあれば助け合い、お客さまへの提案内容の工夫を重ねる中で、達成感も得られました。

その後、経理部財務課に異動になり、さらに経営企画室で9年ほど過ごすことになります。全く異なる職務でしたが、新しい環境での学びも多く楽しかったですね。42歳で経理課長を担い、その後ブランドマネージャーも経験。2019年に弊社がM&Aによってフジッコの子会社になったことを機に、弊社の社長に就任することになりました。

ーー社長に就任してから、どのような取り組みをしましたか?

渡邊靖也:
まずは弊社をよく知るところから始め、最初の3ヶ月は社内の問題解決に集中的に取り組みました。特に重要だと感じたのは企業文化の改革です。当時の弊社には行動指針がなかったため、「お客さまを感動させる」「働く仲間を笑顔にする」「何事にも向上心を持って取り組む」という3つの指針を定め、社員全員で共有するようにしました。この改革を成功させることが、私に課せられた重要な使命だと考えていたのです。

そんな中、2020年にコロナショックが起こり、非常に厳しい状況に陥りました。特に4月、5月は店舗の一時閉鎖を余儀なくされたので、想像を超える赤字を計上することとなりました。しかし、この危機が商品のリニューアルや改革を進めるきっかけとなり、化学調味料や着色料を使用しない方針を徹底して、より安心・安全な商品づくりにつながりました。この時期の経験が、現在の弊社の強みにつながっていると感じています。

素材のうま味を引き出す、おいしさへのこだわり

ーー貴社の事業内容についてお聞かせください。

渡邊靖也:
私たちは中華惣菜の製造販売を手がけています。特に百貨店での店舗展開を中心に、安心・安全をベースとした商品をお客さまにお届けしてきました。最近では量販店の冷凍食品コーナーでも商品を展開し、より多くのお客さまにご利用いただけるようになってきました。

私たちが最も大切にしているのは、「家族や大切な人に食べさせたくなる料理を提供したい」という思いです。そのために、化学調味料や着色料を極力使用せず、手づくりにこだわる方針を徹底しています。特に化学調味料を使用しない方針を決めたときは、社内から「中華料理でそれは無理だ」という強い反対の声もありました。

しかし、フジッコから来たスタッフと弊社の開発チームが一丸となって挑戦を続け、約5年の歳月をかけてほぼ全ての商品のリニューアルを実現しました。

ーー商品の品質向上について、どのようなことにこだわっていますか?

渡邊靖也:
原材料の選定に非常にこだわっています。たとえば、酢豚には山形県の平田牧場で飼育されている金華豚を使用していますし、ネギは京都の九条ネギを使うなど、食材そのものの品質をお客さまに納得いただけるように努めています。また、エビチリでは、以前は衣を厚くして見栄えを重視していましたが、本来のエビの食感を活かすため、衣を薄くする工夫を重ねました。

開発担当者を中心に1年近くかけて試行錯誤を重ね、プリッとした食感とソースとの絡みの良さを両立させた理想の商品が完成しました。

グループシナジーで広がる、新たな商品開発の可能性

ーー今後の事業展開についてお聞かせください。

渡邊靖也:
将来的には、フジッコグループとのシナジーを活かして、自社での製造品目を増やしていく計画です。特に飲茶や餃子などの点心類は、今までは仕入れ品が中心でしたが、これからは自社での製造にシフトしていく予定です。誰もが安心しておいしく食べられる商品を提供するために、日々改良を重ねています。

また、最近力を入れているのが、簡便性と本格的な味わいを両立させた商品の開発です。現在百貨店の自社店舗で販売している担々麺や鶏白湯麺は、電子レンジ調理が可能な商品としてご好評をいただいています。

これをさらに発展させるべく、水を使わず器も不要で、容器のまま電子レンジで調理できる冷凍ラーメンの開発を進めています。今後は牛肉麺なども開発予定で、自社通販サイトでの展開も計画しています。ぜひ一度お手に取っていただけたら嬉しいですね。

編集後記

化学調味料・着色料不使用へのこだわり、職人技が生きる製法、徹底した品質管理。その一つひとつに、妥協を許さない職人気質を感じた。特に、新商品のサンプルを見せてくださったときの表情や様子から、自社商品への誇りや愛着が伝わってきた。お客さまに喜んでいただきたいという思いが、商品開発の細部にまで行き届いている。レストランが提供する商品以上の品質を追求する同社の挑戦は、これからも続いていくことだろう。

渡邊靖也/1972年、兵庫県生まれ。大学を卒業後、1995年にフジッコ株式会社に入社し、営業、経理、経営企画での勤務を経験。2019年に株式会社フーズパレットがM&Aによって同社の子会社となったことを機に、株式会社フーズパレットの代表取締役社長に就任。