
企業や個人の税務・会計に関する幅広いニーズに応える専門家である「税理士」。なかでも相続税や贈与税、事業承継などの資産税分野では、高度な専門知識と実務経験が求められる。高齢化、そして後継者不足などが社会問題となる中、多くの資産家や中小企業経営者が、これらの問題を解決するために信頼できる税理士の助けを必要としている。
そうした中、わずか11年で全国に11拠点を展開するまでに成長を遂げたアイユーコンサルティンググループの代表である岩永悠氏に、創業までの経緯や事業展開についてうかがった。
「社長になる」という夢を叶えるまで
ーー創業までの道のりを教えてください。
岩永悠:
当初から「税理士」を目指していたわけではなく、独立するための手段として税理士資格の取得を目指した、というのが実際のところです。事業を営んだ経験がある父親に幼い頃から「大きくなったら社長になるんだよ」と言われて育ったせいか、その言葉に違和感を覚えることはありませんでした。今振り返ってみると、「人の上に立つ人間になれ」という指南だったのだと思います。
中学卒業後は商業高校に進み、そのまま就職するものだと漠然と考えていたのですが、周囲からの「社長になりたいなら大学へ行け」という勧めもあり、高校生の頃は塾と部活漬けの日々を過ごしました。大学入学後は受験の反動でしばらく遊んでばかりの生活に。
しかし1年生も終わりに近づいた頃、同じ学部の先輩たちが地方銀行に就職していく姿を見て「このままでは社長になれない」とハッとし、図書館で独立しやすい職種を調べたところ「税理士」と書かれていたのを見て、すぐに資格取得に向けた勉強をスタートしました。
大学卒業後は最短での税理士資格取得を目指すべく大学院へ進学。奨学金とアルバイトで生計を立てながら残りの科目の勉強を続け、大学院修了時には税理士試験を終えることができました。その後、数社税理士事務所で経験を積み、2013年に岩永悠税理士事務所として独立。2015年には法人化し、税理士法人アイユーコンサルティングを設立しました。
ーー設立後は、どのように事業展開したのですか?
岩永悠:
付き合いのあった金融機関や企業などとのネットワークを活用しながら、地道なあいさつ回りや丁稚奉公を行うことから始めました。セミナー資料の作成なども無料で積極的に引き受け、お客様に有益な情報を提供し続けることで信頼を得られるように努めた結果、徐々に案件をご紹介いただくようになっていきました。
専門性を武器に地方から面展開を加速

ーー貴社の事業内容についてお聞かせください。
岩永悠:
弊社は、資産税案件(相続税・贈与税・事業承継・組織再編など)を専門とする「税理士法人アイユーコンサルティング」を母体とするコンサルティンググループです。全国に11拠点・総勢約160名体制で、中小企業や資産家を対象に専門性の高いサービスを提供しています。
ーー貴社の強みはどのような点にあるとお考えですか?
