※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

パン粉や化粧品、テーブルの焼き付け、クラフトコーラの原料など、私たちの身近にある商品の製造過程で使われている粉砕機。槇野産業株式会社は、創業から90年以上続く老舗の粉砕機メーカーだ。家業継承時の思いや、あらゆる業界で需要があるからこその強み、働く上での魅力など、代表取締役社長の槇野雄平氏にうかがった。

紆余曲折を経て家業の道へ。先々代の葬儀をきっかけに抱いた理想の経営者像

ーーまずは家業に入るまでの経歴と、社長就任までの経緯をお聞かせください。

槇野雄平:
大学では社会学を専攻していたのですが、在学中にお寺の娘さんと出会ったことから僧侶になることを決意し、仏教学部に入り直しました。しかし、最終的には家業である槇野産業に入社することを選んだのです。

私は機械の知識がなかったため、入社後は総務部で経理を担当することになりました。その後、大学時代にホームページ制作の経験があったことから、広報も担当するようになりました。

日々仕事に打ち込む中、就任する年の2月頃に先代である父から「4月になったらお前を社長にする」と告げられたのです。急なことで最初は驚きましたが、父も70歳を過ぎていたため、世代交代には良い時期だと考え、社長就任を決意しました。

ーー社長就任時の思いをお聞かせいただけますか。

槇野雄平:
社員が退職するときに「槇野産業で働けて良かった」と思ってもらえる会社にしようと決めていましたね。こうした思いを持つようになったのは、先々代である祖父の葬儀に参列した社員たちの様子が強く印象に残っていたからです。彼らは祖父の亡骸に向かって「ありがとうございました」と涙を流しながら伝えていました。

その姿から、私も祖父のような経営者になりたいと思ったのです。それと同時に、取引先様からも「槇野産業さんと関われて良かった」と言っていただける企業にしようと決意しました。

90年以上かけて培った幅広いニーズに応える対応力が強み

ーー改めて貴社の歴史と事業内容について教えていただけますか。

槇野雄平:
弊社は大正15年の創業以来、90年以上にわたって粉砕機の設計・製造を手がけてきました。戦前は飼料をつくるため穀物を粉砕する機械を、戦後はパンを製造するため玄米などを砕く機械を製造していました。

現在は食品以外にもプラスチックや、化粧品、消火器の原料の加工など、さまざまな分野で使用されています。最近では環境の負荷を低減するために、少量の木材を混ぜたウッドプラスチックの加工にも使われています。

ーー貴社の強みについてお聞かせください。

槇野雄平:
これまで積み上げてきた豊富な実績と、汎用性の高さが大きな強みです。実際に曾祖父の代には、衝撃力で砕けるものであれば何でも対応できる「万能粉砕機」として売り出していました。

現在もコピー機のトナーや日焼け止めに含まれる金属粉など、私たちの身の回りにある商品の製造に深く関わっています。このようにあえて業界をしぼらず、幅広い企業様とお付き合いしています。そのためコロナ禍でも外食産業向けの需要が減少した一方で、家庭用調味料などの需要が伸び、業績を維持できました。

また、大手のメーカー様だけでなく、個人店やお寺などへも弊社の製品を納入しています。たとえば街中のケーキ屋さんでは、デコレーション用の飾りをつくる際に弊社の粉砕機が使われています。

その他にも漢方薬をつくる際に薬草を砕いたり、遺骨を粉砕したりするなど、用途は多岐にわたります。個体を砕いて細かくすることに関しては、大半は弊社で対応できますね。万が一自社で対応できない場合は他社の製品を提案し、最後まで責任を持つことを心がけています。

顧客の立場になって考え、相手のニーズを汲み取る行動を徹底

ーー仕事をする上で大切にしている価値観をお聞かせください。

槇野雄平:
相手の気持ちになり、どうしたら喜んでもらえるかを意識していますね。たとえば事務所の掃除にしても、お客様に気持ち良く過ごしていただけるよう気持ちを込めて作業しています。

また、機械を納入する際も図面通りにつくるだけでなく、気になる部分は自主的に改善するよう心がけていますね。お客様からご相談いただいた際も、実際に先方の工場に出向き、積極的な提案活動を行っています。このように相手の立場に立って考え、お客様が期待する以上の価値を提供しています。

ーー新規取引先の開拓についてはいかがですか。

槇野雄平:
年に3回ほど展示会に出展しているほか、力を入れているのが、YouTubeなどのSNSやメールマガジンでの情報発信です。YouTubeでは製品の使い方を説明し、実際に使うときのイメージをしやすいよう工夫しています。また、この業界は横のつながりが強く、他社から紹介いただけるケースもありますね。

あらゆる業界に携われ、次々とチャレンジできる職場環境

ーー今後の展望についてお聞かせください。

槇野雄平:
現在、年間の売上は6〜7億円ほどですが、9億円程度まで増やすことを目標にしています。従業員数は、現在の約30人から40人程度までには増やしたいですね。このくらいが私の目が行き届く範囲だと考えています。極端な規模の拡大はせず、従業員の給与を上げ、設備投資ができるくらいの収益を得られれば十分だと考えています。

ーー最後に読者の方々へメッセージをお願いします。

槇野雄平:
協調性があり、果敢に挑戦できる人材を求めています。現在は特に技術設計者とセールスエンジニアの採用を強化しています。大手企業と比べると、弊社のような中小企業は社会的な影響力が弱いと思われがちです。

しかし、大手企業のように業務上の制約が少なく、柔軟にチャレンジできるのが大きなメリットです。同じ作業をコツコツ続けるのが苦手な方は、中小企業を選択肢に入れていただきたいですね。特に弊社は食品分野から最先端素材まで、幅広い分野に関われます。好奇心旺盛な方や、常にチャレンジできる職場で働きたいという方は、ぜひ弊社にお越しください。

編集後記

食品や家具、化粧品、薬剤など多岐にわたる商品の製造に関わり、遺骨の粉砕などにも使われる粉砕機。まさに同社の製品は、私たちの暮らしに欠かせない必要不可欠なものなのだと感じた。槇野産業株式会社は、これからも顧客のニーズを汲み取った提案をし、あらゆる業界のものづくりを支えていく。

槇野雄平/1979年千葉県生まれ。大正大学卒業。別業種を経て2008年槇野産業株式会社に入社し、2022年に代表取締役社長に就任。2024年4月から葛飾区内の経営者勉強会ものコト100会長として活動を続けている。