
株式会社サピエントは、施設運営、イベント運営、人材サービス、人材育成・研修の4つの事業を柱とする会社だ。多くの企業が苦戦を強いられたコロナ禍でも、質の高いサービスと確かな感染防止対策で多数の依頼を獲得するなど、業界での信頼は厚い。
代表取締役社長の湯川智子氏は、23歳という若さで初めて起業し、その後も社長として幅広く経験を積み企業と従業員の成長のために挑戦を続ける。湯川氏にこれまでの経歴や、同社の強さについてうかがった。
信頼されるためには、自分が先に相手に役に立つことが大切
ーー起業の経緯について聞かせてください。
湯川智子:
私が初めて起業したのは、23歳のときです。短大を卒業して、自動車メーカーの宣伝部に勤めていましたが、同じ会社で働いていた同期の女性とともに「この会社で学んだことを活かして、5年間だけ自分たちで会社を経営しよう」と、イベント・コンベンション専門の人材サービス会社を最初に起業しました。
当初は、5年経ったら結婚や海外移住など、別の道に進もうと思っていたのです。しかし、私もパートナーも一度始めたら一生懸命になってしまう性格で、事業に本気で向き合い続けた結果、5年で会社経営を辞めるという話はなくなりました。その後、いくつかの起業を経験し、株式会社サピエントを創業したのは2012年のことです。
ーー会社を創業してから、どのような考え方を大切にしてきましたか。
湯川智子:
「強くて優しい信頼企業」をスローガンに、いつも信頼を大切にしてきました。お客様や会社の仲間、弊社のサービスに登録してくれている方々など、関わるすべての人との信頼関係を重視しています。
仕事をする上では、相手の話をしっかりと聞くことを大切にするよう、指導をしてきました。相手に適切な提案をするためには、相手が一体何で困っているのかをしっかりと話を聞く必要がありますからね。また、私が社員によく言っているのが、「貸しは自分からつくりなさい」ということです。相手が何でお困りなのかを見つけて、自ら相手の役に立つこと。それが信頼関係を創る大切な第一歩です。
女性が多い会社だからこそ「お互い様精神」でサポートし合っている
ーー貴社の強みについて教えてください。
湯川智子:
強みは、サービスの質に何よりもこだわり、事業を長く継続してきたことです。活動のクオリティを担保するために、教育体制もしっかりと整えてきました。弊社はイベントや施設の運営に伴い、ハイクラス人材をご提案していますが、クオリティを担保するには教育体制やリスクヘッジを可能にする体制など、高付加価値となることをお客様にはご理解していただき取り組んできました。
ーー女性社員が多いとのことですが、女性社会ならではの特徴はありますか。
湯川智子:
女性が多いと出産や育児、介護を仕事と同時に担うケースが多いです。そういったライフイベントにも対応できるよう、社員たちがお互い様精神でサポートし合っていることが特徴です。会社を休んでも肩身は全く狭くありませんし、働きやすい環境だからこそ、その分付加価値の高い仕事をしようという考え方が社内で浸透しています。
人材育成を生業とする会社だからこそ、自社でも積極的に人材を育てていきたい

ーー採用についてはどのように考えていますか。
湯川智子:
弊社はご紹介が多いため、一般の求人誌では採用できないような素晴らしい人材を採用できています。ただ、昨今は時代に合った新しい知識を取り入れる必要がありますから、新卒などの若い人材も積極的に採用したいと思っています。弊社の仕事はコミュニケーション能力を高められるのが魅力です。細かいところにまで目が届くことが必須の仕事なので、気配りや心配りといった礼節も身につきます。
このようなスキルが身につくのも、教育体制がしっかりしているからこそ。私たちは人材育成を生業としている会社なので、今後は新卒のメンバーも受け入れて、大切に育成していきたいと考えています。また、弊社には足の引っ張り合いなどはしない、さっぱりとした気質の人が多いです。そのため、そのような雰囲気に合うような、自分にも他人にも嘘をつかない心の綺麗な人に来ていただきたいですね。
ーー最後に、今後の注力テーマについて聞かせてください。
湯川智子:
注力テーマの1つは、地域への貢献です。私たちはイベントやコンベンションなど、人の賑わいをつくる仕事をしてきたので、このノウハウを活かして様々な場所の地方創生に貢献したいと考えています。
もう1つが、営業の体制強化です。今までは紹介やリピートでご発注を頂くことが多く、自ら営業することはほとんどありませんでした。それも強みだと思っていますが、今後はより積極的に仕事をしていくために、営業部を新たにつくることにも注力していきたいと思っています。
今後はサイエンス分野のハイクラス人材も検討していきますが、このビジョンはグループ企業である(株)CO2資源化研究所とも協力して実現していく予定です。
編集後記
湯川社長からは、顧客や社員への思いやりを忘れない優しさだけでなく、会社を成長させようと前に進み続ける気概も感じられた。日本にはまだまだ女性経営者が少なく、女性の起業が当たり前とはいえない。そのような時代の中でもいつも笑顔で会社を興して挑戦する同氏の姿を見て、勇気を与えられる女性は多いだろう。

湯川智子/上智大学短期大学部卒。自動車メーカーの宣伝部販促課を経て、1982年に人材サービス事業を開始。2012年、株式会社サピエントを創業し、代表取締役社長に就任。