※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

「人とIT、そのスキマに。」をスローガンに、大手IT企業が提供し、各種業務の核となっているコアシステムではカバーしきれない、エンドユーザ側からみた「あともう一歩」の解決をする株式会社パワーソリューションズ。この独自のビジネススタイルは、顧客のニーズを捉え、ご紹介が重なる形でビジネスを拡大している。

また、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やグローバルSaaSを活用することで、顧客の業務プロセスの最適化を進めたのだ。横断的な解決策の提供により、複数コアシステムの効率的な連携を可能にしている同社。今回は、そんなラストワンマイル領域のDX推進が得意分野であるパワーソリューションズの戦略について、代表取締役社長の高橋忠郎氏にうかがった。

新聞の折り込み求人広告から始まったIT業界のキャリア

ーー高橋社長がIT業界に入ったきっかけを教えていただけますか?

高橋忠郎:
私は就職活動にはあまり真剣に取り組んでいませんでした。たまたま読んでいた新聞の折り込み求人広告のなかからシステムエンジニアという職を選んだのがIT業界へ進んだきっかけです。最初に入社したのは15名ほどの小さな会社で、大手企業の仕事を下請けとして行っていました。そこで3年ほど働いた後、外資系保険会社傘下のIT会社に転職しましたが、刺激の少ないその環境に物足りなさを感じていました。

そのようなとき、弊社の創業者で、新卒で入社した会社の顧客企業で仕事での付き合いがあった佐藤から、「一度、うちで働いてみないか」と声をかけられたのです。その場で「働いてみたいので、よろしくお願いします」と即答して、会社訪問も一切せずに弊社への就職を決めました。

ーー社長になった経緯を教えていただけますか?

高橋忠郎:
弊社は2019年に上場しましたが、その準備段階では、私はIPO担当役員として携わっていました。上場後、会社の方向性について議論を重ねるなかで、私が社長を引き継ぐことになったのです。上場と社長の交代は、会社を次のステージに進ませるための、役員たちによる戦略的な判断だったと考えています。

私自身、創業者の佐藤には多くの成長機会を与えてもらい、さまざまな仕事を任せてもらいました。その経験が、今の私の礎になっています。社長就任についても、新たな成長の機会だと捉えており、その上でパワーソリューションズグループ全体の発展に貢献していきたいと考えています。

ラストワンマイル戦略で差別化を図る

ーー貴社の事業内容と強みについて、教えてください。

高橋忠郎:
弊社は、創業から一貫して資産運用業界に特化したサービスを展開してきました。そのなかで、特に注力しているのが「ラストワンマイル領域」です。たとえば、金融機関が導入している各種業務の核となるコアシステムは、どの会社にも必要な多くの共通機能を持っていますが、各社特有のニーズをすべて網羅するのは困難です。

そこで弊社では、あともう一歩、ITで問題を解決したい領域である「ラストワンマイル」を埋めるソリューションを提供し、エンドユーザである顧客が感じる理想の状態とのギャップを解消しています。

具体的には、RPAやグローバルSaaSを活用して業務効率化を図り、複数のシステムを横断的に連携させています。資産運用業界の業務知識を持ちながら、最新のIT技術を活用できる点が、弊社の強みだと言えるでしょう。

ーー他社との差別化ポイントはどこにありますか?

高橋忠郎:
多くのIT企業が「縦型」、つまり特定の業務領域に特化したソリューションを提供しているのに対し、弊社は「横型」のアプローチをとっています。複数のシステムやサービスを横断的に連携させ、エンドユーザの視点に立った統合的なソリューションを提供しているのです。

たとえば、会計や営業、人事のシステムが独立している場合、それぞれにデータを入力する必要があります。しかし、システム同士を連携させることによって、1度の入力でデータを横断的に活用できるようになります。さらに、入力の回数が減るので、ミスも減らすことができるのです。

すると、お客さまは業務全体の効率化と高度化を同時に実現できます。また、金融・資産運用以外の業界にも同様のアプローチで、業務改革やDX推進のサポートを行っています。

グローバルな視点で強化する横断的ソリューション

ーー人材育成については、どのような考えをお持ちですか?

高橋忠郎:
人材育成においては、「7:2:1」の法則というものがあります。これは人の成長においてどこから学びを得るかの割合を表しており、7割は現場での経験、2割は上司や先輩からの助言や指導、残りの1割が体系的な学習や研修です。

7割の現場での経験については、これまでもプライムベンダーとして責任ある立場で仕事をしており良質な成長機会を社員に提供できています。

ですから、のこりの3割の強化、つまり、いい上司の育成や局所的になりがちな技術や業務知識獲得のために、社員が複数の講座を受講できる「社内大学(NextMileUniv.)」を設立し、そこで、マネジメントやOJT強化、IT技術や業界知識、ビジネススキルなど、幅広い内容を学べるようにしました。

さらに、千葉大学と共同でDXデザイン研究室を設立するなど、外部機関とも連携しながら学習の機会をつくっています。

ーー今後の事業展開について、どのようなビジョンをお持ちですか?

高橋忠郎:
横断的な解決策のために必要な武器(グローバルSaaS)を見極め、増やし、組み合わせて使いこなせるようになることを目指しています。会社の規模が大きくなれば、グローバルに業務を展開できる機会も増えるでしょう。そのため、国内だけでなく、世界にあるさまざまなサービスを組み合わせてDXを進めていく方針です。

これにより、納期短縮やコンサルティング領域の拡大が可能になり、結果としてデリバリー単価の向上、それからライセンス販売収益といったストック型ビジネスの拡大につながると考えています。

また、既存顧客深耕と新規顧客開拓の両面から事業を発展させることも大切です。既存の顧客に対しては、金融・資産運用の深い専門性に裏づけられたソリューションを提供することで、取引の拡大を図ります。一方で、弊社が取り扱う幅広いグローバルSaaSを武器に、マルチSaaS活用による広範な産業分野の業務DXをさらに推進していきたいですね。

編集後記

同社の事業においては、まるでパズルのピースを組み合わせるかのように、さまざまな形のサービスを顧客のニーズに合わせて巧みに組み立てていく。そして、それを支えるのが、「7:2:1」の人材育成法のなかで「2」「1」に該当する、階層別研修や、体系的なDXや業務知識に関する社内大学(NextMileUniv.)の制度だ。

高橋社長の語る未来像は、テクノロジーと人間力が見事に調和した姿だった。そのビジョンが実現する頃、日本のIT業界は、どのような景色を見せてくれるのだろうか。

高橋忠郎/1976年、神奈川県横浜市生まれ。千葉大学を卒業後、1998年に金融システム開発会社に入社。資産運用システムサービス開発に従事した後、外資系保険会社傘下のシステム会社にて勤務。2004年に株式会社パワーソリューションズへ、創業者の佐藤に誘われて入社。2021年より代表取締役社長に就任。