※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

飲食業界では多様な業態が次々と誕生し、競争が日々激しさを増している。そんな中、名古屋を拠点にイタリアン食堂「ハマキン」などの店舗を展開する株式会社アコラは、焼肉、イタリアン、居酒屋、きしめん専門店など幅広いジャンルの事業を展開。同社の経営戦略には、従業員の成長や福利厚生の充実に注力し、従業員満足度を向上させる独自の仕組みが盛り込まれている。社内の環境整備が業績にもつながっている。代表取締役社長の川島直樹氏に、経営哲学や今後の展望についてうかがった。

アメリカで芽生えた「理想の飲食空間」への思い

ーー飲食業を目指すきっかけとなったアメリカでの体験について教えてください。

川島直樹:
18歳の時、趣味のサーフィンをするためにアメリカへ渡った際に、現地の飲食店文化に触れたことが現在の仕事の原点です。当時のアメリカのレストランやカフェは、広々とした開放的な空間で、洗練されたデザインが非常におしゃれでした。リラックスして食事を楽しむ人々の姿も強く心に残り、「こんな素敵な空間を日本で提供したい」と感じたのです。この経験が飲食業界への関心をかき立て、日本で飲食店経営を目指す大きな原動力となりました。

ーー帰国後、どのようにして店舗運営を始めたのですか?

川島直樹:
帰国してすぐに飲食店開業を決意しオープンしたのが「美食空間アコラ」でした。アメリカで感じた開放的でリラックスできる空間を再現するため、内装や音響にこだわり抜きました。音楽は心地よく感じられる音質になるよう専門家に相談し、音響機材を選定。インテリアもアメリカンカジュアルを意識し、照明やテーブル配置で開放的な空間を演出しています。当時は物件の選択肢が限られていたため、居抜き物件を活用し、限られたスペースを最大限に活かす設計によって「何度でも訪れたくなる場所」を目指しました。

ーー「美食空間アコラ」を最初にオープンすることに決めたきっかけは何ですか?

川島直樹:
アメリカでの経験から、日本でも地域に根ざした新しい体験を提供できる業態に挑戦したいと考えていました。まずは名古屋の特色を活かし、地域の方々が気軽に立ち寄れる居酒屋や伝統的なきしめん専門店を展開。その後、焼肉やイタリアンなどの新しいジャンルにも挑戦しました。各業態の選定は、流行に流されず地域のニーズや食文化に合わせて、その地域の特性を引き出せるように心がけています。

従業員満足度を高める独自の福利厚生

ーー貴社の社内制度について教えてください。

川島直樹:
弊社は福利厚生には特に力を入れています。年に4回の昇格機会を設け、従業員が努力や成果に応じて迅速にキャリアアップできる環境を整えています。さらに、36種類の福利厚生を準備しており、従業員の生活に密着した多様な手当を提供しています。

たとえば、「外食手当」は他店への訪問費用を補助する制度で、業界のトレンドや新しいアイデアを吸収する機会を提供する目的もあります。また、日々の出費が少しでも軽くなるように、日常的に利用するコンビニの飲み物代も支給するなど、従業員が「大切にされている」と感じてもらえるような工夫をしています。

ーー評価制度についてはどのような取り組みをしていますか?

川島直樹:
年に一度、「アワード」という表彰イベントを社内で開催しています。売上や業績だけでなく、店舗ごとの独自の取り組みや地域貢献度も評価基準に加え、従業員が「努力が正当に評価された」と感じられるように配慮しています。アワード後に行う他店舗スタッフとの懇親会も好評で、全社的な一体感や従業員同士が刺激し合う風土を育むことに寄与しています。

ーーセントラルキッチンの導入には、どのような狙いがありますか?

川島直樹:
調理作業を1カ所に集中させるセントラルキッチンの導入は、各店舗で提供する料理の品質を安定させるための施策です。主要な食材の一括仕込みにより、各店舗は調理負担を軽減でき、忙しい時間帯でも安定したサービス提供が可能になります。また、業務効率の向上によってホールスタッフの負担も軽減され、本来の業務に集中できる環境が整います。こうした基盤により、将来的なフランチャイズ展開にも柔軟に対応できる体制を整えています。

名古屋発きしめん、世界へ挑む日本の味

ーー多業態を展開する中で、今後の展望についてお聞かせいただけますか?

川島直樹:
新しい業態への挑戦は、自分自身を成長させるための大切なプロセスだと捉えています。現在、名古屋名物であるきしめんを扱う店舗の全国展開を目指しており、フランチャイズ展開も視野に入れています。日本の伝統食としてのきしめんを広めることで、名古屋の魅力を国内外に発信できればと思っています。

さらに、日本食の人気があるアジア市場への進出や、最終的にはアメリカ市場にも挑戦したいと考えています。私自身がアメリカで受けた感動を、日本の文化を通じて還元したいという思いが根底にあります。

ーー海外展開に際し、現地でのサポート体制についてはどのようにお考えですか?

川島直樹:
言語や文化の違いを考慮し、現地パートナーとの連携が重要です。現地スタッフの教育体制を整え、従業員が成長できる環境を築くことで、日本ならではの飲食体験を提供し、現地のお客様に喜んでいただけるようにしたいと考えています。

ーー日本発の飲食店の魅力はどこにあるとお考えですか?

川島直樹:
日本の飲食業には「日本らしさ」という強みがあります。寿司やラーメンに続き、居酒屋文化や焼肉も海外で受け入れられる可能性は高いと考えています。現地の食文化に合わせながらも日本らしい要素を組み込んで、現地のお客様に愛される店づくりを目指していきます。

編集後記

多業態展開を通じて飲食業界に新たな価値を創出し続ける川島社長。その原動力となっているのは、アメリカでの経験から生まれた「日本でも心からリラックスできる空間を提供したい」という熱い想いである。また、従業員一人ひとりを大切にし、その幸福を最優先に考える経営哲学からは、川島社長の温かく人間味あふれる姿勢が感じられる。これから株式会社アコラが生み出す新たな挑戦が、飲食業界にどんな物語を紡いでいくのか、その未来に胸が高鳴る。

川島直樹/1978年、愛知県生まれ。18歳でロサンゼルスに渡り、海外の外食文化に触れてカルチャーショックを受ける。日本でも同じような飲食体験を提供したいと志し、2003年、25歳で地元・名古屋に美食空間をイメージした「アコラ」1号店を開業。飲食業の経験が浅い中で経営を学びながら事業を成長させ、2010年に2店舗目を出店。2013年、株式会社アコラ設立。現在は13店舗を運営し、名古屋の伝統食「きしめん」を全国に届けることを目指して、さらなる展開に力を注いでいる。