※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

保険業界は、デジタル化の波を受けて大きな変革期を迎えている。従来の対面営業からオンラインサービスへの移行など、時代の変化に合わせた柔軟な対応が求められる中、独自のシステム開発と代理店支援を通じて、業界の課題解決に挑戦し続けているのがベストセレクション株式会社だ。今回は代表取締役社長の千葉浩司氏に、創業からの歩みと今後の展望についてうかがった。

保険業界の第一線へ

ーーご経歴をお聞かせください。

千葉浩司:
金融関係の仕事をしてみたいと思っていたところ、同級生の父親に紹介されて保険業界に興味を持ち、大東京火災海上保険(現:あいおいニッセイ同和損害保険)に入社しました。

入社後は営業職として白地開拓で成果を上げ、トップクラスの実績を残しました。当時、会社内には独立を目指すチームがあり、私も将来の独立を視野に入れて活動して参りました。その後5年間の経験を経て1998年に個人代理店として独立。さらに2003年に法人化して、ベストセレクション株式会社を設立しました。

保険会社の支社機能で実現する新しい代理店ネットワーク

ーー貴社の事業の特徴を教えてください。

千葉浩司:
弊社の特徴は、一般的な保険代理店業務に加え、あいおいニッセイ同和損害保険の地域戦略拠点として、約250店ある代理店の業務支援や管理指導を担っている点にあります。近年、保険会社は効率化のために拠点を撤収する傾向にありますが、完全撤退は競争力の低下につながるため、私たちのような地域の大型代理店が業務を受託し、保険会社の支社のような機能を果たしているのです。

人手不足や後継者不在など、さまざまな課題を抱える代理店に対して、例えば人材が不足している場合は業務代行、高齢で事業承継を考えている場合は権利買い取りの提案など、状況に応じた解決策を提供しています。

ーー新規取引先の開拓について、どのような取り組みをされていますか?

千葉浩司:
新規取引先の開拓においては、あいおいニッセイ同和損保との繋がりによる弊社独自の強みを活かし、保険会社のテレマーケティング会社を効率的に活用しています。主に埼玉県西部地区のエリアでこれまでに名刺交換をさせていただいた企業様やセミナーや営業活動で知り合った企業様をリスト化し、そのリストの中から毎月500社の企業様へDMとテレマーケティング会社によるアウトバウンドコールを実施、テーマにもよりますが毎月10件〜20件の反響があり、そのご興味いただいた企業様へ当社の営業社員が訪問させていただくといったスキームで活動しています。また、企業型確定拠出年金(企業型DC)の提案にも注力しており、弊社では加入者が2名からでも導入可能な体制を整え、中小企業の実情に即したきめ細かなサービスを提供することで差別化を図っています。

ーー保険以外の事業展開についてお聞かせください。

千葉浩司:
現在、中小企業向けの補助金活用支援に力を注いでいます。政府の補助金制度について、全企業のうち実際に活用できている企業はほんのわずかで、多くの企業では制度を知らないか、活用方法がわからないために大きな機会損失が発生しているのです。規模の大きな企業であれば専門部署が情報を収集して活用できますが、小規模事業者の場合は日々の業務に追われて、なかなか手が回らないのが現状です。

そこで、私たちは保険の提案と併せて、補助金の活用方法などもアドバイスすることで、経営者の皆様の潜在的なニーズに応えています。企業経営者の方々が本来活用できるはずの制度を知らずに損をしている現状は、非常にもったいないことです。そのため、私たちは保険だけに留まらず、企業経営全般の課題解決をともに実現できるパートナーでありたいと考えています。

デジタル化とSNS活用で保険業界を革新

ーーデジタル化にはどのように取り組んでいますか?

千葉浩司:
現在、LINEアプリを通じて、顧客が自身の保険契約を一元管理できるシステムを独自に開発し無料で提供しています。このシステムでは、保険会社のシステムと連動しお客様が加入している全ての最新の保険情報を自動で可視化し、保険満期のお知らせや重複する補償のチェック、アプリ内からの事故報告や事故対応の進捗状況などを確認することが可能です。

また、予防、防災、備えをワンストップサービスで提供できる機能が付いています。さらに、このアプリには暮らしのお役立ち情報も組み込まれており、全国のさまざまな施設、サービス、商品などの割引サービスが受けられます。このアプリで10000件の顧客マーケットへのさまざまなアプローチが簡単にでき、顧客接点(ラストワンマイル)の強化につながります。保険は「もしも」のときのためのものですが、私たちはそれだけでなく、日常的に活用できる価値を提供したいと考えています。

ーー今後の事業展開についてお聞かせください。

千葉浩司:
売上目標として、現在の約3億円から5年後には5億円達成を目指しています。特に重視しているのが、売上高を従業員一人当たり現状の1000万円から、1500万円以上に引き上げることです。この目標に向けた施策の一つとして、SNSマーケティングに本格的に取り組んでいます。従来のマスメディア広告は費用対効果が見合わないことが多い一方で、SNSは手間のかけ方次第で大きな成果が期待できるのです。そこで、SNSマーケティングの専門家による講習を2週間に1回のペースで実施し、300万円を投資して社員教育を進めています。

特に、事務職の社員全員がこの取り組みに参加し、事務員さんの隙間時間を活用してSNSで集客する事が出来れば事務職の生産性が飛躍的に向上致します。かつては訪問販売が当たり前でしたが、時代は大きく変化しており、たとえば兵庫県知事選でもSNSが大きな影響力を持ったといわれていますね。保険業界でもSNSを活用した新しい営業スタイルが、これからの時代には欠かせないと確信しています。

職種の垣根を越えた育成で組織全体を底上げ

ーー採用と育成についての考え方を教えてください。

千葉浩司:
弊社では毎年2名程度の新卒採用を目指していますが、特徴的なのは入社時から営業職か事務職かを決めつけないという点です。適性を見極めながら、本人の希望も考慮して配属を決めており、基本給は営業職も事務職も同じで、その後の実務に応じて営業職には営業手当や歩合手当を支給する仕組みです。

また、特定の営業担当者の個人的な能力に依存しない組織づくりを心がけています。誰が担当しても同じ結果が出せる仕組みをつくることが、経営者としての重要な役割だと考えており、社員それぞれの得意・不得意を可視化しながら、本人に最も合った仕事を任せることで、組織全体の底上げを実現しています。

編集後記

30年以上にわたり保険業界を見つめてきた千葉社長が描く未来は、伝統と革新が共存する世界である。独自開発のアプリやSNSマーケティングへの積極的な投資は、効率性と顧客満足を同時に追求するビジョンの表れであり、保険業界に、新たな価値や魅力を吹き込もうとする姿勢が印象的だ。ベストセレクション株式会社が描く「地域とともに成長する保険代理店」という展望は、業界の未来を切り開く指針となるだろう。同社のさらなる飛躍に注目したい。

千葉浩司/1970年東京都生まれ。1993年に大東京火災海上保険に入社。1998年に個人代理店として独立し、2003年に法人化、ベストセレクション株式会社を設立。代表取締役社長に就任し、現在に至る。所沢エリアを中心にコンサルティング型の営業スタイルを確立し、法人約1,000社、個人約9,000世帯の顧客を持つ。