
競合が乱立し、競争が激化している不動産市場。そんな生き残りが厳しい業界にもかかわらず、設立7年で売上100億円を達成、8年目で130億円、2025年3月の9年目は160億円の見込みである企業が、株式会社ゴールドファステートだ。代表取締役の有田優氏に不動産業界に入ったきっかけや、同社の強みである結束力を高める秘訣などをうかがった。
個人で戦える環境を求めて不動産業界の道へ
ーーまず不動産業界に入ったきっかけについてお聞かせください。
有田優:
不動産業界を選んだのは、実力主義の世界で挑戦したいと思ったのがきっかけです。父が自動車の販売業をしていた影響で車が好きで、子どもの頃からレーシングカートに打ち込んでいました。全国大会にも出場し、そこで勝ち抜いて世界各国から選手が集まるヨーロッパ選手権にも出場した経験もあります。
ヨーロッパ選手権では、「絶対に勝ち残ってやる」という海外の方々が持つ闘争心の強さが強く印象に残っています。このときに、自分が成し遂げたいと思ったことは、何が何でも達成してみせるというハングリー精神を持つ大切さを思い知りました。この経験から、レーシング界のように個人のスキルが試される環境で働きたいと思い、不動産業界を選んだのです。
ーー実際に不動産業界で働いてみていかがでしたか。
有田優:
意気揚々とこの世界に飛び込んだものの、最初の1年間はまったく売れず、くすぶっていましたね。その様子を見かねた上司から、「ご両親はずっとお前の夢をサポートしてくれたのに、何も恩返しができてないじゃないか」という意図で、厳しく叱責されました。その言葉にカッとなってしまい、勢いで「もう辞めてやる」と口走ってしまったのです。
そのときにこれほど強い言葉で叱責されるまで、本気を出し切れていなかった自分に気づき、情けなくなりました。それを機に心を入れ替えて全力で仕事に励んだ結果、営業成績が一気に伸び、入社から2年半で管理職にまで上り詰めたのです。
仕事だけでなく、豊かな時間を過ごせる会社を目指し起業
ーーそこから起業までの経緯についてお聞かせください。
有田優:
昔からリーダーを任されることが多く、カーレースの世界で大成したいという夢を持ちつつも、いずれ経営者になりたいという思いもありました。そこで30歳までに独立を決意し、29歳でゴールドファステートを設立したのです。
起業する際に考えていたことのひとつが、「季節の移ろいを感じられる余裕を持つ」ことでした。前職はとにかく多忙だったため、これから一緒に働く仲間には、同じような気持ちをしてほしくないという思いがあったのです。
この目標のとおり、弊社では春に花見をしながらバーベキューをして、夏に運動会を開催するというように、年間で10回ほどの社内イベントを実施しています。部署の垣根を越えてコミュニケーションを取る機会が多いので、社員同士の結束力は高いですね。四季を感じることで、社員の感受性を育くむ機会にもなればと思っています。
成長の秘訣は基本に基づいた営業力と社員の結束力

ーー貴社の事業内容と強みについて教えてください。
有田優:
弊社はさまざまな事業を展開していますが、メインはマンション開発です。また、強みといえるのは、営業力とチーム力の高さです。社員教育ではまず基礎を固めてから応用し、オリジナリティを出していく「守・破・離」を軸にしています。また、周りの人間に対して感謝の気持ちを忘れないよう伝えています。
ーー設立7年で売上100億円、8年目で130億円、9年目である2025年の3月には160億円の売上見込みとお聞きしていますが、これは計画どおりだったのでしょうか。
有田優:
年次ごとの売上や心斎橋の交差点に自社の看板を設置するなど、設立当初に立てた目標はすべてクリアしています。この業界では、新たに参入してきた企業に対して厳しい目が向けられますが、それを跳ね返す気概で取り組んできました。
また、親御さんに「ここなら子どもを安心して働かせられる」と思っていただける会社にしたいと考えていたため、優良企業との取引実績をつくり、社会的信用を集めることにも注力してきました。