岩永悠:
「相続や事業承継といった専門性の高い案件に対応できる」点が弊社の大きな強みです。特に創業当初は、九州地区で相続・事業承継のライバルになり得たのは大手税理士法人ぐらいでした。
「資産税」という分野は、一般的な顧問業務とは大きく異なります。業務内容はもちろん、ビジネスモデルも顧問業務はストックビジネスで安定的な一方で、資産税案件はスポット業務。大手はともかく、コンスタントに業務を獲得していくこと自体が困難なため、この分野に特化した税理士事務所自体数はそう多くありません。
それでも潜在的な需要はあるはずだという確信と、これまでに培ってきたノウハウの自信から、地域密着で専門性の高い分野に特化し、地道な営業活動を続けたことで、提携先を開拓できたのだと思います。
ーー創業から現在までで苦労したことはありますか。
岩永悠:
独立してから丸11年が経ちますが、不思議なことに大変だった、苦労したと思うことは特にありません。もともと「創業10年で売上4億円、スタッフ30名」という目標を掲げていましたが、これは想定よりもかなり早い段階で達成できました。そこで目標を「創業10年で売上10億円、スタッフ100名」と上方修正しましたが、こちらも無事に達成しています。
振り返れば、大変な時期もあったのかもしれませんが、「ピンチはチャンス」と前向きに捉え、その都度ベストを尽くしてきたので、結果的には楽しい思い出になっているのかもしれません。新しい課題に常に前向きに取り組み、充実感を持ちながら歩んできた11年だったと思います。
メンバーとともに歩む、持続可能な成長の道
ーー経営者としての信念やこだわりについて教えてください。
岩永悠:
経営者として何よりも重要なのは、経営者自身が常に率先して、真摯な姿勢で仕事と向き合うことです。そのために、「歩みを止めずにチャレンジし続ける姿勢」を自らの行動で示しているつもりです。
私自身が熱量を持って突き進んでいれば、メンバーがその姿勢に共感し、ついてきてくれると信じています。時には税理士の枠を超えた新しい事業の挑戦もありますし、未経験な領域故に難しいと感じる場面もありますが、私自身が情熱を持ち続け、その姿勢をメンバーに伝えていくことが大事なのだと思います。
そして何より、メンバー全員が最大限に力を発揮できる環境や仕事を用意することは、経営者としての重要な役割だと考えています。たとえば日々の業務で専門性を高め、新たな業務にチャレンジできるようになることで、仕事の楽しさややりがい、さらには自身の成長の実感につながるでしょう。
また、働きやすさの点では、フルフレックスや時短社員、完全在宅ワークの導入など、柔軟な働き方を実現しています。そのほかに、税理士資格取得のための各種支援体制や、多種多様な福利厚生も豊富にそろえており、メンバーのライフスタイルや価値観を尊重した労働環境の整備に努めています。
働く仲間が前向きに、そして安心して働ける職場環境を整え、個の成長機会を提供していくことが、結果として長期的な組織の成長につながると信じています。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
岩永悠:
今後は大阪以西の新幹線沿いの主要都市を中心に拠点展開を計画しています。さらに既存事業の横展開と並行して、新たな分野への挑戦として、富裕層・準富裕層の海外進出のサポートサービス「海外移住コンシェルジュ」や、相続税申告のシステム化なども本格始動していきます。
これまで培った弊社のノウハウを活用し、より革新的な形で社会に貢献できることを、私自身非常に楽しみにしています。これらの挑戦を通じて、これまで以上に付加価値の高いサービスを提供していきたいですね。
ーー最後に、読者の方々へのメッセージをお願いします。
岩永悠:
次世代を担う皆さんは、目先の給与にとらわれず、自分が本当にやりたいことや挑戦したいことに全力で向き合ってください。与えられた仕事をこなすだけでは、大きな成功は掴めません。自分がやりたいことをしっかりと見極めたうえで、将来の自分の姿を思い描き、この企業で10年後どのように成長できるのかを考え、就職先を選んでほしいと思います。
私たちのグループでは、失敗を恐れずにチャレンジしたい方を歓迎します。新しいことにトライし、自分自身をもっと成長させたいという意欲を持った皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。
編集後記
地域に根ざし、高い専門性を武器に市場を切り開いてきたアイユーコンサルティンググループ。その躍進的な成長を支えるのは、岩永代表の「歩みを止めずに挑戦を続ける」という信念だ。この熱意は、社員一人ひとりに確実に伝わり、成長意欲とモチベーションを引き出している。
手厚い福利厚生や職場環境の充実によって、働く喜びを感じられる職場を実現している点も見逃せない。これからも資産家や企業の頼れるコンサルティンググループとして、さらなる価値を社会に提供していく姿が期待される。

岩永悠/長崎県出身、西南学院大学卒業。京都大学経営管理大学院、上級経営会計専門家(EMBA)プログラム修了。2007年、税理士法人に入所。26歳で税理士登録後、国内大手税理士法人に入所し、福岡事務所設立に参画。2013年に独立開業し、2015年に税理士法人アイユーコンサルティングとして法人化。「日本のミライに豊かさを」をビジョンに掲げ、税理士法人を母体に全国11拠点・総勢約160名体制でグループを運営している。