※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

1925年に大阪市浪速区で創業した株式会社赤松電機製作所。小型モーターや送風機の製造を手がける中で「風」にまつわる知見を増やし、工場向け環境機器メーカーへと発展した。代表取締役社長の赤松竜太郎氏に、会社の取り組みや製品の強み、今後の展望をうかがった。

産業用機器メーカー3代目として開発体制・営業部門を改革

ーー赤松電機製作所に入社するまでの経歴をお話しいただけますか。

赤松竜太郎:
弊社を創業したのは祖父であり、私が3代目にあたります。家業とはいえ、父が働く姿を間近で見たことがなかったため、自分が会社を継ぐことは想像していませんでした。新卒で入社した会社も、自動車メーカーという全くの異業界です。

しかし、東京への引っ越しをきっかけに「子どもに会社を継がせたい」という父の思いを知りました。幼少期からお世話になっていた方にも背中を押され、「親孝行するタイミングではないか」と思うようになり、20代半ばでの入社を決めたのです。社長に就任した日は、父が病で倒れた2014年のクリスマス・イブということで、しっかりと覚えています。

ーー入社後の経験や改革についてもうかがえればと思います。

赤松竜太郎:
1年目は技術サービスの現場に入り、納品した製品のメンテナンスに携わりました。一番長く在籍した営業部門では、常に困難に直面していましたね。たとえば、当時は市場の声をきちんと拾えておらず、プロダクトアウトの新製品が「売れない」という問題があったのです。

営業責任者を務めていた私は、製品に特色を付けるべきだと考え、販売方法に苦労していた業務用掃除機を「液体の吸い上げに特化したスラッジバキューム」に改良しました。「試しに液体を吸ってみたら想像以上のパワーを発揮した」という思いがけない活路から、専用機を積極的にモデルチェンジしていく流れが生まれたといえます。

また、個人の営業範囲が広すぎて、ルートを捌くだけの仕事になっていたため、担当エリアを細かく分割しました。お客様と密に話ができない状態では、関係性や人脈が深まらず、次につなげることが難しかったのです。結果的に、労働環境も改善する形で営業部門を強化できました。

ーー働き方や社風にも変化があったのでしょうか?

赤松竜太郎:
営業部門は社交的かつ行動的な人が多い一方で、製造部門は「与えられた仕事を真面目にこなす人」が多く見られます。入社する人材の傾向も時代によって変わるため、経営者としては仕事に対するモチベーションや帰属意識の低さも課題に感じていました。

そこで、主体性を持って行動できる人を増やすためにスタートしたのが、「100周年『2525(ニコニコ)プロジェクト』」です。自由参加型のいろいろな企画を練り、参画してくれる人がいれば、まず社員の「やる気」を可視化できます。「手伝ってみたいな」と思う人が増えれば、主体性のある人材の増加にもつながるはずです。

多彩な「送風機」から環境改善機器までラインアップ

ーー事業内容を教えてください。

赤松竜太郎:
メイン事業は、「送風機」をベースとした自社ブランドの製造・販売です。工場の装置内に収める送風機をはじめ、回転寿司のシャリを冷やす送風機、大型エレベーターに設置する冷却ファンなど、外側からは見えにくい「風」に関する製品に強みがあります。

近年は環境機器メーカーとして、工場環境を改善する製品も展開しています。主力製品の「ミストコレクター」は、金属の加工時に発生するオイルミストを吸引・除去する装置です。オイルミストは、工場内の機械や人体、周辺環境に悪影響を及ぼす可能性があり、多くの企業で解決策が求められてきました。

ーー環境機器を導入する企業が増えているのでしょうか?

赤松竜太郎:
2000年代初期と比較すると、環境に対する意識はとても向上したと思います。私が営業先を回っていた頃は、「工場は曇っているもの」「普通の換気扇で十分」という認識が当たり前でした。それでも、工場環境の改善や機械を汚さないメリットを伝え、何より作業する人の健康を守るためにも「工場をきれいにしませんか?」と訴えかけてきました。

今では、工場における環境対策は常識となり、メーカーも顧客から「環境に配慮した製品」を指定される時代です。環境機器が必要とされる場面は年々増えているだけではなく、「メンテナンスが簡単な製品」などニーズの進化も感じています。

「人に喜ばれること」を行動指針に次なる100年へ

ーー今後の展望をお聞かせください。

赤松竜太郎:
2025年に創業100周年を迎えるにあたり、過去をリセットするほどの気持ちで新しいことにチャレンジしたいと考えています。現状を維持するだけでは、どうしても企業は停滞するため、手段が凝り固まることがないように企業理念と行動指針を刷新しました。

「地球環境の恩恵を後世に繋ぐ」という理念は、環境機器メーカーの使命に基づきます。さらに、理念の実現に向けた合言葉として「工場環境の整備(Factory beauty)」を提唱しています。私たちは工場環境をきれいにすることで、働く人の喜びを生み出したいのです。

「人に喜ばれることをする」という行動指針は、日頃から私が大事にしている考えで、社内全体で共有したい経営のベースでもあります。サービスを提供するにあたっては、何事も「相手」あってこそですので、「人の喜び」を考えながら行動することが大切です。

目の前にいるお客様の声をしっかりと捉えることはもちろん、応えられる仕組みを構築した先で新しい挑戦を続ける。「行動」と「理念」を結びつけながら、次の100年を変えていく商品・サービスを提供していきたいですね。

編集後記

自身が最大の喜びを感じる瞬間について、「仕事のやりがいを見つけて楽しそうに活躍する社員を見た時」と語った赤松社長。その赤松社長が率いる会社には、「人の喜び」が目に見えるシーンが溢れているのだろう。企業の行動指針に共感する人が社内外に集えば、「地球環境を守る」という大きなテーマも「身近で当たり前」のテーマへ変化していくはずだ。

赤松竜太郎/1976年生まれ。2002年、株式会社赤松電機製作所に入社。技術サービス部門を経て、営業責任者に着任。2014年、代表取締役に就任。