売上を伸ばすために特に力を入れてきたのが、社員の能力を最大限に引き出す人の導線を整えることです。毎日のように営業戦略会議を開き、社員同士の相性を考慮した上で、より良いパフォーマンスを引き出せるよう努めています。
ーー美容サロン事業も始められたということですが、異業種である事業に着手した経緯を教えてください。
有田優:
以前より女性の社会進出に課題を感じていたことから、女性が活躍できる場をつくるために美容サロン事業を立ち上げました。このサロンでは科学的根拠に基づき、お客様の髪質に合わせた処方をしています。一人ひとりに合わせた施術を行い、ベストなコンディションを引き出せることが他のサロンにないポイントです。
また、講習を受ければ誰もが一定の技術を習得できるのもメリットです。これまでは現場で長年経験を積み、スキルを身に付けるのが一般的でした。しかし、先輩の技術を見て覚えるだけでは思うように技術を高められず、途中で挫折してしまう人が多いのです。
そこで、技術を体系的に学べるようにし、経験が浅い方でも効率的に技術を身に付けられる仕組みを構築しました。さらに育休・産休や完全週休2日制を導入するなど、働く環境を整備し、女性が長く働き続けられる職場を目指しています。
顧客や周囲への配慮を忘れない社員の人間性。新たな理念として掲げる「3K」とは
ーー社員の方々にはどのような方が多いのですか。
有田優:
元気で素直、そして後輩思いで、他部署との関係も円滑に築ける人が多いですね。単に売上を上げるだけでなく、マンションのオーナーさんや、社員のアフターフォローもできる人になるよう伝えています。人間的に魅力のある社員ばかりなので、弊社に入っていただければ人間性を磨けると思いますよ。
ーー社員とのコミュニケーションで意識していることを教えてください。
有田優:
社員には、日頃から積極的に声をかけていますね。暗い顔をしている社員がいたら話しかけ、悩みを聞くようにしています。また、「部署内の空気感が悪いな」と感じたら上長に話を聞き、人の動線を整えるなど早めに課題を解決するように心がけています。
会社経営は良いときばかりではありません。一度業績が落ち込んでから、いかに挽回するかが経営者の責務であるのは当然ですが、業績回復に向けた取り組みについて、考え方や方針を社員と共有することが大切です。それを可能にするためにも、普段から社員と良好な関係を築くべく、積極的にコミュニケーションをとっています。
ーー貴社が大切にしている考えをお聞かせいただけますか。
有田優:
新しい理念として「感性が歓声に、そして完成へ」という弊社独自の「3K」を掲げています。これは「1人の感性から新しいものが生まれ、それが周囲の賞賛につながり、完成を目指して挑戦する」という行動目標を表したものです。この理念を指針とし、これからも社員がいきいきと働ける環境づくりを進めると同時に、お客様が求める商品を提供し、絶えず挑戦を続けていきます。
ーー最後に今後の展望をお聞かせください。
有田優:
この先も安定的な経営を続けて100年企業となるために、単に目先の利益を追求するのではなく、世間から認められる企業になれるよう、ブランディングに力を入れたいです。そのために、次世代に引き継いでも円滑に運営できる仕組みを構築し、さらなる組織力の向上を目指してこれからも邁進していきます。
編集後記
新人時代に芽が出ずくすぶっていたときに上司から喝を入れられ、そこで目が覚めたと当時のエピソードを語ってくれた有田社長。経営者として成長企業を指揮する彼にも、苦労した過去があったのだと感じた。株式会社ゴールドファステートは、社員の結束力で他社を追随し、業界で存在感を放っていく。

有田優/1986年兵庫県生まれ。兵庫大学卒。株式会社プレサンスコーポレーションに入社し、2016年に株式会社ゴールドファステートを設立。不動産事業のみならず、美容事業にも注力している。