※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

営業担当の商談説明を録画した動画を、顧客の選択肢に合わせて自動再生することで、営業の個別説明にかかるリソースを減らすSaaSサービスを開発した、注目のスタートアップ企業がある。株式会社LOOV(ルーブ)だ。

同社の代表取締役である内田雅人氏は、学生時代から起業という目的を持ち、ITベンチャーで確かな業績を積んできた情熱のある人物だ。内田社長に創業までの経歴や起業のきっかけ、LOOVが開発したツールの特徴などをうかがった。

ITのベンチャーでの経験や気づきを糧に、営業の常識を変えるために創業

ーー内田社長の経歴をお聞かせください。

内田雅人:
私は学生の頃から起業を目標にしており、社会人になってからは、起業に必要な知識や技術、経験などを積もうと、2010年にITメディアやITソリューションなどを手掛けるベンチャー企業のイノベーション社に入社しました。

同社では、新規事業の立ち上げや営業支援ツールを活用した営業効率化、新規顧客獲得のための営業戦略の立案など、多岐にわたる業務に携わりました。中でも事業責任者を務めたIT製品比較サイト「ITトレンド」事業は急成長し、IPOに貢献するほどの成功を収めたのです。

その後、同社の役員を経て取締役に就任しました。経営者により近いポジションに立ったことで、経営者への思いが一層強まり、2022年に同社を退職してLOOVを創業しました。

ーー起業を決めたきっかけは何ですか?

内田雅人:
起業のきっかけは、営業支援の分野を経験したときに感じた、デジタルリテラシーや、業務の効率の低さを、自らの力で解決したいと感じたことです。

ちょうど同時期に高校時代からの友人であり、現COOの高井健司と再会し、意気投合したことも大きな要因です。彼と「非効率な営業の常識を変えたい」という課題感が一致し、共同で創業することを決断しました。

デジタルの力で営業に新たなスタイルをもたらすサービス「LOOV」

ーー貴社の事業内容を教えてください。

内田雅人:
営業活動をデジタル化し、効率化を実現するためのBtoB向けツールの開発と販売を行っています。主力製品は、次世代型営業DX SaaS「LOOV(ルーブ)」です。

LOOVは、優秀な営業担当者によるプレゼンテーション動画を複製し、顧客がニーズに近い選択肢を選ぶことで、最適な提案内容の動画が再生されます。つまり、社員が直接対応することなく、対面営業に近い体験を再現できるわけです。

さらに、顧客が選んだ選択肢や視聴した動画はトラッキングができるため、商談前の情報収集を効率化でき、初回商談時に顧客理解を深めた状態で臨むことができます。

ーー貴社独自の強みは何でしょうか?

内田雅人:
弊社の強みは、LOOVという今までになかったツールで、市場に独自のポジションを獲得できている点にあります。すでに1年半で120社以上の顧客獲得に成功しており、弊社が築いた新たな市場での地位を強固にしています。

また、LOOV自体の強みで特筆すべきは、顧客自身が動画を作成できることです。ビジネススピードが加速を続ける現在において、自社でコンテンツ作成や管理ができることは大きなメリットになります。動画の更新や修正に追加コストがかからないので、何度でもトライ&エラーが可能です。

「LOOV」から得た可能性をさらに広げるために必要なこととは

ーー今後、どのようなテーマに注力していきたいですか?

内田雅人:
新規取引先の開拓、既存顧客との取引深耕、人材採用の強化の3つのテーマに注力していきたいですね。まず優先すべきは、LOOVの認知度を高めるための新規取引先の開拓です。既存顧客からの紹介やアウトバウンド営業、SNSやオンライン広告など、複数のチャネルを活用して顧客基盤を拡大していきます。

既存顧客との取引深耕は、顧客との長期的な関係構築に欠かせません。今後は、録画データをベースに、リアルタイムで対応可能な「デジタルヒューマン」の開発も見込んでいるため、顧客との関係がより重要になっていくでしょう。

そして人材採用の強化においては、事業成長を支える優秀な人材を適切なスピード感で採用することが重要だと理解しています。営業とプロダクト開発という両輪をバランスよく回せる組織体制を構築し、事業成長を加速させていきます。

ーー今後の展望と、成長に向けて求める人材像をお聞かせください。

内田雅人:
今後は、LOOVの進化を加速させ、セールス領域での存在感をさらに強めるとともに、カスタマーサクセスや人材管理といった新分野へ挑戦していきたいです。さまざまな領域において、AIやデータ活用による業務効率化を推進し、デジタル時代に最適化されたソリューションを提供できる会社への成長を目指します。

そのために必要としている人材は、SaaSやスタートアップでの経験と、業務フローやオペレーションの知見、そして、自立的な思考と固定観念に縛られない柔軟性を持っている方です。LOOVから得たノウハウは応用幅が広いと感じています。この可能性の種を一緒に育てていける方と共に、効率化によるより良い未来を描いていきたいです。

編集後記

「LOOV」というサービスには、営業手法自体を変える革新性が内包されている。効率化を実現しつつ、顧客が求める情報にリーチしていける仕組みは、デジタルマーケティングにおいて重視されている「One to One」を体現したものだ。今後、内田社長がLOOVで得た知見をどう進化させていくのか、同社のツールが多くの企業にとって欠かせない存在になる未来が楽しみだ。

内田雅人/2010年株式会社イノベーション入社。IT製品比較サイト「ITトレンド」の事業責任者やSaaSプロダクト事業、プラットフォームサービス事業の立上げなどに携わる。同社の執行役員及び子会社の取締役を歴任し、2016年にはマザーズへのIPOを牽引。2022年に株式会社LOOVを共同創業し、現在に至る。