※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

1999年の創業以来、旅館業を展開している株式会社フォレスト。現在は湯河原・箱根エリアを中心に多様な宿泊施設を運営するほか、地元の魅力を伝えるオリジナルバスツアーでも人気を得ている。代表取締役の石田浩二氏に、グループの成り立ちや事業の強み、今後の展望についてうかがった。

加速的な事業展開で旅館業の立て直しに成功

ーー社長のこれまでの経歴や、入社後の取り組みをお話しいただけますか。

石田浩二:
「ホテルニューアカオ」で約3年ホテルマンを、住友林業で12年ほど営業職を経験しました。結婚を機に38歳でホテル業に参入しました。妻の父親が経営していた旅館を立て直すためです。弊社を設立した上で、グループ全体の事業多角化と受託業務を本格的に進めていきました。

経営者となってからはM&Aによって宿泊施設を増やし、不動産会社や外国人材の管理会社を立ち上げるなど、積極的に事業を拡大してきました。グループのテーマを「あの人に会いに行こう。そんな人に出会える宿」とし、サービス業の基本である「働く人」を強みとしています。

ーー事業拡大に注力した意図もうかがえますか?

石田浩二:
「旅館」の経営は装置産業の要素が強く、多大な建設費と維持費用を投じる事業です。今の世の中は移り変わりが早いため、昔は20年かけて回収していた建設費を5年、長くても10年で回収しなければビジネスモデルが成り立ちません。

近年の宿泊業は、「大規模な加速経営」か「小規模な家族経営」に偏っているといえます。弊社は多店舗を展開し、まとまった売上のキャパシティを保つことで投資を可能にしました。旅館経営だけではリスクが高いので、事業を広げて収益を増やす方向に舵を切ったのです。

チャンスがあれば異業種にも参入しており、知名度を上げてきた今では、M&Aのご相談を毎月のようにいただきます。加速経営については、「私の独りよがりに見えていないか」という不安もありました。しかし最近は、自分たちの会社がどんどん成長し、日々変化があることを従業員たちも楽しんでいると感じています。新しい仲間と出会うことも刺激となり、間違いなくモチベーションアップにつながっているでしょう。

多彩な宿泊・バスツアー・会員特典で顧客の心をキャッチ

ーーあらためて現在の事業内容を教えてください。

石田浩二:
神奈川の湯河原や箱根強羅をはじめ、山中湖(山梨)、猪苗代湖(福島)、日光(栃木)などに宿泊施設を展開しています。フランチャイズ契約によるビジネスホテル「サンルート」から、古い木造旅館をリノベーションした宿まで、施設のテーマはさまざまです。岐阜県にある高級旅館「こころをなでる静寂 みやこ」は、2024年11月の稼働率が100%を記録しました。

また、「旅と食の総合プロデュース企業」を目指して、各種保養所の受託運営や、グループの宿泊施設を活用したバス旅行事業、学校給食・社員食堂などのフード事業も手がけています。小田原にある市場の「せり」の権利を持つことから、新鮮な魚介類を仕入れられるのもメリットです。

ーー施設利用者にとっての魅力も教えていただけますか。

石田浩二:
幅広いチェーン展開が最大の魅力ではないでしょうか。2年間で8カ所をご利用いただいた方には、全国の施設で利用できる無料宿泊券を進呈しています。年4回、イベント・キャンペーン情報や誕生日カードをお送りする会員制度には、1万人以上のお客様が加入されています。

直接予約によって宿泊費が5%割引になるほか、館内の飲み物がアルコールを含めて半額になるサービスも好評です。お客様と長くお付き合いできるように、各種特典に力を入れていることはもちろん、ご利用後の評価も細かくチェックしています。

また、検索結果の上位をキープするポイントとして、口コミへの対応も欠かせません。社員には、「予約を検討している『新しいお客様』のことも考えて返信するように」と伝えています。

働く人と出会う人を大切に、グループの魅力をさらに拡大

ーー人材の育成方針をうかがえますか。

石田浩二:
人材育成においては、管理職研修に注力しています。中でも支配人クラスは、現場を回す力やホスピタリティだけではなく、経営面で数字を見て施設のレベルを上げる力が求められるため、このようなスキルや知見を伸ばすための研修を行っています。

人材の獲得と育成は企業存続の鍵であり、弊社が重んじる「人」を大事にすることにつながります。優秀な人材を集めるためにも、ダイヤモンドの原石を見極める必要があり、私を含め幹部たちの器量が問われていると感じています。

ーー今後の展望をお聞かせください。

石田浩二:
拡大路線を貫く形で常にアンテナを張り、経営に良い効果をもたらすことを探していきます。チャンスがあれば、沖縄のリゾート開発も手がけていきたいところです。

また、私自身が64歳を迎えて、誰にバトンタッチするべきかも考え始めました。この先5年ほどで後継者に関する方向性を決め、従業員やお取引先を安心させる責任があるといえます。

サービス業界では、受け取った「ありがとう」を力に変えられる人が活躍しています。フォレストグループとしては、人に喜んでもらうことが好きな人に来ていただけるとうれしいです。

編集後記

確固たるテーマと人材の質を重視してきたことで、業種を広げてもぶれることなく、グループを拡大してきた株式会社フォレスト。前職で役員を目指すほど、営業で結果を出してきた石田氏の「人を見る力」と「味方にする力」が、ホテル業界でさらに花開いたのだと感じた。

石田浩二/1961年生まれ。東海大学教養学部卒業。ホテルニューアカオ、住友林業を経て、1999年に株式会社フォレストを設立。2004年、代表取締役社長に就任。現在、グループ会社9社を率いるほか、不動産会社や外国人材支援の一般社団法人を設立し、新規事業にも積極的に取り組んでいる。