![](https://storage.shachomeikan.jp/contents/3642/14a4805cb5a3f146a3b645ed916406b32d1819cc8e15cc5c8a00599ebe4573ff.png)
2021年に設立されたアカチセ株式会社。クラウド上で業務フローを作成・管理する自社サービス「ゲキカル」の運用をはじめ、事業展開や業務改善の支援、ワークショップの運営を通して、多彩な企業のDXを進めてきた。同社の代表取締役の齋藤祐介氏に、起業の経緯とサービスの強み、今後の展望についてうかがった。
「アセを、カチに」変える、「現場の解像度」を高めるサービスを創出
ーーご経歴をお話しいただけますか。
齋藤祐介:
東京大学大学院を卒業し、戦略コンサルティングファームに入社しました。学生ベンチャーを経験し、途上国の農業をはじめとする、未成熟な「レガシー産業」の発展に関心を持ったことから、より俯瞰的に社会や産業の動きについて学べる業界を選んだのです。
その後、東南アジアで農業のスタートアップを立ち上げる機会に恵まれ、カンボジアにて、収穫代行ビジネスを始めました。トラクターをシェアリングして農作業を代行する中で、全国各地の村長と交渉して労働者をマネジメントしたり、農村や村長に関するデータベースを構築したり、非常にマニアックなビジネスができたといえます。
フリーランスを経て、ご縁があって参画したITスタートアップでは、大手企業を対象としたSaaS事業の新規立ち上げに携わりました。物流・サプライチェーンのDX戦略を立てたほか、システム導入や営業、コンサルティングと幅広い知見を得られた時間です。
(※)SaaS事業:「Software as a Service」の略。インターネットを経由することで、ソフトウェアやアプリケーションを利用できるサービス。
ーー貴社を創業した経緯をお聞かせください。
齋藤祐介:
「もう一度自分でゼロから事業を作ってみたい」と思っていたことが一番の理由です。また、SaaS事業を通して痛感していた「すれ違いの不」を解消したい想いも強くありました。クライアントの既存業務に新たなシステムを導入する際に、上手くいかない大半のケースですれ違いが起こっています。
そこで、業務プロセスや業務の必要性をゼロベースで見直す業務改革(BPR)やデジタルを活用した変革(DX)のために重要な「業務フロー」に着目し、アカチセを創業しました。実家の製造業を間近で見てきた原体験も、経営方針に影響を与えました。新しい機械や工夫を取り入れることによって、製造現場が改善していくプロセスに心地良さを感じていたと同時に、今ではもっと効率化できる部分があったと考えています。
現在、弊社が掲げる「アセを、カチに。」というパーパスには、現場にいる人たちが主体となり、ワクワクしながら新しいことに取り組める機会を増やしたいという思いを込めました。
マネジメント力×生成AIが強みの業務フロークラウド「ゲキカル」
![](https://storage.shachomeikan.jp/contents/3642/bc0186d99518dd145cb129dc6619e38bd57ff2eabc77042a26e8d09adca269c9.png)
ーーサービス内容や企業の強みを教えてください。
齋藤祐介:
AI自動生成機能を活用し、業務フローをデジタル化する「ゲキカル」というクラウドサービスを提供しています。弊社の強みは、DXを目指すお客様の業務を「高解像度で理解できること」です。お客様と足並みを揃え、同じ目線に立ち、業務フローに良い変化をもたらすことが重要であると考え、プロジェクトマネジメント力を磨いています。
また、業務のデジタル化の一部に、リアルな「人」を入れる設計も得意としています。現在は商社をはじめ、物流関係や製造業、建設業界、電力サービスなどの、業務改革の支援もしているほか、社員教育や新規事業開発の研修も実施しています。
ヒアリング動画内の情報から業務フローを生成する技術は、Google社の「生成AI Innovation Awards」で優秀賞を受賞しました。もちろん、生成AIにデータを追加するだけでは全ての課題を解決できません。お客様の要望に沿って、優先度の高い機能や先進的な技術を積極的に実装しています。
ーーどのような体制でサービスを開発しているのでしょうか?
齋藤祐介:
コンサルや大手IT企業、スタートアップなど様々な経歴をもったメンバーが働いています。基本リモートで、副業・業務委託メンバーもいて、国籍や年齢も様々です。多様な経歴のメンバーがリモートで協業するために大切なことは、コンテキスト(文脈)の伝達と一致だと思っています。状況や課題をきちんと共有することで、限られた時間でも質の高いコミュニケーションが可能です。
業務フローにおいて、私の方針に適した共有ツールがなかったことも「ゲキカル」を開発した背景の一つかもしれません。採用活動に関しては、まだ創業期なので、営業・エンジニアなど創業メンバーとして背中を預けられる人材を求めています。
業務の全体像を把握する「DX」で大手企業にアプローチ
ーー今後の展望をお聞かせください。
齋藤祐介:
戦略から実行までをしなやかに連携し、単なるデジタル化ではなく、本質的で実用性を重視した「共創型DX」により、持続的な企業の成長を支援することが弊社のミッションです。物流・製造業・専門商社などのリアル産業でのDX支援・AI活用を、より現場を巻き込んだ形で支援できればと思っています。
プロダクトについては、「業務情報」データも当たり前のように経営で活用される未来を拓いていきたいと考えています。会計、人事、営業情報といった企業データは、それぞれ会計システムや人事評価システム、CRMが普及することで構造化され経営に役立てられてきました。
一方、業務フローは「構造化されていないデータ」です。細かいマニュアルは存在する一方で、経営層が全体像を統合・把握し、管理する場が整っている会社は少ないといえるでしょう。大きな組織ほど全体像を把握しづらいため、上場企業であっても、DXによって業務の標準化や可視化、プロセスの変更を実現できている会社はごく一部だと感じています。
すでにDX対策チームを立ち上げた企業様であっても、DXで「新しいことをやりたい」「既存事業に付加価値をつけたい」と考える大手企業様を中心にアプローチしていきたいと思います。弊社のサービスを体験していただき、継続的な支援につながると嬉しいです。
編集後記
業務フローを可視化した上でクラウド管理ができる「ゲキカル」。齋藤氏は、競合となる類似サービスがまだ存在しない現状を「独壇場」とは判断せず、「市場の確立にチャレンジしている段階」だと冷静に語った。一つの大手企業がDXを進めるたび、業界全体に大きなインパクトを与えるとしたら、「ゲキカル」が浸透した世の中は消費者の目にも明らかな革新を遂げているはずだ。
![](https://storage.shachomeikan.jp/contents/3642/ad8c93352cd86bf62ca0f40b48773194273a60b96c8747a667f82aee92278a51.jpg)
齋藤祐介/1987年、東京都生まれ。東京大学大学院を卒業後、戦略コンサルファームに入社。東南アジアで農業・食関連の事業を展開し、Forbes誌「30 Under 30」とEchelone「Top100Startup」に選出される。その後、ラクスル株式会社に参画。SaaS事業を新規立ち上げ、顧客である大手企業のDX・SCM改革を推進。2021年、アカチセ株式会社を創業。オペレーションが複雑な産業のDX推進支援事業と、AI-SaaS事業(生成AI業務フロークラウド「ゲキカル」)を展開。