
累計販売数が14億冊にものぼる「ジャポニカ学習帳」や、「妖怪ウォッチ」など日本を代表する人気キャラクターとのコラボ文具を手がけているショウワノート株式会社。ほかにも塗り絵やパズル、シールなど幅広い商品を手がけており、子どもから大人まで慣れ親しんでいるロングセラー商品も少なくない。
今回、代表取締役・社長執行役員の氷鉋富雄氏を取材し、時代が変わっても人々に求められる商品を提供し続ける同社の強さに迫った。
営業を19年間経験、「妖怪ウォッチ」などのキャラクター文具がヒットし社長に
ーー代表取締役に就任するまでの経緯をお聞かせください。
氷鉋富雄:
大学卒業後、1年間のブランクを挟んでショウワノートに入社しました。もともと僕は漫画が好きで、キャラクター商品を手がけている会社として興味を持ったのが、入社の理由です。
入社後は営業部に19年間所属し、いろいろなエリアを担当しました。年2回の見本市に出展した際は、お客様が真っ先に僕のところへ来て「あなたから話を聞きたい」と言ってくれて、嬉しかったですね。営業の仕事をしていて、本当に良かったと感じた瞬間でした。
その後、キャラクターの版権(著作権を複製・販売する権利)をとる仕事をする版権部、市場開発部、ポケモン事業部を経験。そして、ショウワグリム社への転籍、陽光産業社への出向を経て、2023年に代表取締役に就任しました。
版権部時代には、僕が交渉してとってきた「イナズマイレブン」や「妖怪ウォッチ」などのキャラクター文具がヒットし、会社の売上にも貢献できました。こうした実績が買われて、幹部の方々は僕を代表取締役に推薦してくれたのだと思います。
ただ、これまで多くのヒット商品を生み出してこられたのは、商品をつくっている社員たちの多大な努力があったからこそであり、どのようなテーマの商品がヒットするのかを分析し、提案することに力を注いできました。
時代の流れと売場を見ながら、次々とヒット商品を生み出せる点が強み

ーーどのようなキャラクター商品を販売していますか。
氷鉋富雄:
弊社のキャラクター商品は、幼児・小学生向けのものだけでなく、大人を対象にしているものもあります。たとえば大人向けのキャラクター商品に関しては、「POMMOP(ポンモップ)」というブランドを展開しており、現在このキャラクターの商品の人気が高まってきています。
版権元様も、POMMOPのキャラクター商品の海外販売を認めてくださり、この事業が上手く回り始めたことで会社の売上も伸びてきました。
このPOMMOPの人気に加えて商品の原価率を抑えるといった、さまざまな工夫を凝らしたことで、弊社の業績は現在黒字になっています。
ーー貴社の強みはどういった点にありますか。
氷鉋富雄:
1942年創業の歴史が長い会社という点に加えて、ヒット商品を提供するノウハウがある点が強みです。
本屋が文具を売ること自体は昔からよくありましたが、最近は百円ショップや生活雑貨店でも文具を販売しており、文具売場はさまざまな店舗に広がっています。
弊社は時代の流れを見ながら、それぞれの売場でヒットする商品を提供することができ、それが実績として積み上がっている点が大きな強みといえるでしょう。
今後は海外での販売にも力を入れながら、営業力をより一層高めていく
ーー今後の注力テーマを聞かせてください。
氷鉋富雄:
2年ほど前からキャラクター商品の海外販売について版権元に相談をしており、「ポケモン」や「ドラえもん」など一部のキャラクター商品の販売許可をいただくことができました。今後は、中国や東南アジア、サウジアラビアでの展開に力を入れていきたいです。
また、弊社は自社で製造工場を運営しています。工場には何十人も社員がいるので、稼働を続けられるようにすることが第一です。今後は工場で学習帳以外の商品をつくるようになる可能性もありますし、新商品の開発についても研究を進めていきます。
価格競争には巻き込まれたくないので、たとえば商品の配送サービスを行うなど、付加価値をつけたサービスを意識しながら1冊でも多くの学習帳を販売していきます。弊社の学習帳は業界内ですでに高いシェアを獲得していますが、伸びしろはまだあると感じています。
今後も学習帳を主軸の商品に据えながら、営業力の強化にもより一層努めていきます。
編集後記
同社による“大人市場”の開拓は、新規ファンを増やす大きなポテンシャルを秘めている。子どもの頃に「ジャポニカ学習帳」などを使った大人たちは、再びショウワノートの商品を手に取り、愛用するのだろうか。
時代に合った商品を生み出すことができる同社のノウハウは、日本以外の国でもきっと通用し、日本の文具やキャラクター商品の魅力を世界中に広めてくれるはずだ。

氷鉋富雄/1959年長野県生まれ、法政大学卒業。1982年にショウワノートに入社。19年間営業部に所属し、その後、版権部、市場開発部、ポケモン事業部を経て、2016年にショウワグリム株式会社へ転籍。2017年関連会社の陽光産業に出向し代表取締役就任。2020年ショウワノート取締役、2023年ショウワノート代表取締役に就任。2025年3月に同社顧問に就任予定。