機能性とデザイン性を両立させた靴ブランドとして、新たな地位を築いている株式会社PRAIA。「履きごこちという名のしあわせを、足もとに。」というコンセプトのもと、ハイブランドのような美しさと抜群の履きごこちを追求している。
さらに、ブラジルを皮切りにグローバル展開も視野に入れ、日本一の靴ブランドを目指す。野球選手やプロゴルファーになる夢を諦めた先に、たどりついたのは靴ビジネスだった。代表取締役の松井茂大氏にブランドの強みや今後の展望についてお話をうかがった。
スポーツキャリアから靴ビジネスへの転身
ーーこれまでのキャリアについてお聞かせください。
松井茂大:
私は学生時代はずっと野球をやっており、大学は野球推薦で進学しましたが、3年生で中退してアメリカに留学しました。アメリカではゴルフスクールに入り、一時はゴルフのミニツアーを回るプレイヤーとして活動していました。大学中退後はプロゴルファーを目指しながら、やりたいことだけをやる自由な生活を10年ほど続けていたのですが、30歳頃にプロになることに限界を感じて、新たな道を模索しはじめたのです。
ーー靴のビジネスに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか。
松井茂大:
私の父が靴の工場を経営しており、OEMの仕事をしていたことがきっかけです。父の仕事ぶりを見て興味を持ち、自分にもやらせてほしいと頼みました。「これは面白いビジネスになりそうだ」と思い、友人と一緒にネットでの販売を始めてみたのがビジネスの始まりです。
実際に自分たちで販売してみると、少しずつ靴が売れ始めました。口コミで履きやすいという評判をいただいたので、販売環境を整えてブランディングしたらもっと売れるのではないかと考え、銀行からお金を借りて自由が丘に店舗をオープンしたのです。
機能性とデザイン性の融合、PRAIAが目指す靴づくり
ーー貴社の事業内容について教えてください。
松井茂大:
弊社は、履きごこちの良さとデザイン性を両立させた婦人靴のブランディングと販売を手がけています。特に注力しているのが、華やかなデザインと歩きやすさを両立させたオリジナルブランド「HILLS AVENUE(ヒルズアヴェニュー)」の企画・運営です。
機能性を重視するとデザイン性がおろそかになりがちですが、弊社のブランドは見た目の美しさにもこだわっています。弊社のリピーターになってくださるお客様が誇れるようなブランドを展開していきたいですね。
ーー貴社ブランドのこだわりをお聞かせください。
松井茂大:
弊社ブランドの「HILLS AVENUE」は履きごこちの良さと美しさを両立した靴づくりにこだわっています。お客様からは「履きやすい」という評価をいただいていますが、それだけでは満足していません。普段、いろいろな靴を履く人でも疲れたときには、つい「HILLS AVENUE」を選んでしまう。そんなポジションを確立したいのです。
そうした弊社の魅力をより多くのお客様に伝えるため、私自身がヨーロッパを始めとする海外の靴店を視察し、魅力的な店舗づくりや効果的な商品展示方法を研究しています。日本と比較してみると、ディスプレイ棚や照明一つとっても新しい発見があるのです。これらの知見を活かし、日本国内の店舗でもお客様により魅力的な空間と買い物体験を提供できるよう努めています。
日本一の靴ブランドを目指して、ブラジルを起点に世界へ踏み出す
ーー注力しているテーマと、今後の事業展開について教えてください。
松井茂大:
自社ECサイトの運営に注力しています。以前は外部モールでも販売していましたが、「HILLS AVENUE」の世界観や魅力を伝えるためには、自社サイトの方が適していると考えたからです。結果、現在のECサイトでの売上は全体の6割ほどを占めています。
実店舗については大阪と銀座に2店舗を構えており、大阪店は最近オープンしたばかりで、銀座店は7年目を迎えました。各店舗で異なる雰囲気を出しつつ、「HILLS AVENUE」の魅力を伝える場として大切にしています。
また、現在、ブラジルへの展開も考えています。ブラジルを選んだ理由は個人的なつながりもありますが、ファッションへの関心が高いうえに親日家が多く、日本のブランドと親和性が高いと感じたからです。
また、経済大国として成長を続けており、世界10位かつ南米最大のGDPを誇っています。ブラジルでの成功を足がかりに、将来的には他の国々への展開も視野に入れているので、その地域に合うアプローチができるように取り組んでいきます。
ーー将来のビジョンについてお聞かせください。
松井茂大:
靴業界で日本一のブランドになることです。私たちが目指しているのは、数字の達成ではなく、ブランドとしての価値を高めることです。そのため、具体的な数値目標をあえて設定していません。というのも、ブランディングと価値の向上に集中すれば、おのずと結果はついてくると考えているからです。
「HILLS AVENUE」の良さを世界中の人に体感してもらいたい。そのためには、商品開発はもちろん、ブランディングや情報発信が重要です。嬉しいことに社内の雰囲気はとても良好で、みんなが同じ方向を向いて頑張っており、チームとして動くことが可能になっています。このいい状態を維持しながら、さらなる成長を目指していきたいですね。
編集後記
スポーツ選手から靴ブランドの経営者へ。一見かけ離れた経歴だが、常に挑戦し続ける姿勢は変わらない。「履きやすくておしゃれ」という、相反する要素の融合に挑む同社。その姿勢はまさに、松井氏のチャレンジ精神そのものを反映しているようだ。ブラジル展開の話では、そのスケールの大きさに驚いた。その大胆な発想こそが、同社の未来を切り拓いていくのだろう。
松井茂大/1975年大阪生まれ。大学中退後、プロゴルファーを目指し渡米。帰国後別の道を模索しその後独立。2008年、株式会社ヒルズアヴェニューを設立。現在は株式会社PRAIAに商号を変更し、同社の代表取締役として靴のオリジナルブランド「HILLS AVENUE」を国内外に向け展開中。