※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

デジタルとはまた違った音の良さや、コレクションしたくなる見た目などから、再評価され始めている「レコード」。国内外で巻き起こっているレコードブームの潮流に乗り、事業を成長させてきたのがFTF株式会社だ。個人経営のレコード店から、同社は一体どのようにして、世界中に顧客を持つほどの会社になったのか。代表取締役の武井進一氏に、同社の歴史や事業の強み、展望などを聞いた。

個人店のレコード店を開業後、海外展開やレコードブームの影響を受けて事業が拡大

ーー創業の流れや会社の歩みについて教えてください。

武井進一:
創業のきっかけは、僕自身がかつてDJをしており、レコードに強いこだわりを持っていたことが影響しています。僕たちの世代は輸入盤志向で、日本製よりアメリカ製のレコードを好む人が多くいました。僕もアメリカ製レコードへの憧れから、アメリカまで頻繁に買い付けに行き、その流れで個人経営のレコード店を開業したのです。これが、弊社の始まりです。

最初の社名は「フェイストゥフェイス」でしたが、名称が長く聞き取りにくいと感じたため、頭文字をとった「FTF」に変更しました。社名を変更した2016年当時は海外向けにレコードを販売し始めていたこともあり、認知が広がりやすい社名の方が良いだろうという考えもありましたね。

その後、国内外でレコード自体の評価が上がり始め、その影響もあり事業をどんどん拡大でき、現在に至ります。

システム化の推進が成長の後押しに。事業を通して世界で日本の評価を高めていく

ーー貴社の事業内容やビジョンなどを教えてください。

武井進一:
弊社は実店舗でのレコード販売のほかに、中古品を仕入れて海外に販売する事業や、「廃棄レコードゼロ」を目標に買取サービスなどを行っているレコード店です。レコード店としてはFace Recordsを渋谷や京都、札幌、名古屋、ニューヨークなどで運営しており、そのほか自社ECサイトの運営、買取専門サイトEcostore Recordsの運営などを手がけています。

また、世界最大級の越境ECマーケットプレイスeBay(イーベイ)において、日本で1番商品の販売個数が多く、日本企業の中で最も良い評価を獲得している会社でもあります。

「世界を日本贔屓にする会社」というスローガンを掲げ、弊社が日本の会社として海外へレコードを多く販売することで、日本を好きな人を増やせたら良いと思っています。世界での日本の評判を高めるためにも、梱包に気を配った丁寧な配送などを心がけています。

ーー事業の強みはどういった点にありますか。

武井進一:
早くから海外に注目して事業を展開していることと、システム化が進んでいることの2点が主な強みです。たとえばシステム化に関していえば、どの販路に向けて、どの価格で販売するのが適正なのかなど、需要が高い市場が分かるシステムを導入しています。こういったシステムの開発には、7〜8年かかりました。

また、店舗に関しては、コレクターの心理に合った店づくりを実現している点が強みです。レコード業界にはコレクターのお客様が多く、そういった方は自分で店舗へ訪れて、掘り出し物を見つけたいという願望があることが多いです。弊社はそういったお客様のニーズに合った商品を揃えることで、コレクターの方々の心をがっちりと掴むことに成功したといえるでしょう。

「目標は世界中に店舗を持つこと」を目指して強い組織をつくる

ーー人材の採用については、どのように考えていますか。

武井進一:
音楽が好きな人が弊社に来てくれると嬉しいです。今後は会社の更なる成長を目指して、業界の特殊な経験やシステムに関する技術を持っている人を積極的に採用していきたいです。

新卒は現在採用していませんが、アルバイトから社員になった方も少なくありません。こういった社員は長く会社に居てくれる傾向にあるので、居心地良く感じてくれているのだろうと思っています。今後は、新卒採用を始めることを見据えて、教育システムの整備に力を入れていく予定です。

ーー今後の展望をお願いします。

武井進一:
これまで弊社は、社内システムをアップデートすることで売上を伸ばしてきました。そのため今後もアップデートを進め、それに合わせて組織の形も変えていこうと思っています。今後は、売上があまり大きくない国々の需要を分析する上でも、弊社のシステムが役立つと考えています。そのほか、社内での研修や教育に力を入れることが今後の目標です。

長期的な展望は、経営計画や30年ビジョンを1つでも多く達成することですね。海外販売事業の規模拡大にも注力し、店舗数を増やすことも目標です。具体的には、世界中の国に弊社の店舗がある状態を実現したいと考えています。

編集後記

FTFがレコード販売を通して「日本贔屓のファン」を増やし、日本へポジティブなイメージを持つ人を増やせば、レコード業界以外の日本企業にも好影響を与えるだろう。世界から日本の企業が愛され、日本の未来を明るいものにするためにも、同社が世界中で日本の評判を高めてくれることに期待したい。

武井進一/1970年栃木県生まれ、1994年にFace Recordsを創業。2001年に有限会社フェイストゥフェイスを設立し法人化、代表取締役社長に就任。2016年にFTF株式会社に商号変更。その直後から世界的にレコードの評価が高まり、事業を急速に拡大し現在に至る。