
不動産業界は経済の変動や政策の影響を受けやすく、リーマン・ショックのような金融危機時には多くの企業が打撃を受けた。さらに、近年では少子高齢化や都市集中化の進行によって需要の変動が激しく、競争が激化しているが、一方で投資物件の需要は伸び続けている状況だ。
そんな激動の不動産業界で、独自のオフバランス(※)・スキームを活用し、急成長を遂げているのが株式会社グッドコムアセットだ。今回は、代表取締役社長の長嶋義和氏から創業までの道のりや成長戦略、成功の秘密をうかがった。
(※)オフバランス:資産や取引などが事業主体の財務諸表に記載されない状態のこと。資産効率の改善などが期待できるため、近年オフバランス化を図る企業が増加している。
長年培った営業力を武器に夢だった起業を実現する
ーー創業への思いをどのように実現しましたか。
長嶋義和:
新卒で株式会社トーシンワールド(現:株式会社トーシンパートナーズ)に入社し、不動産営業職として長年従事しました。社員教育など幅広い業務に携わる機会を得たことは貴重な財産です。
試行錯誤を重ねながら会社のために全力を尽くして働いていましたが、学生時代から抱いていた「いつか起業したい」という思いを実現するため、退職を決意いたしました。社会人として多くの経験を積んだことで、より広い視野を持って起業に向けた行動が取れたと感じています。結果として、これまでの選択に後悔はありません。
ーー起業後はどのように事業展開したのですか。
長嶋義和:
ワンルームマンションの一室で、2〜3名でのスタートでした。不動産デベロッパーから一部屋ずつ仕入れ、それを販売していくスタイルで実績を積み重ねました。販売力には自信があったため、徐々に売り上げを伸ばすことができましたね。
転機となったのは2008年に起きたリーマン・ショックです。この時期、不動産業界では多くの企業が打撃を受け、「東京23区内にマンションがあるのに売れる会社がない」という異常事態でした。
そこで弊社ではマンションを1棟買い上げ、「GENOVIA(ジェノヴィア)」というブランド名をつけて、1部屋ずつ個人投資家に販売する手法をとりました。この戦略が奏功し、設立当初から掲げていた株式上場という目標に向けて大きく前進したのです。
独自のオフバランス・スキームとは?

ーー改めて、貴社の事業内容や強みを教えてください。
長嶋義和:
グループの主力事業は、東京23区を中心に1都3県で展開している、自社ブランド「GENOVIA」シリーズの投資用新築マンションの企画、開発、販売および管理です。法人に販売する「ホールセール」、国内外の個人投資家の方に販売する「リテールセールス」、建物管理と賃貸管理、家賃債務保証を行う「リアルエステートマネジメント」、IPOやIRのコンサルティング等の「その他」の4つの事業を展開しています。
弊社は、独自のオフバランス・スキームを活用していることが強みの一つであり、これによって借入をせず手付金のみで仕入れが可能です。
ーー「オフバランス・スキーム」の仕組みを詳しくお聞かせください。
長嶋義和:
弊社独自の「オフバランス・スキーム」は、まず建設会社に土地を取得してもらい、弊社と仕入契約を締結します。この際、弊社は手付金のみを支払うことで仕入れを完了します。その結果、マンションが竣工し引き渡しを受けるまで、土地代金・建築代金・借入金利など、開発に関わる費用を一切負担せずに済みます。
この仕組みにより、資金回収期間の短縮と高い資金効率の実現が可能となるのです。また、健全な財務体質を維持しながら多くの仕入れを行えるため、業績拡大のスピードを他社よりも加速させ、さらなる成長を目指せます。
社員主体の成長戦略と新たな挑戦
ーー貴社ではどのような社員教育をしていますか。
長嶋義和:
社員それぞれのレベルに応じた研修を適宜実施しています。たとえば、部長クラス向けの研修では外部コーチを起用し、問題解決に集中する時間を設けています。具体的には、問題への対処方法や部下とのコミュニケーションの取り方を、多角的に考え実行できる人材の育成を目指しています。
また、現状に満足することなく成長してほしいとの思いから、社員には新しい業務を積極的に任せる方針です。これまでは、私自身が進むべき道をある程度示してきましたが、今後は社員から新たな提案やアイデアが上がってくることを期待しています。
職場環境や評価制度の整備は進んでおり、今後は社員一人ひとりの行動が鍵となります。責任感や使命感を持ち、会社を支える存在となる社員が増えることを願っています。
ーー今後の展望などお聞かせください。
長嶋義和:
弊社は今年で20周年を迎えました。資本金300万円から始めた会社も、ここまで成長させることができ、この先10年で日本の不動産トップ10も狙える位置まできたと思っています。まずは、2030年には売上高6000億円を目指して経営していきます。
弊社ブランドのGENOVIAとは「GENE(遺伝子)」と「VIA(Very Important Apartment)」の2語を掛け合わせた造語で、私たちが受け継いでいきたい思いを込めています。ヨーロッパでは築100年を超える建築物が珍しくなく、ロンドンやパリでは「住まい」そのものが人々に親しまれ、大切にされています。
私たちが目指すのは、日本でもそのように長く愛され続けるマンションの提供です。日本を代表する企業となるべく、社員一丸となって邁進していきます。
編集後記
不動産業界の厳しい環境下でも独自の戦略で成長を遂げる企業の底力に触れた。リーマン・ショックという厳しい局面を乗り越え、新たな販売手法を確立してきた姿勢が強く印象に残っている。
社員教育やボトムアップの経営方針など、長嶋社長の理念がしっかりと根付いている点も、その強さの要因だと理解できた。業界トップ10入りも現実味を帯びてきた株式会社グッドコムアセットの未来への期待が一層高まる。

長嶋義和/1969年千葉県生まれ。株式会社トーシンワールド(現:株式会社トーシンパートナーズ)に入社し、同社の取締役営業部長を経験。2005年に株式会社グッドコムアセットを設立し、代表取締役社長に就任。会社設立当初からの目標であった株式上場を2016年に達成し、現在はプライム市場に上場している。