※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

1954年に創業した林工業株式会社は岐阜県内の井戸工事を中心に施工技術を高め、建物の水回りを快適に整える事業で成長を続けてきた。代表取締役の林裕人氏に、企業の取り組みと強み、大切にしている理念、今後の展望についてうかがった。

豊富な実績を強みに「水」に関する環境整備事業を展開

ーー事業内容をご説明いただけますか。

林裕人:
林工業は、水を汲み上げる井戸掘り事業からスタートしました。今から70年ほど前は、全国の水道普及率が25%未満であり、岐阜県一帯でも水道や井戸管を敷設し、各家庭に水を届ける仕事が必要とされていたのです。

それから時を経て、風呂・トイレなどの水回りを含む水栓工事から公共設備に至るまで、建物内の「水」に関わる事業全般を請け負う会社となりました。さらに2002年以降は、大阪にあるメーカー代理店様と共に、汲み上げポンプの施工事業も進めています。

また、飲水用ポンプや河川の氾濫時に水を汲み上げるシステムの設置、下水処理場の機械の入れ替えなど、ニーズが増加傾向にある特殊性の高いポンプ事業にも注力しています。公害防止を図ることはもちろん、自然環境を守る長年の「持続可能な事業」が認められ、「ぎふSDGs推進パートナー」にも登録されました。

ーー貴社の強みを教えてください。

林裕人:
施工実績の豊富さは、「水」に関連する事業で大きな強みとなります。実績がない作業は入札に参加できないこともあるほどです。機械を扱うメーカー様とお付き合いをする中で、いち早く新製品やノウハウを提供していただけるなど、事業拡大のポイントでもあります。

同業他社と比較して、離職率が低いことも強みの一つですね。働きやすく、魅力ある職場づくりに取り組む岐阜県の企業として、「ぎふ建設人材育成リーディング」のゴールドランクを更新し続けています。

福利厚生の充実も人材の定着に役立っていると思います。社員旅行ができなかったコロナ禍においては、旅行気分を味わえるように北海道グルメのギフトセットを配布し、とても喜ばれました。

ーー人材育成の方針にも特徴があるのでしょうか。

林裕人:
会社全体や部署ごとの目標、個人の実績にもとづいて人材を評価しています。社員の声を聞く機会も大切にしていて、年2回の賞与支給前には私自ら個人面談を行い、会社や仕事に対する思いを聞いた上で、積極的に改善に取り組んでいます。

「理想と現実のギャップ」は、会社と人材双方にとって不利益をもたらす要素でしょう。だからこそ採用面接の段階から私も立ち合い、応募者とじっくりと話し合うほか、入社前に社内の雰囲気を感じられるようインターンシップにも力を入れています。

老舗インフラ工事会社の代表として「現状維持」ではない経営に転換

ーー代表就任後はどのようなことに取り組まれたのでしょうか。

林裕人:
代替わりする以前から、先代社長である父と社内改革を進めていました。各部署や会議のあり方を見直し、時代に合う形で会社を組織化するべきだと考えたのです。どのような会社にするか模索する中で、最も重視したのは「従業員が気持ちよく働ける組織であること」でした。

経営者としては「会社を守ることが第一」という方針でしたが、「現状維持は衰退である」と思うようになったのです。最大の転機は、コロナ禍において活動できる人材が不足し、お客様にご迷惑をおかけしてしまったことでした。体調不良の人の健康を守りながら、お取引先との仕事を全うするために、「人材を増やさなければならない」と考えました。

「安心できる会社」であるための組織強化には、事業規模の拡大と売上・利益向上も必要です。「人を増やすために仕事を増やそう」ということで、新たに立てた事業計画は2024年で3年目に突入しました。2年目の目標として掲げた「年間売上12億円」を達成し、今年度の目標14億円も達成見込みです。

「感謝の気持ち」でつながり合い、地域に欠かせない企業へ

ーー貴社が一番大切にしていることについて教えてください。

林裕人:
「感謝の気持ちを持つこと」を日頃から心がけ、経営理念にもしています。弊社は、材料の仕入れや工事会社への依頼も行う「工事の管理会社」でもあります。どなたが欠けても私たちの仕事は成り立たず、「人と人のつながり」がすべてだと言えるでしょう。

「感謝の気持ち」については、創業者である祖父のエピソードを大切にしています。私が街中で偶然、弊社で働いていた女性にお会いした時に「昔、あなたのおじいさんにもらった牛乳とあんパンが本当においしかった」と思い出を話してくださったのです。

私としては、現場で長く働いてくださったことに感謝の一言でした。長い年月を経て「ありがとう」を伝え合えるような、創業者から引き継がれてきた「感謝」の精神性もうれしく感じたので、70周年記念で製作したコンセプトムービーでもそのエピソードを取り上げました。

ーー今後の展望をお聞かせください。

林裕人:
これからも社員やお客様、地域の皆様と「感謝の気持ち」を伝え合い、「人とのつながり」を大切にしていきます。社員とその家族が幸せになれる経営を続け、「この会社に入って良かった」と感謝し合えるような未来が理想的です。

「2031年までに売上20億円」という目標に向かって、人材獲得に注力していく上で、弊社で働く魅力を広めて多くの人に興味を持ってもらいたいと思います。

編集後記

「感謝の気持ち」を忘れないだけでなく、相手に日頃から伝えられている人はどれだけいるだろうか。人間関係の基本でありながら、持続が難しい心がけをしっかりと実行することで、林工業は「会社への安心感」を社内外で育ててきたと言える。地域になくてはならない水事業の会社として、時代に合わせて成長し続ける姿から多くのことを学べるインタビューだった。

林裕人/1974年、岐阜県生まれ。日本大学を卒業。株式会社太陽建設コンサルタントにて、3年間修業したのち、2000年に林工業株式会社へ入社。2015年、代表取締役に就任。