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創業から12年、株式会社Lingは人材派遣からスタートし、法人向けOA機器販売やオンラインアシスタント「BizCats」など、企業向けサービスの総合商社へと進化を遂げている。「人がいたもの勝ち」というユニークな信念のもと、昨年比5割増の採用を実現し、平均年齢27.5歳という若さあふれる組織で躍進を続ける。人材の可能性を最大限に引き出す経営で、さらなる成長を目指す代表取締役社長の三浦優司氏に、同社の戦略をうかがった。
乗り越えるべきハードルの一つひとつが高かった創業期
ーー人材派遣という業種で起業されたきっかけは、どのようなものでしたか?
三浦優司:
2006年に高校を卒業してから、フリーターとして働いていました。アルバイトを掛け持ちする中で派遣会社で仕事をする機会があり、その派遣会社に営業職として就職したのがこの業界との出会いです。
人材派遣業として一通りの内容を経験して、2011年の退職を機に起業を決意しました。自分でビジネスをやるなら、これまでお会いした方々との関係を一番活かせるのはこの業種だろうと思ったからです。人との出会いにも喜びを感じていたため、いろいろな人に助けてもらったこの業種に、身を置きたいという気持ちがありました。
ーー創業時に一番苦労されたのはどのようなことでしたか?
三浦優司:
最初は物件や事務所を借りたときです。それまでの勤続年数がカウントされなかったために審査に苦戦しました。初めての仕事をとることにも苦労しました。人材派遣会社は、「ノーワークノーペイ(労働なくして賃金なし)」で、物理的な在庫をもちません。まずは働いてくれる人がいて、その上で仕事がないと成り立ちません。このバランスは、今でも難しいところです。
「人と仕事」が整ったら、あとは運転資金です。会社としてお金を受けとるのが翌々月であっても、派遣として働いた方には最初の月にきちんと報酬を支払わなければなりません。実際にお金が入るまでの立替金を用意するのが大変でした。しばらくは自分が一番給料が低いという有様でした。
業態にとらわれない人材の活かし方で、目指すは「総合商社」
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ーー貴社の強みを教えてください。
三浦優司:
創業当初の強みは「即戦力」でした。当初は小売業の営業に関するお仕事をメインでいただいており、お客様の現場ではすぐに戦力として活躍できる人材が求められていました。すぐに案件をとれるような即効性が重要だったのです。
10年たった今では、「総合商社になりたい」というテーマを掲げて、広くサービスを展開しています。法人向けのOA機器販売、オンラインアシスタント「BizCats」もその一つですね。
弊社では「派遣」という業態に限定せずに新商品・新サービスを開発しています。近年の働き方の変化によって、「業務委託」としてお受けすることも増えてきましたが、人材が活躍するという点では何も変わりはありません。こうした時代の変化に対して柔軟に対応できるのも、人材を多く抱えている弊社ならではの強みだと考えています。
若手を活かし若手を支える事業を展開
ーー今後の展望をお聞かせください。
三浦優司:
お客さまによく「人がいる企業しか、今後は勝ちえないし残りえない。人がいたもの勝ち」ということをお伝えしていますが、自社で採用しようと思っても年々コストは上がる一方です。それでも、弊社では採用を止めるつもりはありません。
むしろ今年も85名と、昨年よりも採用人数を5割以上増やしているところです。5年後には1000人規模を目指していきたいですね。10年後で考えると、弊社単独で進むというよりも、買収なども視野に入れていくフェーズに入ると思います。その頃にはトータルで3000人ぐらいにはなっているでしょうか。
今後は大きい地方都市への拠点展開や、オンラインの業務委託を国内だけでなく海外からも受けることを考えています。また、組織としての基盤をより強化するために役職の席を増やすなどの取り組みも進めていきます。
ーーこれからどのような部分に注力されますか?
三浦優司:
勝ち残っていくためにも、若手の採用と同時並行で進めなければいけないのが、世の中のボリュームゾーンとなる50歳前後の層の採用です。現在の弊社の平均年齢は27.5歳と、経験豊富な50代のミドルシニア層が薄い傾向にあります。年上の人たちが、若手を支えてあげてほしいと思っています。
特に、率先して自ら動いてくれる人が来てくれたら嬉しいですね。失敗するということは、自ら動いているという証拠です。私も多くの失敗を経験しましたが、挑戦しつづけたからこそ、今ここにいます。ですから挑戦する意欲がある人は、どんどん前に出てほしいですね。
編集後記
取材中、三浦社長の言葉には常に「人」への熱い思いが込められていた。特に印象的だったのは「失敗を恐れてもいい」という言葉だ。行動することへの寛容さが、社員の成長を支えているのだろう。人材派遣の枠を超えて、総合商社への進化を目指す三浦社長の姿からは、若さゆえの柔軟さと、経験に裏打ちされた戦略の両立を感じた。
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三浦優司/1987年生まれ。高校卒業後、人材派遣会社に入社。営業職に従事する。2011年に退職し、翌年に株式会社Lingを設立。人材派遣から営業管理、スタッフ育成などを提供。近年ではICT事業をスタートさせるなど「企業向けサービス総合商社」として業績を伸ばしている。