
冒険社プラコレは、ウェディング業界に特化したコンテンツ「PLACOLE & DRESSY」を運営する会社だ。また、ウェディングドレスの試着ができる「DRESSY CAFE」の実店舗運営も行っている。
SNSの発信に注力している理由や、カフェ事業を始めたきっかけ、メタバースを駆使したユニークな働き方などについて、代表取締役の武藤功樹氏にうかがった。
SNSでの情報発信に注力し、広告費をかけない新たな集客方法を確立
ーーまずは現在の事業を立ち上げた経緯についてお聞かせください。
武藤功樹:
IT企業でブライダル事業に携わったことが事業立ち上げのきっかけになりました。ブライダルの仕事は幸せがあふれる空間で、外からは働く人たちが輝いて見えますよね。実際は、拘束時間が長い割に給与水準が低く、離職率が高いのが現状です。そのため、ブライダル業界が抱える問題を何とかしたいと思うようになったのです。
この業界に関わり始めたころ、私が疑問に思ったのは「単価の高いドレスを扱い、1回の式で数百万円の収益があるのに、なぜここまで人件費が安いのか」という点でした。ほどなくして、業界トップの企業が市場を独占していることが原因であるとわかりました。業界トップの企業に流れる顧客を取り込むべく、競合企業の多くが広告費に莫大な費用をかけていたのです。
広告にかけるコストが増大すると、人件費にお金をかけられないため、従業員の給与が低くなります。また、人件費を抑えようと少ない労働力で仕事を回す分、サービスの質の低下にもつながります。この状況をどうにかしようと考えた私は、広告費を抑えて労働環境を改善すれば、サービスのクオリティが上がるのではないかと考え、起業を決意したのです。
ーー貴社はSNSでの情報発信に力を入れていますね。
武藤功樹:
最初私が1人でFacebookでアカウントをつくり、ウェディングドレスの写真をアップし続けたところ、あっという間にフォロワーが20万人に増えました。そのときに「ウェディングドレスはエンタメになるんだ」と気付き、起業後はInstagramやYouTubeなどの発信に力を入れたのです。
今では、Instagramの主要アカウントのフォロワーが38.4万人、TikTokは47.4万人、YouTubeチャンネルは登録者数が125万人以上と、SNS総フォロワー数は250万人を超えています(2025年1月時点)。
この反響を受けて「バルセロナブライダルファッションウィーク(BBFW)2024」の日本オフィシャルパートナーに選ばれました。また、弊社の発信をきっかけに「この会社で働きたい」という声が増え、採用活動をしなくても毎月300人ほどの応募が集まるようになったのです。
SNSの発信で意識していることは、花嫁さんがご両親に手紙を読む場面や、ヴェールを下ろす場面など、感動的かつ印象的なシーンを切り取ることです。これから結婚する方たちに「自分たちも結婚式を挙げようか」と思ってもらえるように、こうした発信を続けています。
オンラインとオフラインを掛け合わせたマーケティング戦略

ーー改めて貴社の事業内容について教えてください。
武藤功樹:
「ウェディングドレスの魔法を届ける」をテーマに、SNSマーケティング事業、ファッションメディア「DRESSY」の運営、ウェディングのテーマパーク体験型カフェ「DRESSY CAFE」の運営、ショップ運営の4本柱で事業を行っています。
「DRESSY CAFE」は、ウェディングドレスを見ながらアフタヌーンティーを愉しめるカフェです。ウェディングドレスを着てセルフ撮影を楽しめる「PIC mii」スタジオも併設しています。
カフェ事業を始めたのは、実店舗により、SNSとの相乗効果を高めることにあります。また、SNSで見たドレスやグッズを実際に身に付けられる場を提供し、弊社のブランディングを行うことも目的です。さらに、直接お客様と接する場を持つことで、「お客様を笑顔にするコンテンツをつくる」というメディアのコンセプトを忘れないことも目的に含まれています。
アバターを通じたコミュニケーションで公平性を実現
ーー組織運営で意識している点を教えていただけますか。
武藤功樹:
社員が自発的に動ける組織にすることを心がけています。そのためには上司が部下を注意するのではなく、褒めて相手の良いところを伸ばすことが重要だと考えました。ただ、面と向かって伝えると、部下が萎縮してしまいますよね。
そこで思い付いたのが、メタバースの利用です。本社をメタバース空間「ViKet Town」とし、アバターを通じて気軽にコミュニケーションを取れる環境にしました。そこではコミュニケーション量や行動量に応じ、メタバース空間で使える通貨「ビケ」が貯まり、アバターショップで服や装飾、アイテムと交換できる仕組みです。こうしてゲーム感覚で取り組むことで、コミュニケーションを活発にしつつ、社員たちに仕事を楽しんでほしいと思っています。
また、年に4回行うブレインストーミング(※)で、社員たちに新しい福利厚生の案を出してもらうようにしています。その中で生まれたのが、ルーレットで給与を決める「ルーレット給」や、投票で「お客様王」「仲間王」などに選ばれると5000円が支給される「みんなから給」などです。
さらに、1日4時間だけ働けばあとは自由時間とし、各自でオフィス出勤か在宅勤務を選択できるなど、自由な働き方を推奨しています。このように、最低限のモラルは守りながらも、自由に楽しく働ける職場づくりを進めています。
(※)ブレインストーミング:複数人で集まって自由に意見を出し合う会議のこと。
ブランド力を向上し、お客様の方から声がかかる企業でありたい
ーー最後に今後の展望についてお聞かせください。
武藤功樹:
社員数を100名まで伸ばし、会社の規模を拡大したいと考えています。そのために東京・大阪・名古屋・福岡を拠点に、DRESSY CAFEのフランチャイズ化を進める予定です。
また、オリジナルのウェディングドレスや、24種類の色とフレーバーが楽しめる紅茶、食器の販売を通し、海外展開を強化したいと考えています。弊社の世界観を商品に反映し、販売実績がある香港やカリフォルニア以外の国や地域でもファンを増やしていきたいです。
今後もみなさんの期待を超えるサービスや商品を提供し、ブランド力を高め、営業しなくても自然と仕事が舞い込む状態を維持したいと考えています。
最終的な目標は「ティファニーを超えるブランドになること」ですが、具体的な数値目標は設定せず、社員一人ひとりが自由にアイデアを出し合える環境を大切にしていきます。
編集後記
自由な働き方を進めている話や、きれいな色や香りの紅茶で人々にときめきを感じてもらいたいことなど、熱心に語ってくれた武藤社長。その姿から、「社員全員に仕事を楽しんでもらいたい」「多くの人に幸せを届けたい」という思いがひしひしと伝わってきた。冒険社プラコレは仲間である社員と一丸となって、ブライダル業界の新たな道を切り拓いていく。

武藤功樹/1983年岐阜県生まれ。2006年愛知大学卒業後、大手IT上場企業子会社代表や役員を歴任。2015年冒険社プラコレを創業。SNS総フォロワー数250万人を超えるウェディングブランド「PLACOLE&DRESSY」を創設。ドレスを気軽に体感できるカフェ「DRESSYCAFE」を全国展開中。自由と冒険をテーマとし、「ドレスのときめく魔法を届ける」をコンセプトに各サービスを運営中。