※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

スケートボード、サーフィン、スノーボードといったアクションスポーツの専門店として、全国140店舗以上を展開している株式会社ムラサキスポーツ。2023年に創業50周年を迎え、単なる物販にとどまらない「遊び」を軸としたコミュニティづくりで成長を続けてきた。

同社は「人がいて、ムラサキスポーツがある。」という経営哲学のもと、スケートパークの運営や、イベントの開催など、初心者から上級者まで楽しめる「遊び場=フィールド」づくりを推進している。

また、全国400人のスノーボーダーやスケートボーダーなどのトップライダーと契約し、そのサポートを通じてアクションスポーツの発展にも意欲的に貢献する。2024年に取締役社長に就任した金山洋一氏に、同社の新たな挑戦について話をうかがった。

4代目として企業文化を継承し、新時代への橋をかける

ーームラサキスポーツの社長に就任した経緯をお聞かせください。

金山洋一:
創業家に生まれ、大学卒業後すぐに入社して、この会社一筋でやってきました。創業家の文化を継承しながら次代へつなぐ道筋づくりをしたいという思いで、会社の50周年という節目に4代目社長に就任したのです。

ーー社長就任後はどのような改革をしましたか?

金山洋一:
この1年、自ら全店舗をまわって会社の理念と事業内容を伝えることに注力してきました。これまでは「いい会社」という路線で人間形成や収益面を軸としてきましたが、私は「遊びの会社」という新しいコンセプトを打ち出しています。これは単なるスローガンではなく、人と人とをつなぎ、楽しさを分かち合える場所を作りたいという思いをこめています。

「弊社を支える人のパワーと周囲を惹きつけて楽しませる力はどこにも負けない」、それが社員全員の共通認識です。まずは社員が楽しく仕事をして、お客さまにも楽しんでいただくのが小売店としての原点だと考えています。

入社以来、さまざまな新規事業に挑戦してきましたが、うまくいくことばかりではありませんでした。しかしそうした経験が、今の新しい挑戦につながっていると感じています。特に印象深いのは、コロナ禍での経験です。経済が苦しい時に真っ先に切られるのはレジャーだといわれていましたが、実際は反対だったのです。むしろ人々は苦しい時こそ遊びを求めるのだと実感し、私たちの存在意義を再確認することができました。

「5つのS」で広がるアクションスポーツの可能性

ーー貴社の強みを教えてください。

金山洋一:
弊社は「アクションスポーツ」と呼ばれるスケートボード、サーフィン、スノーボードを中心として、スポーツ用品やアパレルなどを販売しています。私たちの強みは、商品以上に人とのつながりにあります。この「つながり」に大きく力を投じていこうというのが、弊社の考えです。

また、弊社が掲げる「5Sのつながり」という理念のもと「ムラサキではじめよう」「ムラサキで遊ぼう」「ムラサキでつながろう」「ムラサキで学ぼう」「ムラサキで羽ばたこう」という5つのサービスを展開し、全国にいる400人の契約ライダーと、2千名のプレオニア(弊社スタッフ)のネットワークのもとで地域に根差したコミュニティサービスを進めています。こうした取り組みを経て、アクションスポーツの分野で他社に負けない、絶対王者になることを目指しています。

ーー近年は教育分野にも進出しているとうかがいました。

金山洋一:
かつては子どもたちが店舗に遊びに来てスケートボードに触れ、成長してプロになることもありました。そのようなスポーツに触れる機会を提供し、遊びでつながりながら、子どもたちの成長に寄与したいという思いがあります。そこでファンたちのコミュニティに加えて、最近、「遊びの学校」というものを立ち上げました。

弊社が提案する「遊び」とは、人と人とをつないで仲間を増やし、互いにリスペクトして認め合う関係をつくっていくことを表しています。楽しく遊びつつ、学びの要素も充実させることによって、世界で通用するアスリートの育成に貢献したいと思っています。

誰もが楽しめて、思い出に残る体験を提供

ーー今後の展望をお聞かせください。

金山洋一:
店舗を単なる商品販売の場とするのではなく、スケートパークを併設するなど、「買い物をする場所」から「遊びに行く場所」へ変えていこうと考えています。そうした場では、商品の使い方などを実際に遊びながらスタッフから学べる利点があります。大阪の「ムラサキパーク ららぽーとEXPOCITY」では、教育要素7割、物販3割という新しい形態で店舗を出店し、スケートパークも設置して大きな反響を得ました。

スケートパーク事業も、施設運営の枠にとどまらず、コミュニティの場として発展させていきます。また将来的にはパーク事業のコンサルティングも手がけていく予定です。さらに10年後の目標として、「パープルランド」の実現を掲げています。子どもから高齢者まで、誰もが楽しめる場所を目指し、夏はキャンプ、冬はスノーボードなど、四季を通じて思い出に残る体験を提供したいと考えています。

編集後記

インタビュー中、「(誰も)独りにはしない」という言葉が心に残った。アクションスポーツというと個人競技のイメージが強いが、金山社長が描く未来像は、むしろ人と人とのつながりを重視したものだった。商品を売るだけでなく、スポーツを通じて仲間をつくり、成長を支える場を提供する。同社が見据える未来に、新たな可能性を感じずにはいられなかった。

金山洋一/1966年、東京都生まれ。東洋大学経営学部卒業。1989年、株式会社ムラサキスポーツに入社。2024年、取締役社長に就任。一般社団法人日本スケートボード協会会長。一般社団法人日本アクションスポーツ連盟理事。