※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

福岡を拠点とするKEYes株式会社は、企業の鍵の悩みを解決する「スマート南京錠」の管理サービスを提供する会社だ。同社の画期的なサービスは、大手を中心に多くの企業から支持されている。今回、代表取締役の野寄朋彦氏にサービスの魅力や強み、さらに同社が開発を進めているスマート南京錠の新機能などを聞いた。

ターゲットとする業界を変更したことで事業が軌道に乗る

ーー会社設立の経緯について聞かせてください。

野寄朋彦:
もともと私は、福岡市が手がけるスタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」に入居しており、その頃から現在の事業について考えていました。そして2018年12月、akibaco-tech株式会社を創業しました。会社名を現在の「KEYes株式会社」に変更したのは、2019年11月です。

今年で6年目を迎えますが「自分たちのビジネスを世の中に広げて、未来を変えていくんだ」という強い思いで会社を設立したことを今でも覚えています。

ーー創業してすぐに事業は軌道に乗りましたか。

野寄朋彦:
最初は不動産業界をターゲットに、賃貸マンションの空室物件に弊社の南京錠を使ってもらうことを想定していました。しかし、なかなか成約に結び付かず苦労しましたね。

そこで、ターゲットとする業界を変えた方が良いと思い、九州電力にオープンイノベーションでみつけてもらい、とんとん拍子で話が進みました。このときに、電力会社のような、南京錠を使って遠隔の施設を複数管理している会社にアプローチするのが良いのだと気づいたのです。

鍵を返す手間や紛失のリスクをなくす「スマート南京錠」サービスを提供

ーー改めて、貴社のサービス内容について教えてください。

野寄朋彦:
弊社では、スマホアプリで解錠できる「スマート南京錠」というサービスを提供しています。管理者は、解錠できる利用者や施錠の確認もできるので、鍵の閉め忘れ防止にも役に立てることも可能です。

このサービスは最近、鉄道業界のお客様にもよく利用されています。鉄道会社が使っている物理鍵は主要駅で管理しているため、鍵を使いたい職員は、毎回主要駅まで足を運ばなければいけません。スマート南京錠を使えば、物理鍵を使わずスマホで解錠できるので、職員たちが主要駅まで足を運ぶ手間を省くことができます。

また、特定の社員に倉庫の鍵などを預ける会社もありますが、鍵を預けられた社員は、紛失しないようにと強いプレッシャーを感じてしまいがちです。弊社のサービスを使えば、職員たちがこういったプレッシャーを感じずに済むのです。

そのほか、特定の人に鍵を開ける権限を付与したり、遠隔で鍵の受け渡しをしたりといったことも可能です。誰がいつどの鍵を開けたのか履歴も残るので、何かトラブルが起こったときはすぐに確認できますし、犯罪などの抑止力にもなるでしょう。

ーー貴社の強みはどのような点にありますか。

野寄朋彦:
質の高いエンジニアが在籍しており、スピード感ある対応ができる点が強みです。エンジニアに関しては、私の人脈から引っ張ってきた人材が多いです。時間やコストを考慮しながら、ビジネスの視点を持って提案してくれています。

SIMの活用やセキュリティレベルの拡大など、サービスの内容を広げて提供していく

ーー今後の注力テーマについて聞かせてください。

野寄朋彦:
1つは、新規取引先の開拓です。業界を変えるというよりは、すでに弊社のサービスを使ってくださっているお客様がいる業界内で、さらに展開していけたらと思っています。弊社は営業マンがまだ少ないので、代理店を通して特定の業界に対して販売したり、サービスの認知度を拡大したりしていくことも考えています。

もう1つが、スマート南京錠を今とは違う、新しい機能を追加して提供することです。たとえば、緊急時には南京錠が自ら通信を始めて、解錠するかしないかをユーザーに問う仕組みを持った「SIMが入った南京錠」の開発を考えています。

そのほか、「アプリ上でのユーザー登録が不要な南京錠」も開発中です。アプリにアカウントを登録しているユーザーが、第三者に暗証番号を教えれば、第三者はその暗証番号を入力するだけで鍵を開けられるという仕組みです。

ーー最後に、今後の展望をお願いします。

野寄朋彦:
弊社の当面の目標はIPOによる知名度の向上とそれに伴い、アジア、全世界に出ていく具体的な戦略の立案です。そのため、売り上げを急速に上げられる仕組みなど、会社の成長につながるものを探しながら事業を進めています。

会社を早くグロースさせ、上場させるのはもちろんのこと、そこで得るステータスや直接金融を礎に「鍵に関するソリューションが集結され、世界で一番存在感のある鍵に関しての会社」になるのが弊社の目標です。

編集後記

鍵の開け閉めは日々何気なく行っているため、うっかり閉め忘れたり、鍵の置き場所を忘れたりしてしまいがちだ。スマート南京錠はそうしたリスクを防ぎ、会社のセキュリティを守る大きな役割を果たしている。社会貢献をしながら、自身の技術力も高められるKEYes株式会社は、やりがいとスキルアップの両方を実現したい人にふさわしい会社だと感じた。

野寄朋彦/1976年生まれ。大分大学大学院工学研究科修了。九州大学へ招聘されマイナンバーカードの実証実験に学術研究員として参画し、ICカード関連システムの研究開発の統括を行う。九州大学学内の学生証・職員証のICカード関連システム及びサービスの導入・切り替えを運用面・技術面からサポート。2017年より株式会社コードキューでソフトウエア開発を担当。2018年12月、akibaco-tech株式会社(現KEYes株式会社)を共同創業し、2022年に代表取締役に就任。